感染症診療の原則

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ゴールデンウィーク と 性感染症

2012-04-30 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
旅行で多い感染症は下痢、「旅行者下痢」という言葉があるくらいですから。

マイナーな話題として性感染症があります。

Sex, sun, sea, and STIs: sexually transmitted infections acquired on holiday
BMJ. 2004 July 24; 329(7459): 214–217.

Foreign travel, casual sex, and sexually transmitted infections: systematic review and meta-analysis.
Int J Infect Dis. 2010 Oct;14(10):e842-51. Epub 2010 Jun 30.

"New sexual partnerships and unprotected intercourse abroad are relatively common. "でございます。

つまり旅行者にとって性感染症リスクは無視できないものであり、話題にしにくい分、助言する機会や早期診断の機会を逃して2次的問題(合併症やパートナーへの感染)がおきるので注意が必要です。

(問診票でさくっと全員にきいていますよー的な確認があったほうがいいのかも)

旅行にでかけた先で、通常はしないようなリスク行動をとることは一般に知られていますが、恋人や配偶者がいても、現地でカジュアルな性行為をする人たちが一定数います。

短期のバケーションで,という場合、偶然旅先でいいかんじになってさ~、ということもありましょうが、最初から性交目的の旅を計画する人もいます(googleで地名と「風俗」と入れてみてください。たくさんの人が現地でより安全な出会い情報を求めているのがわかります)

長期駐在、平和部隊やボランティアとしてでかけた、布教先で(!)という事例もあります。

調査のサンプル母集団にもよりますが、全体で5-50%、多いのは20%前後という数字。
年齢も幅広い訳ですから、これを若年層でみたら、旅先で新たな相手と性行為といのはコモンな現象なのだと考えた方がよいのではないかとさえ思います。

そして、なぜか旅先でのコンドーム使用率はどの調査でも軒並み低い数字。

持ってなかったのか、売ってなかったのか、お店がなかったのか、あったけどサイズがあわなかったのか、品質がトホホだったのか、相手に拒否られたのかわからないのですが。

最後の砦であるコンドーム使用の選択を捨てるのは惜しいですね。
まあ、使っても100%安全というわけではないですが。

医療者として困るのは、気づいた時にはレギュラーパートナーにも感染していた場合。
「なんと説明したらよいのもか」と言われても妙案があるわけではございませんので。

世の中の多くの人は、自分の配偶者や恋人が旅先で他の人とそんな簡単にセックスするなんてこたーあるまい、と思って生活をしています。
マジョリティはしないのだとおもいます。しかしする人がすごい少数か?といわれると、そうでもないですね。予防接種の副反応ほどには小さくない数字。

感染症対策って難しい(しみじみ)。

歴史的に把握されている人間の性なので、、、もちろん旅行医学の教科書でも独立チャプターになっていますよ。
Yellow Book 「旅行者と性感染症」

日本にくる旅行者が海外のウイルスや細菌を輸入し、性産業を通じて日本のコミュ二ティに拡大することもあれば(その意味で、アジアで流行している肝炎、梅毒、HIVとか心配)、耐性菌発祥地として有名な日本の菌やウイルスがGWあけに世界に広がるリスクもあるわけです~。


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