2月7日、昨夜は、自治体職員、公共交通事業に携わる者が市民とともに交通とまちづくりを学ぶ「NPO法人再生塾」の活動で、長岡京市役所に行ってきました。昨年夏より、長岡京市のご協力を得て、ヒアリングや現地調査を重ね、大学の先生や自治体の管理職のなど助言者(ラーニングファシリテーター)指導のもと、「よそもの・ばかもの・若者」の視点でまとめた「まちづくりの提案」について、3つのチームがプレゼンテーションしました。市の建設部門を中心に、企画、総務、環境、商工観光各分野から41名の職員のみなさんが参加してくださいました。
我がチームのタイトルは「出会いの都・長岡京」。過去から交通の要所として栄えた長岡京が、「にそと」開通と阪急新駅開業という新たな「機会(チャンス)」を迎えて、どのような「まちづくり」をしていけばよいかを考えました。当初のタイトルは「歴史・文化・交通 調和のトライアングル」でしたが、議論の過程で、長岡京市の強みでもあり弱みでもある「通過交通」を「出会いのポテンシャルが高い」ととらえ、それを活かした「出会いのあるまちづくり」をテーマにしよう!と決定しました。
過去に行われた商店街の一歩通行の社会実験が必ずしもうまくいかなかったことを踏まえて、「イベントは社会実験、実施ごとに検証されるべき!そうでなければ意味のない、やる価値のないイベントだ!」という森栗先生(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)の叱咤激励を受けて、「街コン」(街をあげて合コン)「BAL」(街をあげた食べ歩き)など、今、注目のイベントを「人と人が出会う仕掛けづくり」として取り入れ、同時に「交通規制(一方通行・歩行者天国など歩行者中心の交通)は必ずしも街を衰退させない!」ということを、市民の理解を得ながら「楽しく」「徐々に」検証していく・・・それにそって「歩ける街(交通)」「賑わう商店街(イベント&社会実験)」「出会いのある農業(町の魅力発信)」、三つの視点から提案をまとめました。
わたしの提言は「出会いのある農業」「付加価値の高い都市近郊農業」「農のある景観」。昨夏に「まなびとひろば」の講師をお願いした、京都・大原「ビレッジトラスト・つくば農園」の渡辺さんから学んだことを活かしました。マシーンの「機械化農業」は減価償却、時とともに価値が下がっていきますが、農作業や収穫作業を「みんなで」「仲間で」行い、出会いの機会を提供する「機会化農業」は、時とともに「出会い」の価値が広がる農業です。これらを、話題の「街コン」や「BAL」、同時に開く「夕市」に融合させて、消費者と生産者が出会える機会にするというものです。食の安心安全を、若者の定住化につなげる仕掛けでもあります。
なぜ、農業か・・・きっかけは、バス路線に沿って「にそと」工事現場や阪急新駅予定地を仲間とサイクリングした現地調査で、市街地に広がる農地の充実に気づいたこと。さらに、市のホームページで「まちづくり審議会」での市民意見を拾い、長岡京市民にとって「西山の景観」がたいへん重要であること、西山と市街地をつなぐ緑のネットワークの重要性を市民が認識しておられることを知り、提言の方向性が間違っていないことを確信しました。審議会での意見をもとつくられた景観条例、景観計画は、自ら「長岡らしさ」を定義、景観形成目標を、西山から「市街地への緑の流れを育て、豊かな魅力あふれる景観を創り出す」とされています。緑のネットワーク形成に「農」の視点が欠かせない!と思いました。
交通とどうつなげるつもりなのか、仮設やデータをもとに論理的に説得する力を欠いているのではないかなど、厳しい指摘もありましたが、20代の若者ふたりが「出会いの農業」「機会化農業」に興味を示し、賛同してくれました。長岡京市の「景観計画」をみて、パワーポイント資料に一行「景観計画・景観条例がある(市民意識)と記したところ、発表終了後の意見交換会の席で、担当職員の方から「うれしかったです」とお声をかけていただきました。この方の熱意こそが、建物の色彩までを考慮した長岡京市独自の「景観計画」や「デザイン審査会」を生んだことと知り、感銘しました。
土地は「私有」、しかし建物の外観は「公共」であるという意識が日本人に欠けているとおっしゃり、意気投合、話はおおいに盛り上がりました。わたしは、20代、学生の頃、フランスにひとり旅をして、プロバンスの街を歩きました。自由の国、個人主義のフランスで、マンションのバルコニーに洗濯物を干すのを禁止しているだけでなく、ルーフの色まで定められていることに衝撃を受けました。街並みの美観を守る厳しいルールの背景に、国民のひとりひとりの「空間に関する公共意識」の高さ=文化意識を痛感しました。日本でも2004年の景観法の制定が流れを変え、土地は地権者の個人的財産、しかし「空間を形成する景観は公共のもの」という考え方が広まりつつあります。
平成22年から、JR島本駅西側の農空間の開発問題に絡む「まちづくり勉強会」「まちづくり協議会」に注目してきましたが、景観形成、農地・農空間保全の視点ではなく、土地の有効利用、税金、土地価格の動向など、土地を売ることを前提とした講義ばかりが「地権者のご意向」という大義名分のもとに繰り返されています。哀しい現実です。現在、駅から望めることができる景観は、20年、50年後に、北摂、乙訓地方で他に例をみない駅として、町の資産になるとわたしは確信していますが、現実は非常に厳しい。法人側と地権者が価格で合意できれば、中高一貫校の立地が実現するという局面を迎えている・・・そのように判断しています。
次回、都市計画審議会のお知らせです
2月20日(月)午前10時 役場3階 委員会室
傍聴希望の方は、5分前に受付(氏名・住所記入:公開はされません)
策定中の
「都市計画マスタープラン」に寄せられたパブリックコメント(町が募集して出された住民意見)を受け審議されます
85件の意見とそれに対する町の考え方がホームページに公表されています
画像は、JR島本駅西側の歩道と周辺の農地(2011年8月6日撮影)
計画では、西大和学園は、このあたり1.8haの土地取得を希望されています
昨年末の「まちづくり協議会」では建物の外観図が示されました
長岡京市では、学識経験者などで構成する「デザイン審査会」で
立命館中高一貫校の建築物を審査
届出の義務だけではなく、建設工事終了後の届出も義務付け
完成後、市の職員が現地に向かわれるのだそうです