感染症診療の原則

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生存確率を高める情報 とは

2011-05-21 | 非・悲・否・避「常識」
医療関係者にとっては、目の前の患者さんの生存確率を高める情報のコミュニケーションは日常ですが、医療の外でそのような考え方をシビアに迫られるような状況をあまり考えてきませんでした。

先日、ある勉強会で冒頭「我々の仕事は、生存確率を高める情報を国民に提供することである」といいきった講師がいました。

ジャーナリズムのミッションとは「市民の生存確率を高める情報を出すこと」、「権力を監視することで弱者の側にたつのが基本」と。

(卵の側に立つ、の村上春樹講演を思い出しました・・・)

講師は『週刊金曜日』(フライデーとちゃいます!)の発行人の現在の発行人である、北村さん。

企業広告を積極的にとらない、コマーシャルバイアスを排除することで言論の自由や情報精度を守るという姿勢で作られている雑誌です。

その勉強会で購入した本。

新聞やTVの存在意義さえ危ぶまれ、下記に並べたように悲観すべき状況を知る本はたくさん出ている昨今、それでも新聞が生き残る道というか、存在すべき理由や条件とは何かについて学びました。

速報性、即時性ということでネットの脅威を感じるのはTVのほう。
では、新聞はなぜ危うくなってしまったのか。このまま没落の一途をたどるのか。

指摘内容はとっても厳しいのですが、これからについての提案と、ジャーナリズムへのこだわりと、新聞への愛がある(ご本人談!)

新聞という媒体の性格や限界、可能性について。情報を受け取る側としても勉強になりました。

新聞新生 ~ ネットメディア時代のナビゲーター ~
現代人文社


第1章 事実―ビジネスモデルは崩壊している
第2章 誤解―業界の「常識」は非常識
第3章 提言―新聞再生のために

誤解「新聞は国民全てに読まれている」

→読まれていないことは数字で自覚しろ。そして、「売るため」に迎合することでかえって信頼を失っていることを正面から考えることが再出発のカギ。
 
誤解「ネットに負けた」

→ネットユーザーに対する閉鎖的な態度で自分の首を絞めている。「ネットVS新聞の迷信」にはまってしまっている。新聞の強み、独自性に立ち返れ。

誤解「新聞は客観・公正だ」
→事実に基づいた主観(直感)を恐れるな、主張しろ、新聞の立ち居地を示せ。

※毎日新聞は記名記事化が早かった。そして「記者の目」という企画もある。しかし、「主張する新聞は要らない」というキャッチコピーの広告をうったりもした


誤解「速報記事こそスクープ」
→新聞という媒体の性格上、30分早く報じることに意味はない。そのための権力と癒着するのは危険。
どうせ明らかになるものではなく、権力の虚構をあばき、国民に真実を伝えることがジャーナリズムの基本。

誤解「記者クラブは諸悪の根源」
→特権にあぐらをかくな。権力のプロパガンダに利用されるな。

※参考 新聞労連 2010年3月4日「記者会見の全面開放宣言~記者クラブ改革へ踏み出そう~」


誤解「新聞は権力ではない」
→権力者としての自覚を持て。立法、四方、行政、財界に続く第五の権力になるな。癒着の構造にのっかるな。弱者の側に立つのがジャーナリズムの基本。

そして後ろのほうに具体的なサバイバルの提案があります。

(前に紹介した小島さんといい、毎日新聞には主張の感じられる記者魂が育つ自由さがあるのかもしれないな、と思いました)

以下、これまでに読んできた関連本。

ご臨終メディア ―質問しないマスコミと一人で考えない日本人 (集英社新書)
集英社


官僚とメディア (角川oneテーマ21 A 62)
角川書店(角川グループパブリッシング)


ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)
幻冬舎
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