一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

飯島栄治七段著「横歩取り超急戦のすべて」

2014-04-03 00:12:32 | 将棋雑記
私はあまり将棋の技術書は買わない。定価で買うのがもったいないと思うからで、読みたい棋書が出た場合は、図書館で借りて済ますか、古本屋に出回るのを待って購入するか、となる。ちなみに最近定価で購入した本は、上野裕和五段著の「将棋・序盤完全ガイド~振り飛車編~」(マイナビ)だが、これは上野五段が大野教室に講師で来てくださった際に義理?で購入したもので、その前となると、米長邦雄永世棋聖著の「米長の将棋1、2」(マイナビ文庫)まで遡ってしまう。
そんな私が、今回「定価で買いたい」と思った技術書がある。飯島栄治七段著の「横歩取り超急戦のすべて」である。
ネットなどで情報を拾うと、同書は「横歩取り△4五角」など、後手方の視点から講義を進めているようだ。
当ブログでたびたび述べてきたが、「横歩取り△4五角」は、プロ間では先手よしの結論が出ているが、そこには後手有利の変化がいくつも転がっており、少なくともアマチュア同士なら、後手もじゅうぶん戦えるとの確信を持っている。
そんな私にとって、本書は格好の本であった。本は本屋で購入するのが本筋だが、できるだけ消費税5%のうちに購入したい。あまり時間もないので、甚だ異例ながら、今回はネットで購入した(ちなみに、同時期に「水沢アキ写真集 AKI MIZUSAWA 1975-1995」「ひし美ゆり子写真集 All of Anne:plus」も購入した)。

注文から2日後に棋書が届く。「まえがき」に「ハメ手定跡云々」とたびたび書かれてあるのがアレだったが、本文は期待できそうである。なお講義内容は「将棋世界」2011年12月号から連載されている講座をまとめたもの。やはりそうか。だがこの時期私は、将棋世界をほとんど購入していなかったので、新鮮味は保たれた。
さて本書は「第1章 △3三角戦法」「第2章 △4四角戦法」「第3章 △4五角戦法」に分かれている。
「△3三角戦法」と「△4四角戦法」は、角がたんに上がったものではなく、もちろん角交換から据えたものだ。
次の「△4五角戦法」は本書の主題なので、さらに3節に分かれている。すなわち、「△4五角戦法の前に」「△4五角戦法の入口」「△4五角戦法本編」の3つである。
第1節は、△2八歩はなぜ必要なのか? これに▲2八同銀は絶対なのか? から始まる。基本のキからというわけだ。これ、私が漠然と通ってきた中にも膨大な変化が隠され、この項だけですでに、目からウロコが落ちる思いだった。
でまあ、あらかた読んだわけだが、全体的によく調べられていると思った。飯島七段の人柄が表れているというか、とにかく七段の研究がよく述べられている。まあこの変化が公式戦では現われないこともあるからと思うが、ここまで読者に教えてしまっていいのかという感じである。ちょっと、山田道美九段の講座を読んでいる気分だった。
ただ、「『羽生の頭脳』はこの横歩取り△4五角戦法に関しては、ほとんど全ての変化が構築されていて、付け入る余地がない」の一文を読んだときにはズッコケた。これなら、「羽生の頭脳」を図書館から借りれば済んでしまうではないか。
しかしそこはそれ、本書では「羽生の頭脳」に記された変化以降も詳述されており、一応納得はできる。
レイアウト上、升目を埋めるため冗長に思える文章も散見されたが、とにかく膨大な変化が記されているので、1,540円+税のモトはじゅうぶん取れる感じである。
そのほか、初版につきものの誤植が散見されたが、致命傷ではない。
惜しむらくは、本書が3月31日発行で、将棋ペンクラブ大賞にノミネートされづらいということである。もっとも、これは私がこれから推薦すればいいのだが。
とにかく、期待に違わぬ名稿だった。これから棋友にこの戦法をぶつけるのが楽しみだが、少々マズイことがある。棋友の少なくとも2人は、すでに本書を購入しているのだ…。
コメント (2)
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