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インフルエンザワクチン接種「後」の運動障害

2015-10-18 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
インフルエンザのワクチンの問い合わせが増える時期になりました。

インフルエンザワクチンはもともと3価(インフルAが2、インフルBが1)でしたが、Bを1つ加えた4価になりました。なぜだかすべての会社が同じ値上げをしてきているのだと、交渉を担当する人たちが嘆いています。
医療機関が購入する際のお金も上がっているので、接種希望者が負担する金額も上昇、ということで波紋を読んでいます(つるんでの価格操作じゃないの?とか)。 
  →こういった陰謀論につながるような噂は予防接種全体にマイナスです。

また、1社が厚労省からOKをもらえていないために、現時点では流通するワクチンの量に不足が生じるのでは?という噂も流れています。
  →足りない、、と聞くと「ぜひとも」と希望者が増えたり動きが早くなるので現場の混乱につながるリスクでもあります。

米国のニュースを見ますと、フルミスト(鼻にスプレーするワクチン)の在庫不足があり、地域によっては「あきらめて注射をしたまえ(待ってたら流行期にはいるよ?)」というニュースが並んでいます。
日本のニュースでは、経鼻式ワクチンの臨床試験開始ということで、こちらは明るい話題に。
開業医さんが輸入しているフルミストは「受付終了」と出だしが早いようです。
やはり、痛いワクチンより痛くないワクチンがいいですね。

あれ?と思う事案として、ネットで他のワクチンを批判している医師のクリニックがなぜだかインフルエンザワクチンには熱心です。
ワクチンもいろいろなため、実際には医師の間でもBCGやインフルエンザは意見がわかれたりもするのですが、インフルエンザワクチンや高齢者の肺炎球菌だけは熱心というのはよくわかりません。
(インフルエンザのワクチンについては方針や意見が国によってもかなりちがいます)


さて。インフルエンザワクチンについて、1つ問い合わせがありましたので紹介します。

これは、ワクチンを接種した後に運動障害が出現し、通常の西洋医学ではよくならなかったけど、代替医療の医師のところで回復〜という話。米国の事例です。

手の震えや歩行ができない、奇妙なしゃべり方が動画サイトやテレビで「悲劇の女性」として伝えられたため、センセーショナルに扱われました。この"被害者"への批判もおきました(ウソじゃないのか?含め)。

ニュース動画 88万アクセス
Cheerleader Gets A Swine Flu Shot and Can Only Walk Backwards!

ニュース動画 34万アクセス
Desiree Jennings' Road to Recovery with Dr. Rashid A. Buttar


「症状がある」ということと(可視的な)、ある方法は無効で、ある方法はうまくいったという事実があるわけですが、原因や機序不明の症状が、よくわからない方法でよくなっても疑問は(ブログ編集部&編集長的には)ありません。大切なのは不快な症状が消えて、日常生活の苦痛や障害が減ることです。
そして、よくわからないことに断定的なことは言わないという誠実さもだいじです。

時間をかけて本人や家族が納得いくかたちでケアをするというのは1つの軸。

症例は25歳。もともと健康な女性で、NFLのチアリーダーです。
2009年8月23日に季節性インフルエンザワクチンを接種したところ、約10日後に歩こうとすると身体がふるえ、まっすぐ歩けない、しゃべれない、という症状が出現。

しかし、「後ろ向きには歩ける」「走ることはできる」「会話はできる」

ある医師の診断は「ジストニア」 治療法は不明。

いろいろな病院にいったけど原因をつきとめてくれないし治してもくれない! 悲劇!
インフルエンザワクチンは危険なのでは?
ワクチンで脳がダメージを受けたに違いない!

消費者団体がエスカレートする報道に注意を促します。
Video of flu shot cheerleader is misleading


エビデンス不明の方法で、この女性がよくなったのは、、、

Traditional medicine having failed her, Jennings said she decided to do something "outside the box," and ended up at a North Carolina clinic run by Dr. Rashid Buttar.

Buttar uses an unproven, alternative treatment for almost every medical condition, from autism to cancer. It's called "chelation," the chemical removal of metals from the body.

Within less than two weeks, Jennings' condition seemed to improve: she walked again, and her stutter disappeared.

日本でもキレーションを導入しているクリニックがあります。

"キレーションは、キレート剤の点滴や内服により身体の中から有害な重金属を排出する、デトックス(解毒行為)の1つ" といった説明が並びます。
"有害な重金属"はワクチンや食べ物、環境からヒトの体内に入るとされており、どれくらい入っているかは毛髪を送って検査する等が推奨されています。

適応として、アレルギー、なんとなくすっきりしない体調、そしてワクチンや薬剤での重金属、、という表記が並びます。当ブログでは効果不明なものを勧めることはしませんのでリンクははりませんが、ワクチン/デトックス/キレーション/グルタチオン/ビタミンC等のキーワードで知ることができます。

当初は
ジストニアなのでは?
いや、そうではない。
では何だろう?

という話でありました。


当時、専門家や団体がコメントをしています。が、まったくとりあわなかった専門団体もあります。

コメントする人たち:
2009年
10月30日 The Dystonia Flu-Shot Case
11月2日  Dystonia Case Follow Up
11月4日  It’s All In Your Head
11月6日 Well That Didn’t Take Long – Another Dystonia Case Follow Up


11月2日 Dystonia from a flu vaccine? Almost certainly not.
11月5日 Has Desiree Jennings’ VAERS report been found?
11月6日 Desiree Jennings “cured” of her “vaccine-induced dystonia”?

11月23日 Desiree Jennings: Worst reporting ever?

2010年7月23日 Medical Mystery or Hoax: Did Cheerleader Fake a Muscle Disorder?


当時、日本語ではあまりニュースにならなかったようです

J-Cast 「チアリーダーを襲った悲劇 ワクチン注射と後ろ向き歩行」
exciteニュース インフルエンザワクチンで筋肉障害となったチアガール(25)に 「ヤラセでは?」との声!その真相とは・・・

水銀が自閉症の原因?キレートでよくなっているひとたが・・・というような報道はあるそうです。                        

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