私は岩場の陰に腰を下ろす。真っ青な海を眺めていると、後悔だらけの過去と光の見えない未来に苦痛を感じ、どこかへ逃げだしたくなる。いや、もう八重山に逃げているのだが。
おっ、何となく潮が引き始めた…と思ったら、見る間に砂浜が露わになってきた。これは十分、海に入れる。私はその場で海パンに着替え、そろそろと海に入った。
そこに、
「町役場からのお知らせです。海水浴をする人は、ライフジャケットを装着するなどして、十分気を付けて泳ぎましょう」
の放送が入った。
まるで私が海に入ったのを見計らったかのようで不愉快?だが、構わず泳ぐ。
天気がいいので、海の中が綺麗だ。遊泳できるスペースは意外に限られているが、鳩間の海とはサンゴと魚の種類が違い、十分楽しめる。海水浴客も徐々に増えてきた。
海の中だと時間が経つのが早い。朝起きた時は11時40分の船で帰る予定だったが、当然これでは帰らない。13時40分…もちょっと早い。16時00分の船で帰ることになろうか。
正午が近づいてきた。私はいったん浜に上がる。正午になり、サイレンが鳴った。
私は直立したまま、黙とうする。1分間のサイレンが終わり眼を開けるが、ほかの海水浴客が黙とうをした気配はなかった。まあ、そんなものであろう。
昼食の時間だが、売店のカップラーメンはいので、買わない。もっとも八重山では、食事より飲料のほうが大事なケースが多い。つまり飛車より歩のほうが、価値が高い場合があるのだ。以前も書いたが、「歩切れは喉の渇き」である。
沖ではリーフに上がれるほど潮が引いてきたが、そこを歩くまでの好奇心はない。私は引き続き海につかるが、だんだん泳げるスペースが少なくなってきた。極論すれば、あっちこっちの水たまりにつかっている感じである。
うん、まあ仲本海岸を堪能したので、これであがることにする。
ところで仲本海岸は立派なシャワー所がある。大昔は木枠にシャワーホースが1つあるだけの簡素なものだったが、数年後に現在の個室シャワー施設ができ、面目を一新した。特筆すべきはこれが無料で利用できることで、いままで無料で使えたのに勝手に?整地し、シャワー代(と駐車料金)500円を徴収するようになった宮古島・吉野海岸の関係者は、よく聞いてもらいたいものだ。
とにかくありがたくシャワーを利用し、着替える。帰りは今来た道を戻るのが最短だが、パームツリーは休みだし、16時まで時間があるので、島の真ん中の道を行く。
20分ぐらい歩くと、左手に黒島展望台が見えてきた。しかしそこに向かう道がなく、真っすぐ歩くほどに、展望台が遠くなってゆく。このもどかしさが黒島の真骨頂である。
また標語があった。
「勉強で やればタメになる 好きになる」
「時間だよ 自転車 こぎ出し また明日」
やっと左折できる道があった。ここまでで小1時間かかっている。どこかで昼食を摂れる店があれば…とも考えていたが、その時間も、店もなかった。
この辺は割と大きな家が密集している。また標語があった。
「本読んで いろんなことを 学ぼうよ」
「本読めば 頭の中が よくなるぞ」
どうも黒島の児童は、本を読むのが好きなようだ。
集落を抜けるが、展望台へはまだ遠い。日差しは相変わらずきつく、気が付けばふくらはぎがヒリヒリしてきた。日焼け止めクリームは腕にだけ塗っていたが、とんだところに穴があった。私は遅ればせながら、ふくらはぎにもクリームを塗った。
曲がり角から数十分歩いて、展望台に着いた。途中、何台か自転車に抜かれたが、こっちはこっちのペースで楽しんでいる。
この展望台も何回か訪れているが、竹富島と違って人がいない。自転車の2人組がちょうど去ったところで、私の貸切り状態である。
上に登るが、もちろん見晴らしはいい。しかし、見渡す限り草原(牧場)だ。悔しいが、やはり竹富島の家並のほうが見応えがある。
港に戻る手前にレンタサイクル店があった。行きの時はこの辺りにおばあがいたが、あの人が経営者だったか。全然気が付かなかった。「1時間200円、1日1,000円」の看板があり、これは良心的な価格設定だ。行きに借りてもよかったかもしれない。
