昨年12月22日は、東京・神保町の「魚百」で、将棋ペンクラブの忘年会があった。私は正式に招ばれていないが、前回の参加により、今回も参加可能と判断した。
小雨の中、魚百に向かう。通り向かいのうどん屋は、雨でも長い行列である。ご苦労なことである。
午後1時15分ごろ魚百1号店の2階に入ると、誰もいなかった。私はキツネにつままれたように、椅子に腰を下ろす。
しばらくすると、星野氏が来た。忘年会をやるのは確かなようである。
「羽生さん負けちゃいましたね」
「あの歩はヒドかったね」
この会話が将棋団体らしい。「今日は出席が3人の予定で、どうなることかと思ったよ」
そんなに少ないのか!?
そこに予定外の私が入り、さらに何人か加わる予定で、最終的には10人近くになるようだった。
だが、堀彩乃女流2級の姿がない。実は前回の将棋会の時、Kan氏がLPSA12月8日の忘年会に出るとかで、星野氏がKan氏に、堀女流2級に指導対局の依頼をお願いしたのだ。
だがそれを星野氏に言うと、そんなことを頼んだ覚えはないという。
星野氏、あの時はだいぶ酔ってたからなあ……。そしてKan氏も今日は休みのようで、私の早とちり?でコトは終わりになった。
とりあえず、居酒屋が開店する夕方まで将棋会である。私は星野氏と指すことにする。星野氏とはむかし、1局指したことがあるような、ないような……。いずれにしても、かなり久しぶりの対局となった。
星野氏の先手で、初手から▲7六歩△3四歩▲5八飛。私は当然△8八角成とし、▲同銀に△4五角。角成が約束され、早くも優勢になった。
星野氏は▲2六角(第1図)と打ったが……。
第1図以下の指し手。△6七角成▲5三角成△8九馬▲6八飛△6二銀▲4三馬△3二金▲5四馬△3五歩▲6四歩△同歩▲6三歩△7一銀(第2図)
私は当然のように△6七角成としたが、▲5三角成を許したのはマズかった。ここは慌てず△5二金右としていれば、相変わらず角成が約束され、私が優勢だった。
△8九馬と桂得したが、意外に馬が狭い。私は△3五歩と馬筋を通したが、疑問だった。
星野氏は▲6四歩~▲6三歩を利かし、むしろ好調になってきた。
第2図以下の指し手。▲7九金△6七桂▲4八玉△7九桂成▲同銀△同馬▲6四飛△5二歩▲4三桂△4二玉▲3一桂成△同玉(第3図)
ここで星野氏が▲7九金と寄ったのが大悪手。私は△6七桂と打ち、一遍に優勢になってしまった。
ところが▲6四飛に△5二歩と打ったのがお返しの悪手で、▲4三桂と打ち返されて、ヨリが戻ってしまった。
第3図以下の指し手。▲4四馬△3三銀▲4三銀△同金▲同馬△3二銀▲4四飛△4三銀▲同飛成△4二金▲3四銀△4三金▲同銀成△8八飛▲5八金打△5三歩(第4図)
このあたりまで実年氏、紳士氏、青年、前回の青年A氏と数分置きに入室した。青年A氏と青年氏(便宜上、Cと付ける)が会釈をしていたが、青年C氏は青年A氏の紹介で来たらしい。4人には適当に将棋を指してもらえばよい。
第3図では▲4三銀がイヤだったが、本譜▲4四馬も厳しい。私はひたすら受けるが、途中で星野氏の攻め急ぎがあったが、受け損ねれば負ける。たとえば△4二金のところで形とばかり△3二金と受けると、▲4一銀で面倒なことになる。
本譜▲4三同銀成に△8八飛で1枚使わせ、△5三歩で再度私が優勢になった。
最終は▲4八玉▲5七金、△6八馬△8八飛の形から私が△5九馬と捨て、▲同玉△7七角まで、星野氏の投了となった。
軽く感想戦らしきものをやったが、星野氏は、定跡に関係ない、力将棋を指したいと語った。その意気は私も同意である。
2局目は、青年B氏と指すことにした。
