島井咲緒里女流二段(当時は女流初段)にはおかわり対局を申し込むつもりだが、その前に夕食である。階下の「吉野家」で牛丼並を食した。270円は、今では考えられない値段だった。
芝浦サロンに戻り、午後7時30分からの部開始。が、傍らに手持無沙汰の客がおり、私はまずその人と指すべきだったかもしれない。
対局者は私も含めて3人。定員は一応4人だが、当時はこの時間帯でも、空きがあったのだ。
対局開始。島井女流二段は四間飛車に振り、△9二香。再び穴熊の意向だ。
私は島井女流二段の横顔を伺うが、かわいらしい。二の腕あたりの肌は抜けるような白さで、それがほんのり桜色に染まっている。さっきの握手も含めて、本当にクラクラきた。
私が▲5七銀左と急戦の意思を見せると、島井女流二段は△7二金の早囲い。▲4六銀に△3二飛とした。▲3五歩に△4二金。この形は攻略しづらい。
私は急攻できぬと見て、▲5七銀上~▲6八金上と自重した。
第1図以下の指し手。△4五歩▲2二角成△同飛▲3四飛△4六歩▲同歩△3二飛▲同飛成△同金▲5二飛△3九飛▲4八銀△2九飛成▲3九歩(途中図)
△4三角▲7二飛成△同銀▲6二金△8二飛▲7一角△7四歩▲8二角成△同玉▲7一銀△7三玉▲8二飛△7六角▲7二飛成△8四玉▲8二銀成△9四角打▲7七金△2八竜▲7六金(投了図)
まで、67手で一公の勝ち。
島井女流二段は元気よく△4五歩。以下角銀の総交換となったが、じっと▲4六同歩は落ち着いている。今の目で見たら▲3一飛成と踏み込みそうなところだが…。
飛車も交換になり。私は▲5二飛と狭い所に打つ。どうかすると飛車が死にそうだが、▲7二飛成と切る手があるので、攻めが続くと見たのだろう。
島井女流二段も敵陣に飛車を下ろし、△2九飛成。ここで私の▲3九歩(途中図)がまた渋い。ここ、▲3二飛成と金を取ったらなぜいけなかったのだろう。
ただ、▲3九歩には妙な力を感じる。少なくとも、悪い手ではないと思う。
△4三角に私は飛車を切り、▲6二金と打つ。ここ▲7一銀はあるが、△8二銀▲6二銀成△4二飛で攻めきれないと見たのだろう。
ただ、以下の島井女流二段の受けもヤワな感じで、私は容易に寄せ形を築いた。
△8四玉に▲7七金と指しかけたが思い直し、▲8二銀成と活用する。
△2八竜には▲7六金(投了図)と角を外し、島井女流二段が投了した。以下△7六同角は、▲8三竜△7五玉▲6六銀△6四玉▲6三竜まで詰み。島井女流二段はちょっと指し方が淡白で、疲労がたまっていた感じだった。
いずれにしてもこの2連勝は大きく、これでチョコレート勝負は、3勝3敗となった。
私は島井女流二段に「ギブアップ宣言」の説明をする。
「島井先生がチョコレート勝負に勝てないと悟った場合、先生がカド番の1局前で『ギブアップ宣言』すれば、私がチョコレートを進呈します」
「……」
「その代わり、(私から逃げて)嗤われることになります」
「…続けます。フフ」
さすが島井女流二段、勝負師であった。
結局この日は、金曜サロンのメンバーは、私以外に誰も来なかった。このあたりから本格的に、同メンバーの芝浦離れが始まってゆく。
なお、この日の島井女流二段があまりにも魅力的だったので、この16日後に沖縄から発表した「第5回 私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキングトップ10」では、島井女流二段を初めてトップにした。これは意外に知られていない事実である。
ところがその4日後の2011年8月18日、島井女流二段は盟友船戸陽子女流二段とともに入籍を発表する。道理であの日、島井女流二段が綺麗だったわけだ。
一方気が動転した私は8月27日、「緊急改訂版」としてファンランキングを改めて発表した。この時、島井女流二段が首位を陥落したのは言うまでもない。新妻を応援するほど、私はお人よしではないのである。