港に戻り、待合室にある冷水器の水を飲む。この水が美味いのだ! 私も各離島の待合室を巡っているが、冷水器があるのはここしか知らない。
と、ここまで島によくしてもらいながら、私はまだ島に1円も落としていない。
それで、ここでアイスを買うのが恒例となっている。今年は市販のソフトクリームを買った。130円はこれまた良心的である。たぶん、島民もお客だからだろう。
なお黒島港も、数年前に、すぐ隣に新たな待合室ができた。
帰りは安栄観光の船である。しかし予想以上に乗客が多く、桟橋に列をなしていた。私は冷房室を諦め、デッキのベンチ席に座る。しかしここも、ほどなくして満席になった。
が、デッキの四方が塞がれており、蒸し風呂状態である。全身からガンガン汗が噴き出す。出発まであと10分だが、とても我慢できない。でも我慢するしかない。
船は定刻に出航したが、この10分は本当に長かった。
さて、今日の宿である。スマホで楽天トラベルを調べると、「東横イン石垣島」に、1室空きがあった。料金は5,300円+税で、これは税込5,000円以内で抑えるという私のポリシーに反する。しかもビジネスホテルは、沖縄では利用したことがない。
…と、いろいろ考えるのも、疲れた。もうどうでもいいやと、私はここを予約した。
メールを確認すると、今日のANA14時05分・宮古行きの予約を解除し忘れていたことに気付いた。違約金は発生しないが、ANAに多大な迷惑を掛けたことは否めない。猛省だ。
16時30分、あんえい88号は離島ターミナルに着いた。この旅何回目のターミナルだろうか。
お腹がすいたので、売店に寄る。弁当の売れ残り?があり、それらが半額で売られていた。実はこの時間帯ならここで弁当を買うのが手筋で、どこかの店で何か残っているのだ。
私は231円の日替り弁当を買った。サンマが1匹丸々入り、その他おかずも入っている。これで231円は涙が出るような安さだ。
私はベンチに座って、ありがたくいただく。と、左手に超ミニスカートを穿いた人物が現れた。ああぁ!? まさか!?
(つづく)
おっ、何となく潮が引き始めた…と思ったら、見る間に砂浜が露わになってきた。これは十分、海に入れる。私はその場で海パンに着替え、そろそろと海に入った。
そこに、
「町役場からのお知らせです。海水浴をする人は、ライフジャケットを装着するなどして、十分気を付けて泳ぎましょう」
の放送が入った。
まるで私が海に入ったのを見計らったかのようで不愉快?だが、構わず泳ぐ。
天気がいいので、海の中が綺麗だ。遊泳できるスペースは意外に限られているが、鳩間の海とはサンゴと魚の種類が違い、十分楽しめる。海水浴客も徐々に増えてきた。
海の中だと時間が経つのが早い。朝起きた時は11時40分の船で帰る予定だったが、当然これでは帰らない。13時40分…もちょっと早い。16時00分の船で帰ることになろうか。
正午が近づいてきた。私はいったん浜に上がる。正午になり、サイレンが鳴った。
私は直立したまま、黙とうする。1分間のサイレンが終わり眼を開けるが、ほかの海水浴客が黙とうをした気配はなかった。まあ、そんなものであろう。
昼食の時間だが、売店のカップラーメンはいので、買わない。もっとも八重山では、食事より飲料のほうが大事なケースが多い。つまり飛車より歩のほうが、価値が高い場合があるのだ。以前も書いたが、「歩切れは喉の渇き」である。
沖ではリーフに上がれるほど潮が引いてきたが、そこを歩くまでの好奇心はない。私は引き続き海につかるが、だんだん泳げるスペースが少なくなってきた。極論すれば、あっちこっちの水たまりにつかっている感じである。
うん、まあ仲本海岸を堪能したので、これであがることにする。
ところで仲本海岸は立派なシャワー所がある。大昔は木枠にシャワーホースが1つあるだけの簡素なものだったが、数年後に現在の個室シャワー施設ができ、面目を一新した。特筆すべきはこれが無料で利用できることで、いままで無料で使えたのに勝手に?整地し、シャワー代(と駐車料金)500円を徴収するようになった宮古島・吉野海岸の関係者は、よく聞いてもらいたいものだ。
