こういうとき、私はロクなことを考えない。未来についてあれこれ考えを巡らせるのではなく、過去の失敗をいつまでもグチグチ悔やむのだ。それで過去が変わるわけでもないのに…。
ここ美瑛は案内看板が充実しているので、ケンとメリーの木までは分かりやすい。途中、シャレた洋館があり、女性が雪かきをしていた。この辺りにはユースホステルがあり、25年前の私なら確実に宿泊していた。いまの私はビジネスホテルに泊まりビデオを観ることを優先している。堕落してしまった。
それにしても、観光客が人っこひとりいない。それも道理で、この季節に美瑛の丘を観光する人はいない。
冷気はいよいよ厳しく、頬が痛い。
四つ角を右折して、突き当たりを左に曲がると、大きなポプラの木が見えてきた。あれがたぶんケンとメリーの木だ。なおこの名称は、以前テレビのCMで使われた時の、出演者の名前にちなんで付けられたようだ。
やっと到着。ポプラの木は大きく、市街地の眺めがすばらしい。と、後方からタクシーが来て、ヤングな4人の女性が降りた。昔だったらウキウキするところだが、いまはカメラのシャッター係をさせられそうな気がして、容易に近づけない。
彼女らはお互い写真を撮り合って、「ありがとうございます」とか言っている。ちょっとよそよそしい感じで、ひょっとしたら、2対2の相乗りだったかもしれない。
タクシーが去った。やっと落ち着いて鑑賞できるが、そうなると、一面雪景色で面白味に欠けるようにも思えてきた。美瑛の丘はやはり、夏か秋に訪れるのがいいようだ。
傍らには三角屋根のシャレた建物があり、その奥が喫茶店になっていた。寒さが厳しいので入るつもりだったが、入口に達するまでやたら「注意事」が多く、ご縁がなかったと諦めた。
次に訪れるべきは北西の丘で、ここから徒歩10分ほどである。いま来た道を引き返しその先を行くと、ピラミッドのような建物が見えてきた。
ここにも先客が一組いて、中国人家族と思しき4人組がはしゃいでいた。ピラミッドの敷地まではかなりの段差があり、彼らがどこから入ったのか分からない。
彼らがクルマで去ったあと、私も適当なところから侵入する。ピラミッドは展望台になっていたが、階段のところにロープが張られ、そこから上は侵入禁止になっていた。最上階からの景色が見られないとは残念である。
駐車場の外れにトイレがあったので入ろうとしたら、鍵がかかっていた。向こうにあるジュースの自動販売機群は雪に埋もれて使えず、今さらながら美瑛と真冬は相性がわるいと痛感した。
帰り道は下り坂なのでいくぶんラクだ。しかし相変わらず風がすごく、雪煙が舞っている。昨年のようにカメラをオシャカにするわけにはいかないから、カメラをジャンパーの内側に入れた。
30分足らずで市街地に戻り、寒さも和らいだ。サザンカという喫茶店があったので、反射的に入る。
典型的な田舎の喫茶店という感じで、先客はサラリーマン3人組、ママ友5人組で、おしゃべりに興じていた。
とりあえずコーヒーを頼みトイレに行き、戻ってくるとチーズケーキのセットメニューがあったので、それも頼んだ。
別にママ友の話に聞き耳を立てたわけではないけれど、いまの奥さん方は訛りがない。こうして地方色がなくなっていくのであろう。
コーヒー、チーズケーキともまずまずの味。何より店のおばちゃんが、味があってよかった。
駅方面に戻る。さっきの四季情報館とは別に、道の駅があるのだが、何となく通り過ぎてしまった。
本屋(兼文房具店)に寄った。「道内時刻表」をまだ入手していなかったからで、今回はもう使うことがないけれど、コレクション用として必要である。
ところが店内には時刻表がなく、ズッコケた。これ、いまは地元の人も使わないのだろうか。
時刻は5時過ぎである。気を取り直して、北海道最後の晩餐とする。「そば天」なる店があるので入った。いつもならもりそばを頼むのだが、店名に「天」が入っているということは、天ぷらが自慢なのだろう。そこで異例ながら、天ざる(1,200円)を注文した。
出されたそばはしこしこしており、天ぷらもサクサクだった。エビ、帆立、イカ、ピーマン、ナス…すべてが美味かった。
あとは帰るのみである。美瑛駅前に戻ると、駅前のツリーと青空が幻想的な光景を醸し出していて、目を瞠った。今回いちばん印象的だったのが、実はこの光景だったりする。
美瑛駅前に戻ったが、空港行きのバス停がないので駅員さんに聞いたら、バス停は駅の裏側だった。ロードマップにはちゃんと記載されていたようだが、あぶないところだった。
バスの到着まで20分。私は跨線橋の建物内で待つが、この侘しさは何だろう。まだ帰りたくないと思う。
定刻の17時54分になったが、バスが来ない。さらに10分が経過し、まさか運休かとイヤな想像をしたところで、ふらのバスが到着した。
旭川空港には13分遅れの18時23分に着いた。私の乗る便はANA4188便・19時35分発なので余裕である。なお、この便を予約したあとにJALの20時15分発があることに気付いたのだが、このルートならANA便で問題なかったようだ。
カウンターで搭乗手続きを行うが、カードの件で、やっぱりゴタゴタした。まあ今回はしょうがない。
何とか手続きを済ませ、私は雑誌売り場で「道内時刻表」を探すが、なかった。これは東京で求めるしかないようである。
手荷物検査場を通るが、リュックの中にペットボトルがあるとかで、止められた。しかしそれはちゃんと表に出している…。調べたら、それは何と毛生え薬だった。