島井女流二段、わずか13日間のトップであった。
芝浦サロンに戻り、午後7時30分からの部開始。が、傍らに手持無沙汰の客がおり、私はまずその人と指すべきだったかもしれない。
対局者は私も含めて3人。定員は一応4人だが、当時はこの時間帯でも、空きがあったのだ。
対局開始。島井女流二段は四間飛車に振り、△9二香。再び穴熊の意向だ。
私は島井女流二段の横顔を伺うが、かわいらしい。二の腕あたりの肌は抜けるような白さで、それがほんのり桜色に染まっている。さっきの握手も含めて、本当にクラクラきた。
私が▲5七銀左と急戦の意思を見せると、島井女流二段は△7二金の早囲い。▲4六銀に△3二飛とした。▲3五歩に△4二金。この形は攻略しづらい。
私は急攻できぬと見て、▲5七銀上~▲6八金上と自重した。
第1図以下の指し手。△4五歩▲2二角成△同飛▲3四飛△4六歩▲同歩△3二飛▲同飛成△同金▲5二飛△3九飛▲4八銀△2九飛成▲3九歩(途中図)
△4三角▲7二飛成△同銀▲6二金△8二飛▲7一角△7四歩▲8二角成△同玉▲7一銀△7三玉▲8二飛△7六角▲7二飛成△8四玉▲8二銀成△9四角打▲7七金△2八竜▲7六金(投了図)
まで、67手で一公の勝ち。
島井女流二段は元気よく△4五歩。以下角銀の総交換となったが、じっと▲4六同歩は落ち着いている。今の目で見たら▲3一飛成と踏み込みそうなところだが…。
飛車も交換になり。私は▲5二飛と狭い所に打つ。どうかすると飛車が死にそうだが、▲7二飛成と切る手があるので、攻めが続くと見たのだろう。
島井女流二段も敵陣に飛車を下ろし、△2九飛成。ここで私の▲3九歩(途中図)がまた渋い。ここ、▲3二飛成と金を取ったらなぜいけなかったのだろう。
ただ、▲3九歩には妙な力を感じる。少なくとも、悪い手ではないと思う。
△4三角に私は飛車を切り、▲6二金と打つ。ここ▲7一銀はあるが、△8二銀▲6二銀成△4二飛で攻めきれないと見たのだろう。
ただ、以下の島井女流二段の受けもヤワな感じで、私は容易に寄せ形を築いた。
△8四玉に▲7七金と指しかけたが思い直し、▲8二銀成と活用する。
△2八竜には▲7六金(投了図)と角を外し、島井女流二段が投了した。以下△7六同角は、▲8三竜△7五玉▲6六銀△6四玉▲6三竜まで詰み。島井女流二段はちょっと指し方が淡白で、疲労がたまっていた感じだった。
いずれにしてもこの2連勝は大きく、これでチョコレート勝負は、3勝3敗となった。
私は島井女流二段に「ギブアップ宣言」の説明をする。
「島井先生がチョコレート勝負に勝てないと悟った場合、先生がカド番の1局前で『ギブアップ宣言』すれば、私がチョコレートを進呈します」
「……」
「その代わり、(私から逃げて)嗤われることになります」
「…続けます。フフ」
さすが島井女流二段、勝負師であった。
結局この日は、金曜サロンのメンバーは、私以外に誰も来なかった。このあたりから本格的に、同メンバーの芝浦離れが始まってゆく。
なお、この日の島井女流二段があまりにも魅力的だったので、この16日後に沖縄から発表した「第5回 私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキングトップ10」では、島井女流二段を初めてトップにした。これは意外に知られていない事実である。
ところがその4日後の2011年8月18日、島井女流二段は盟友船戸陽子女流二段とともに入籍を発表する。道理であの日、島井女流二段が綺麗だったわけだ。
一方気が動転した私は8月27日、「緊急改訂版」としてファンランキングを改めて発表した。この時、島井女流二段が首位を陥落したのは言うまでもない。新妻を応援するほど、私はお人よしではないのである。
島井女流二段、わずか13日間のトップであった。