とにかくありがたくシャワーを利用し、着替える。帰りは今来た道を戻るのが最短だが、パームツリーは休みだし、16時まで時間があるので、島の真ん中の道を行く。
20分ぐらい歩くと、左手に黒島展望台が見えてきた。しかしそこに向かう道がなく、真っすぐ歩くほどに、展望台が遠くなってゆく。このもどかしさが黒島の真骨頂である。
また標語があった。
「勉強で やればタメになる 好きになる」
「時間だよ 自転車 こぎ出し また明日」
やっと左折できる道があった。ここまでで小1時間かかっている。どこかで昼食を摂れる店があれば…とも考えていたが、その時間も、店もなかった。
この辺は割と大きな家が密集している。また標語があった。
「本読んで いろんなことを 学ぼうよ」
「本読めば 頭の中が よくなるぞ」
どうも黒島の児童は、本を読むのが好きなようだ。
集落を抜けるが、展望台へはまだ遠い。日差しは相変わらずきつく、気が付けばふくらはぎがヒリヒリしてきた。日焼け止めクリームは腕にだけ塗っていたが、とんだところに穴があった。私は遅ればせながら、ふくらはぎにもクリームを塗った。
曲がり角から数十分歩いて、展望台に着いた。途中、何台か自転車に抜かれたが、こっちはこっちのペースで楽しんでいる。
この展望台も何回か訪れているが、竹富島と違って人がいない。自転車の2人組がちょうど去ったところで、私の貸切り状態である。
上に登るが、もちろん見晴らしはいい。しかし、見渡す限り草原(牧場)だ。悔しいが、やはり竹富島の家並のほうが見応えがある。
港に戻る手前にレンタサイクル店があった。行きの時はこの辺りにおばあがいたが、あの人が経営者だったか。全然気が付かなかった。「1時間200円、1日1,000円」の看板があり、これは良心的な価格設定だ。行きに借りてもよかったかもしれない。
港に戻り、待合室にある冷水器の水を飲む。この水が美味いのだ! 私も各離島の待合室を巡っているが、冷水器があるのはここしか知らない。
と、ここまで島によくしてもらいながら、私はまだ島に1円も落としていない。
それで、ここでアイスを買うのが恒例となっている。今年は市販のソフトクリームを買った。130円はこれまた良心的である。たぶん、島民もお客だからだろう。
なお黒島港も、数年前に、すぐ隣に新たな待合室ができた。
帰りは安栄観光の船である。しかし予想以上に乗客が多く、桟橋に列をなしていた。私は冷房室を諦め、デッキのベンチ席に座る。しかしここも、ほどなくして満席になった。
が、デッキの四方が塞がれており、蒸し風呂状態である。全身からガンガン汗が噴き出す。出発まであと10分だが、とても我慢できない。でも我慢するしかない。
船は定刻に出航したが、この10分は本当に長かった。
さて、今日の宿である。スマホで楽天トラベルを調べると、「東横イン石垣島」に、1室空きがあった。料金は5,300円+税で、これは税込5,000円以内で抑えるという私のポリシーに反する。しかもビジネスホテルは、沖縄では利用したことがない。
…と、いろいろ考えるのも、疲れた。もうどうでもいいやと、私はここを予約した。
メールを確認すると、今日のANA14時05分・宮古行きの予約を解除し忘れていたことに気付いた。違約金は発生しないが、ANAに多大な迷惑を掛けたことは否めない。猛省だ。
16時30分、あんえい88号は離島ターミナルに着いた。この旅何回目のターミナルだろうか。
お腹がすいたので、売店に寄る。弁当の売れ残り?があり、それらが半額で売られていた。実はこの時間帯ならここで弁当を買うのが手筋で、どこかの店で何か残っているのだ。
私は231円の日替り弁当を買った。サンマが1匹丸々入り、その他おかずも入っている。これで231円は涙が出るような安さだ。
私はベンチに座って、ありがたくいただく。と、左手に超ミニスカートを穿いた人物が現れた。ああぁ!? まさか!?
(つづく)