羽田空港ではハジかれなかったのに、何てことだ…。毛生え薬は1回しか使わなかったし、次の旅行では不携行が無難かもしれない。
(おわり)
ここ美瑛は案内看板が充実しているので、ケンとメリーの木までは分かりやすい。途中、シャレた洋館があり、女性が雪かきをしていた。この辺りにはユースホステルがあり、25年前の私なら確実に宿泊していた。いまの私はビジネスホテルに泊まりビデオを観ることを優先している。堕落してしまった。
それにしても、観光客が人っこひとりいない。それも道理で、この季節に美瑛の丘を観光する人はいない。
冷気はいよいよ厳しく、頬が痛い。
四つ角を右折して、突き当たりを左に曲がると、大きなポプラの木が見えてきた。あれがたぶんケンとメリーの木だ。なおこの名称は、以前テレビのCMで使われた時の、出演者の名前にちなんで付けられたようだ。
やっと到着。ポプラの木は大きく、市街地の眺めがすばらしい。と、後方からタクシーが来て、ヤングな4人の女性が降りた。昔だったらウキウキするところだが、いまはカメラのシャッター係をさせられそうな気がして、容易に近づけない。
彼女らはお互い写真を撮り合って、「ありがとうございます」とか言っている。ちょっとよそよそしい感じで、ひょっとしたら、2対2の相乗りだったかもしれない。
タクシーが去った。やっと落ち着いて鑑賞できるが、そうなると、一面雪景色で面白味に欠けるようにも思えてきた。美瑛の丘はやはり、夏か秋に訪れるのがいいようだ。
傍らには三角屋根のシャレた建物があり、その奥が喫茶店になっていた。寒さが厳しいので入るつもりだったが、入口に達するまでやたら「注意事」が多く、ご縁がなかったと諦めた。
次に訪れるべきは北西の丘で、ここから徒歩10分ほどである。いま来た道を引き返しその先を行くと、ピラミッドのような建物が見えてきた。
ここにも先客が一組いて、中国人家族と思しき4人組がはしゃいでいた。ピラミッドの敷地まではかなりの段差があり、彼らがどこから入ったのか分からない。
彼らがクルマで去ったあと、私も適当なところから侵入する。ピラミッドは展望台になっていたが、階段のところにロープが張られ、そこから上は侵入禁止になっていた。最上階からの景色が見られないとは残念である。
駐車場の外れにトイレがあったので入ろうとしたら、鍵がかかっていた。向こうにあるジュースの自動販売機群は雪に埋もれて使えず、今さらながら美瑛と真冬は相性がわるいと痛感した。
帰り道は下り坂なのでいくぶんラクだ。しかし相変わらず風がすごく、雪煙が舞っている。昨年のようにカメラをオシャカにするわけにはいかないから、カメラをジャンパーの内側に入れた。
30分足らずで市街地に戻り、寒さも和らいだ。サザンカという喫茶店があったので、反射的に入る。
典型的な田舎の喫茶店という感じで、先客はサラリーマン3人組、ママ友5人組で、おしゃべりに興じていた。
とりあえずコーヒーを頼みトイレに行き、戻ってくるとチーズケーキのセットメニューがあったので、それも頼んだ。
別にママ友の話に聞き耳を立てたわけではないけれど、いまの奥さん方は訛りがない。こうして地方色がなくなっていくのであろう。
コーヒー、チーズケーキともまずまずの味。何より店のおばちゃんが、味があってよかった。
駅方面に戻る。さっきの四季情報館とは別に、道の駅があるのだが、何となく通り過ぎてしまった。
本屋(兼文房具店)に寄った。「道内時刻表」をまだ入手していなかったからで、今回はもう使うことがないけれど、コレクション用として必要である。
ところが店内には時刻表がなく、ズッコケた。これ、いまは地元の人も使わないのだろうか。
時刻は5時過ぎである。気を取り直して、北海道最後の晩餐とする。「そば天」なる店があるので入った。いつもならもりそばを頼むのだが、店名に「天」が入っているということは、天ぷらが自慢なのだろう。そこで異例ながら、天ざる(1,200円)を注文した。
出されたそばはしこしこしており、天ぷらもサクサクだった。エビ、帆立、イカ、ピーマン、ナス…すべてが美味かった。
あとは帰るのみである。美瑛駅前に戻ると、駅前のツリーと青空が幻想的な光景を醸し出していて、目を瞠った。今回いちばん印象的だったのが、実はこの光景だったりする。
美瑛駅前に戻ったが、空港行きのバス停がないので駅員さんに聞いたら、バス停は駅の裏側だった。ロードマップにはちゃんと記載されていたようだが、あぶないところだった。
バスの到着まで20分。私は跨線橋の建物内で待つが、この侘しさは何だろう。まだ帰りたくないと思う。
定刻の17時54分になったが、バスが来ない。さらに10分が経過し、まさか運休かとイヤな想像をしたところで、ふらのバスが到着した。
旭川空港には13分遅れの18時23分に着いた。私の乗る便はANA4188便・19時35分発なので余裕である。なお、この便を予約したあとにJALの20時15分発があることに気付いたのだが、このルートならANA便で問題なかったようだ。
カウンターで搭乗手続きを行うが、カードの件で、やっぱりゴタゴタした。まあ今回はしょうがない。
何とか手続きを済ませ、私は雑誌売り場で「道内時刻表」を探すが、なかった。これは東京で求めるしかないようである。
手荷物検査場を通るが、リュックの中にペットボトルがあるとかで、止められた。しかしそれはちゃんと表に出している…。調べたら、それは何と毛生え薬だった。
羽田空港ではハジかれなかったのに、何てことだ…。毛生え薬は1回しか使わなかったし、次の旅行では不携行が無難かもしれない。
(おわり)