一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

伊藤女流二段、負ける

2019-01-22 00:13:35 | 女流棋戦
20日、里見香奈女流名人VS伊藤沙恵女流二段の第45期女流名人戦五番勝負が開幕した。ここまで里見女流名人は9連覇中。伊藤女流二段は前期に続いて2度目の登場である。両者のタイトル戦はこれが5度目で、過去4回はすべて里見女流名人が勝っている。対戦成績も里見女流名人の11勝3敗で、本シリーズ、どこからどう見ても里見女流名人の有利は明らかだ。しかし伊藤女流二段は、絶好の雪辱のチャンスである。
本局、伊藤女流二段が先手となり作戦が注目されたが、▲2六歩△3四歩に▲4八銀、だった。△5四歩に▲4六歩。伊藤女流二段は銀冠模様の力戦好き、というイメージがあるが、これも相当な力将棋を想起させる。
もっともこの指し方は、先日のAbemaTVのお好み棋戦で、当の伊藤女流二段が里見女流四冠に指したものらしい。また男性棋戦でも実戦例があるという。
だが37手目▲7八玉までと進んでみて、どうだろう。

先手は4筋の位は取ったものの後手の角筋が生きているし、何より後手の5筋の位が堂々としていて、先手の金銀が分裂してしまっている。3手目から工夫した割には、主張点がないように思えるのだ。少なくとも、これが先手の予定とは思えなかった。
ちなみに、第1図以降をアマ同士で指し継げば、八割方後手が勝つ。いやプロ同士だって、ほとんど後手が勝つのではないか?
果たして第1図からは里見女流名人が華麗に攻め、△4六飛▲同金に△3七銀の飛車金両取り。プロ同士でも珍しい局面が現れた。気分的にはもう、後手勝勢である。

伊藤女流二段はたまらず▲9五歩と突く(第2図)。前期女流王座戦での清水市代女流六段にこの手があったが、居飛車の切り札といえる。
しかしこの▲9五歩も、中原誠名人が大山康晴十五世名人相手に指せば急所の攻めに見えるのに、清水女流六段や伊藤女流二段が指すと、苦し紛れの手に見えてしまうから不思議だ。
ここで里見女流名人が△8五桂と跳んだのが、角取りかつ玉の懐を拡げて一石二鳥の好手だった。これで里見女流名人の勝ちが決まったのである。
だがなんで先手の角は、7七に上がっていたのか。
AbemaTV棋戦では▲7七角~▲8六角と活用したのだが、本局はさらによくしようと、▲7七角と上がってから別の手を指したのだ。だが本局に限っては、玉の可動領域を拡げるより、桂跳ねの角当たりのデメリットの方が大きく出てしまった。
最後は里見女流名人の華麗な寄せを見るのみとなった。
伊藤女流二段は里見女流名人以外の女流棋士に滅法強く、通算勝率は.750を越えている。これは里見女流名人のそれを上回る。伊藤女流二段は奨励会を1級で退会したが、現在有段の力があるのは明白で、事実男性棋戦では、今年度5勝4敗と勝ち越しているのだ。里見女流名人との棋力の差もそこまでないはずなのに、なんでこんなに、里見女流名人に負け続けるのだろう。
伊藤女流二段はどうも、里見女流名人を意識し過ぎているのではないだろうか。
こういう時私が考える対処法は明快で、里見女流名人の敗局を並べ、そのイメージを刷り込んでしまう。
里見さんだって女流棋士の一人にすぎない、と肩の力を抜いて指せば、伊藤女流二段にも勝ち星が転がり込んてくると思うのだが、どうだろう。
コメント
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