青年C氏の先手で、石田流に組まれた。私は危機感なく△3二玉と寄ったが、すかさず▲3六飛とこられて参った。私は△8八角成▲同銀。そこで△3三玉としたいが、それは▲7七角△4四角▲同角△同歩に▲3四飛!△同玉▲1六角の強襲を喰らう。これは升田幸三実力制第四代名人の著書「升田式石田流」に詳しい。
私は△2二玉と寄ったが、青年C氏にゆうゆうと▲3四飛と歩得され、私の劣勢が決まった。
だが……。
図以下の指し手。▲7一角△9二飛▲7二飛成△同飛
まで、一公の勝ち。
図の進行は先手優勢。ところが青年C氏は、図で▲7一角と打った。私は△9二飛と寄るよりないが、そこで▲7二飛成?が意味不明の手。私は当然△同飛だが、これが角金両取りである。先手指しようがないだろうと思ったら、何と青年C氏が投了してしまった。
戻って図では、▲6一角がイヤだった。これは△7三金と立って後手も耐えているようだが、生きた心地はしなかった。
青年B氏は消化不良のはずで、指し直しを提案しようとも思ったが、ほかの会員が手スキなので、やはりメンバーを変わることにした。
3局目は青年A氏と戦う。青年A氏とは先月戦い、角換わりの将棋で終盤は負けになっていた。今日相居飛車は指したくないので、後手番になったこともあり、四間飛車に振ってみた。青年A氏は▲5七銀とし、穴熊の雰囲気である。
第1図以下の指し手。△4五歩▲6六銀△4四銀▲3六歩△7二銀▲7八金△5二金左▲9八香△5四歩▲2五歩△3三角▲9九玉△6四歩▲6八角△5五歩▲同歩△同銀▲8八銀△5六歩▲2四歩(第2図)
私は穴熊と決め打ちして△4五歩。▲6六銀には△4四銀とした。青年A氏は予定の▲9八香。
△6四歩に▲6八角が若干スキありで、△5五角の王手飛車のスジが生じた。それを狙って私は△5五歩。▲同歩△同銀に▲同銀とは取れないので、青年A氏は▲8八銀。そこで私は△5六歩。よく分からないが、大山康晴十五世名人ならこう指すと思った。
さて▲2四歩にはどう指すか。
(つづく)
小雨の中、魚百に向かう。通り向かいのうどん屋は、雨でも長い行列である。ご苦労なことである。
午後1時15分ごろ魚百1号店の2階に入ると、誰もいなかった。私はキツネにつままれたように、椅子に腰を下ろす。
しばらくすると、星野氏が来た。忘年会をやるのは確かなようである。
「羽生さん負けちゃいましたね」
「あの歩はヒドかったね」
この会話が将棋団体らしい。「今日は出席が3人の予定で、どうなることかと思ったよ」
そんなに少ないのか!?
そこに予定外の私が入り、さらに何人か加わる予定で、最終的には10人近くになるようだった。
だが、堀彩乃女流2級の姿がない。実は前回の将棋会の時、Kan氏がLPSA12月8日の忘年会に出るとかで、星野氏がKan氏に、堀女流2級に指導対局の依頼をお願いしたのだ。
だがそれを星野氏に言うと、そんなことを頼んだ覚えはないという。
星野氏、あの時はだいぶ酔ってたからなあ……。そしてKan氏も今日は休みのようで、私の早とちり?でコトは終わりになった。
とりあえず、居酒屋が開店する夕方まで将棋会である。私は星野氏と指すことにする。星野氏とはむかし、1局指したことがあるような、ないような……。いずれにしても、かなり久しぶりの対局となった。
星野氏の先手で、初手から▲7六歩△3四歩▲5八飛。私は当然△8八角成とし、▲同銀に△4五角。角成が約束され、早くも優勢になった。
星野氏は▲2六角(第1図)と打ったが……。
第1図以下の指し手。△6七角成▲5三角成△8九馬▲6八飛△6二銀▲4三馬△3二金▲5四馬△3五歩▲6四歩△同歩▲6三歩△7一銀(第2図)
私は当然のように△6七角成としたが、▲5三角成を許したのはマズかった。ここは慌てず△5二金右としていれば、相変わらず角成が約束され、私が優勢だった。
