一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

CIハイツ新春落語会(前編)

2019-01-19 00:34:00 | 落語
金曜夜10時からNHKテレビで始まった「トクサツガガガ」は、何だか知らないが、おもしろかった。来週以降も楽しみである。

   ◇

昨年11月に、将棋ペンクラブ幹事の湯川博士氏から新春落語会の案内をいただいた。湯川氏のおひざ元である和光市の「CIハイツ」で、1月14日に行われるものだ。その後は湯川邸で新年会も行われるとのこと。今年に入ってから封書でもいただき、ここで参加の意を強くした。
だが落語会前日、地図が入っていた封書の紛失に気付き、慌てた。だがネット全盛の時代、目的地の名称が分かれば、何とかなる。
14日は午前11時20分ごろ起床した。私は無職のくせに、生意気にも世間の休日に合わせて寝坊するのだ。
ブランチを摂り、家を出た。池袋から東武東上線に乗り換える。開場は午後1時なので、ここまでは問題ない。
和光市駅に着き、スマホでCIハイツを調べた。が、中古マンションの物件が出てきたりして、よく分からない。どうも私が想像するよりはるかに規模が大きいようだ。
方角の当たりをつけて向かうと、マンション群が見えてきた。これ全体を「CIハイツ」というようだ。落語はこのどこかで行われるのだが、分からない。
マンション群の中心部に管理センターがあったので、聞くことにする。と、私の前にいた実年の男性が、先に聞いてくれた。
「さっきからこの案内ばかりしとるなあ」
と先方がボヤく。私たちと同じ手合いが多いようだ。
管理センターの先にある、2階建ての建物の2階が、落語会場だった。無事に入場したが、開演時間に間があるからか、先着80人に対して四分の入りというところ。将棋ペンクラブ会員の姿はなく、また場違い感を味わった。
私は後方でひっそり聞ければいいのだが、係の人に促され、前のほうに移動する。だが時間が経つにつれ後方に活気が出てきて、振り返らずとも満席になっていることが分かった。
開演の1時半になり、井上会長という男性と、タケムラという女性が現れた。
聞くと、これはCIハイツさわやか会と、すこやかネットの共催によるもので、昨年第1回が開かれた。それが好評だったため、今年も開催の運びとなった、とのことだった。
井上会長「年が明けて2週間が経ちましたが、まだ明けましておめでとうございます、でよろしいかな。月日の経つのは早いもので、今年もアッという間に終わっちゃうんでしょう。
ふだんの生活の中で、笑いがあるのはいいことです。皆さん今日は笑って、健康になりましょう」
今回は「親子の愛」がテーマで、仏家小丸「桃太郎」、参遊亭遊鈴「子別れ」、中入りを挟み、仏家シャベル「火事息子」と演じるとのこと。お囃子担当は将棋ペンクラブの永田氏。
まずは仏家小丸である。高座は舞台袖がないので、後方から登場となる。
「私は仏家シャベルの4番目の弟子になります。でも師匠とは半世紀近い付き合いになります……」
小丸とシャベルの関係はみなが知っているから、ここでクスリと笑いが漏れる。
「チラシのほうには『子丸』と書いてあったんですけど、正しくは『小丸』です。親子の話を演るもんだから、効果的に間違えちゃったのかしら」
スタッフの誤植も、大らかに笑いに変えてしまうのはさすがである。
「顔が地味なんで、メガネを掛けさせていただきます」
と、ピンクのメガネを掛けた。
「このあとに出る参遊亭遊鈴と仏家シャベルは高校の同級生なんです」
これは初耳である。
2人はある寄席でバッタリ会い意気投合、それから湯川氏主催の落語会に、遊鈴がたびたび招ばれるようになったという。
「CIハイツは1980年代に着工されたんですね。そのころ私たちは氷川神社の借家住まいでした。CIハイツは設計が竹中工務店、分譲担当が伊藤忠商事。
私たちは新倉に住んでいますが、そこの新築マンションとCIハイツの中古マンションの価格を調べてみたんですよ。そしたら4LDKでCIハイツの方が1,000万円も高かった。中古マンションですよ!? おばけ物件です。
これは管理が行き届いているからなんでしょうね。ここの宝は『信用』です。だからCIハイツの値は下がらないんですね」
マクラにしては少々長いが、客の中の何割かを占めるであろうCIハイツの住人も、ここまで褒められれば悪い気はすまい。CIハイツの紹介も兼ね、ここは小丸がよく話を練った。
いよいよ「桃太郎」である。ある家庭の父親が、息子に「桃太郎」を話して寝かそうとするが、利発な息子は桃太郎の話の矛盾を片っ端から指摘し、父親を呆れさせる。しかしその矛盾にも訳があり、息子はそのひとつひとつを論破していく。
だが、その話を子守歌代わりに、先に寝てしまったのは父親のほうだった……。
「桃太郎」は昨年秋の長照寺でも小丸が披露したので、もう十八番といえる。
落語はその身ひとつあればどこへ行ってもできるが、扇子と手ぬぐいがあればなおよい。この2つでかなりの物品が表せるからである。小丸は折りたたんだ手ぬぐいを縦位置にし、指をすべらせる。これで子供がスマホをいじる図になる。次は横位置にし、親指で押す仕種をした。今度はゲームボーイに変わった。ここは小丸の小道具の使い方が冴えた一幕だった。
小丸は実に堂々とした話しぶりで、笑いを随所に取る。途中、小丸に一瞬だけ焦りの色が浮かんだ気もするが、これは私の気のせいであろう。
下げもピッタリ決まって、前座としてはこれ以上ないスタートとなった。
2番手は参遊亭遊鈴である。噺は「子別れ」。人情噺の大定番で、将棋の矢倉みたいなものだ。
遊鈴が高座に上がる。
「このたびは昨年に続きお呼びいただきまして、誠にありがとうございます。同じ場所に呼んでいただけることは、とてもありがたいことです」
遊鈴は三遊亭遊三の弟子。「参遊亭」、と表記を変えているのは、何か意味があるのだろうか。
「今日演らせていただくのは『子別れ』です。これは噺が上下と分かれているんですが、上のほうはあまり面白くありません。下の方は『子は鎹(かすがい)』という名で、単独でも演ることがあります。鎹、というのは、金具がこうコの字型になっておりましてね、木材の2つを、こう挟んで繋ぐ役割をします。子供が鎹になって、両親を繋ぎ合わせるんですね。今日は下のほうを演らせていただきます」
遊鈴の噺が始まった。
(つづく)
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