今月17日に福島市の県立盲学校(映画「春色のスープ」の舞台となった場所です。)で全国盲学校弁論大会が開かれましたが、この大会に東北地区代表として参加していた同校高等部普通科3年の鈴木裕花さんが優勝しました!
伝統あるこの大会の80年もの歴史において本県の盲学校の生徒さんが優勝したのは初めての事だそうです。
ご本人はもちろん、ご家族、そして学校の方々などのお喜びはひとしおと思います
一県人として心から祝福させていただきます。
裕花さんは出生後に未熟児網膜症を発症したため右目で光を感じ取れるだけの視力でしかなく、同校には小学部から在籍とのことです。
どんな事でも積極的にやらずにはいられないとかで生徒会長も務めており、今回の大会に備えて自宅でも一所懸命に練習していたそうです。
受賞後には真っ先に両親、先生、友達への感謝の気持ちを言葉に表し、これからの目標は大学に進学する事で、地域の障がい者を支えられる仕事に就きたいと語っていました。
裕花さんが大会で発表した弁論文のテーマは「踏み出す」です。
私立校の夏期講習と冬期講習に健常者の生徒達に混じって参加した際に、その生徒達が障がい者の自分を自然に受け入れてくれ当たり前の様に接してくれた事に裕花さんは驚きを感じました。
そして自分が勝手に健常者と障がい者の間に見えない壁を作っていた事を恥じたのです。
その経験を通して(裕花さんの)世界が大きく広がりました。
新しい世界に踏み出す勇気がどんなに大切であるか・・・
以下に裕花さんの弁論文の全文を原文のまま掲載させていただきます。
(※原文は縦書きです)
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全国盲学校弁論大会優勝
「踏み出す」
福島県立盲学校
高等部普通科三年 鈴木裕花
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「おー、これがおれの名前か!」
私は去年の夏、近くの私立校の夏期講習に参加させていただきました。テキストは先生方に点訳していただいて。五日間、私立文系コースの二十七人の皆さんと一緒に国語と英語を受けました。
七月二十三日、期待と不安に胸をふらませながら、二年七組の教室へ向かいました。
「おはようございます」。
ドアを開けるとがやがやしていて人数の多さを感じました。
男子二十六人だったので、なんとなく観察されているようなよそよそしい感じがしました。
私の席は一番後ろの廊下側。席に座っていると、隣のクラスの桃子ちゃんがあいさつにきてくれました。クラスに一人だけいる女子まりちゃんがたまたま欠席だったからです。
いよいよ一時間目が始まりました。先生が冗談を言うとみんなで大笑いをしたり、いつ自分が指されるかどきどきしたり、全てが初めての経験でした。休み時間になると、お弁当のいい匂いがして、男子が早弁をしているのがわかり、新鮮でした。
ある休み時間のこと。私がまりちゃんと話していると、数人の男子が集まってきました。
「これで点字を打つんだって」とまりちゃん。
「打ってみる?この先がとがっているのは点筆と言うんだけど、点字は六つの点の組み合わせなんだよ」と私が説明すると、一人の男子が名前を打ちました。他の人の名前は私が打ってあげました。点字板から紙を取り外すと、
「すげー!!これが俺の名前なんだって!」「打つのめっちゃ早くねえ?」
自分で打ってみたい男子の行列ができました。部活の時間になってしまった空手部員の人が、打てなくて、とても残念がっていたのが印象に残りました。
あっという間に五日がたち、「もっといたい」という正直な感想と共に終わりました。
そして、冬期講習にも参加しました。教室に入ると、ずっと一緒に過ごしてきた仲間のような安心感と自然に受け入れてくれるあたたかさがありました。どうしてたった五日間しか一緒にいなかったのに、当たり前のように接してくれるんだろうと驚きました。
私は今までずっと一人の授業が多く、普通校の人と関わる機会はありませんでした。だからこそ大学へ進学して、健常者と同じように学び、働きたいと思っています。
担任の先生から夏期講習にまざる話を聞いたとき、視覚障がいのある私を受け入れてくれるのだろうか、友達はつくれるのだろうかなど不安はつきませんでした。でも、今しかないと決心しました。私が勝手に健常者と障がい者の間に厚く見えない壁をつくってしまっていたのです。
しかし、この壁は簡単に崩されてしまいました。そのことに驚き恥ずかしくなりました。
春休みは盲学校で課外を受けました。そんなある朝、安達駅で桃子ちゃんに会いました。一緒に電車に乗り、いろいろな話をしました。
「今日はバスじゃないの?」
「春期講習中だから歩きなんだ。一緒に行くよ」と桃子ちゃんが手引きをしてくれて、嬉しかったです。私がいつも歩いている道ではなく、裏道を行きました。
「裕花ちゃんの学校ってどこにあるの?」
「福高の近く」
「ああ、わかったかも!」
こんな会話をしているうちに、いつの間にか二人で迷子になってしまいました。私はどこを歩いているのかわからず困りました。ただ学校にはほど遠い感じがしました。
「ここって一三号線だよね?」
「うん、そうだよ」
「郵便局ある?その近くに左に曲がる点字ブロックがあって歩道橋の下を通るんだけど・・・」
「あ、あるよ!大丈夫、大丈夫」
私がこの大冒険で気づいたこと。それは手引きをしてもらっていても自分で主体的に歩かなければ、目的地までは連れて行ってもらえないということでした。おしゃべりに夢中になりながら、もう一つの耳を働かせることの難しさを実感しました。
八百九十七グラムで生まれた私が、今、生きていることにあらためて感謝しています。たくさんの人の愛に見守られ、支えられ、今日まで成長してきました。
私は普通校の課外にまざるという経験を通して、世界が大きく広がりました。新しい世界に足を踏み出すのはとても勇気がいることです。それがどんなに小さな一歩でも進んだことに変わりません。きっとこれからも大切なことに気がつけると信じています。
私は一人ではありません。ほんとうの空の下、同じように目標に向かってまっしぐらの人たちがいます。障がいの有る無しに関わらず、一人一人精いっぱい生きています。明るい未来に向かって。
僕は、今までの人生の中ではいろ
いろな経験をしましたが、新しい世界
に向かって踏み出したことはいく度と
なくありました。
だから最初の一歩を踏み出す時には
かなりの勇気がいるということも実感
として理解できます。
多分この感じはどんなに経験を積ん
でも、年齢に関係なく変わらないもの
なんでしょうね。
そういう点でもかなりの説得力を持つ
この弁論文には強く共感しました。
高校生ながらこれだけの文章の
構成力とか表現力を持っていることは
賞賛に値すると思います。
その一歩が如何に勇気がいることで大切なものなのかが窺われます。
人前に出ること、それにまして話すことが苦手な自分にはとても出来ないにゃ~。
でも、何かを始める大切な一歩は臆することなく踏み出して行きたいと思っています。~(=^‥^A アセアセ・・・やや願望もありますが・・・