△8九馬と桂得したが、意外に馬が狭い。私は△3五歩と馬筋を通したが、疑問だった。
星野氏は▲6四歩~▲6三歩を利かし、むしろ好調になってきた。
第2図以下の指し手。▲7九金△6七桂▲4八玉△7九桂成▲同銀△同馬▲6四飛△5二歩▲4三桂△4二玉▲3一桂成△同玉(第3図)
ここで星野氏が▲7九金と寄ったのが大悪手。私は△6七桂と打ち、一遍に優勢になってしまった。
ところが▲6四飛に△5二歩と打ったのがお返しの悪手で、▲4三桂と打ち返されて、ヨリが戻ってしまった。
第3図以下の指し手。▲4四馬△3三銀▲4三銀△同金▲同馬△3二銀▲4四飛△4三銀▲同飛成△4二金▲3四銀△4三金▲同銀成△8八飛▲5八金打△5三歩(第4図)
このあたりまで実年氏、紳士氏、青年、前回の青年A氏と数分置きに入室した。青年A氏と青年氏(便宜上、Cと付ける)が会釈をしていたが、青年C氏は青年A氏の紹介で来たらしい。4人には適当に将棋を指してもらえばよい。
第3図では▲4三銀がイヤだったが、本譜▲4四馬も厳しい。私はひたすら受けるが、途中で星野氏の攻め急ぎがあったが、受け損ねれば負ける。たとえば△4二金のところで形とばかり△3二金と受けると、▲4一銀で面倒なことになる。
本譜▲4三同銀成に△8八飛で1枚使わせ、△5三歩で再度私が優勢になった。
最終は▲4八玉▲5七金、△6八馬△8八飛の形から私が△5九馬と捨て、▲同玉△7七角まで、星野氏の投了となった。
軽く感想戦らしきものをやったが、星野氏は、定跡に関係ない、力将棋を指したいと語った。その意気は私も同意である。
2局目は、青年B氏と指すことにした。
青年C氏の先手で、石田流に組まれた。私は危機感なく△3二玉と寄ったが、すかさず▲3六飛とこられて参った。私は△8八角成▲同銀。そこで△3三玉としたいが、それは▲7七角△4四角▲同角△同歩に▲3四飛!△同玉▲1六角の強襲を喰らう。これは升田幸三実力制第四代名人の著書「升田式石田流」に詳しい。
私は△2二玉と寄ったが、青年C氏にゆうゆうと▲3四飛と歩得され、私の劣勢が決まった。
だが……。
図以下の指し手。▲7一角△9二飛▲7二飛成△同飛
まで、一公の勝ち。
図の進行は先手優勢。ところが青年C氏は、図で▲7一角と打った。私は△9二飛と寄るよりないが、そこで▲7二飛成?が意味不明の手。私は当然△同飛だが、これが角金両取りである。先手指しようがないだろうと思ったら、何と青年C氏が投了してしまった。
戻って図では、▲6一角がイヤだった。これは△7三金と立って後手も耐えているようだが、生きた心地はしなかった。
青年B氏は消化不良のはずで、指し直しを提案しようとも思ったが、ほかの会員が手スキなので、やはりメンバーを変わることにした。
3局目は青年A氏と戦う。青年A氏とは先月戦い、角換わりの将棋で終盤は負けになっていた。今日相居飛車は指したくないので、後手番になったこともあり、四間飛車に振ってみた。青年A氏は▲5七銀とし、穴熊の雰囲気である。
第1図以下の指し手。△4五歩▲6六銀△4四銀▲3六歩△7二銀▲7八金△5二金左▲9八香△5四歩▲2五歩△3三角▲9九玉△6四歩▲6八角△5五歩▲同歩△同銀▲8八銀△5六歩▲2四歩(第2図)
私は穴熊と決め打ちして△4五歩。▲6六銀には△4四銀とした。青年A氏は予定の▲9八香。
△6四歩に▲6八角が若干スキありで、△5五角の王手飛車のスジが生じた。それを狙って私は△5五歩。▲同歩△同銀に▲同銀とは取れないので、青年A氏は▲8八銀。そこで私は△5六歩。よく分からないが、大山康晴十五世名人ならこう指すと思った。
さて▲2四歩にはどう指すか。
(つづく)