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「報道終息で知られぬ結末」 日経メディカル2012年5月号

2012-08-30 | (ちょっと休憩)ほんとに休憩
報道されなくなるとその事案の記憶は薄れ、終わったことであるかのようになっていくのは世の常です。
震災後の支援なども、関心低下とともに縮小されたり、新しい事案のほうに関心がひっぱられると、十分なケアができなくなったりするわけです。

医療関係の事故や課題については、そこから学んで再発防止や教育啓発につなげていかなければ、と考えるところも多いですが、やはり、報道がなくなると・・・・な状況はあります。
そう思っていたら、日経メディカルが「医療界を騒がせたあの事件の顛末」という特集を組んでいました。

学びを風化させないよう、ぜひ時々このような企画をお願いしたいです。

以下、協調は編集部によるもの。
アウトブレイク事例もそうですが、「時系列で」「関わった人たちの動き」を並行してみていくことがポイントです。
つまり、この先も過失エラーや事故、悪意のある被害はゼロにはならないと思うのですが、どの時点で何ができたのか考えることで、
被害を今後最小限にしていこうという知恵につながります。


【総論】は「報道収束で知られない、あの事件の結末」です。
報道が減ると記憶から消えてってしまうよね・・・という問題指摘で導入。このあと事例がたくさんならんでいます(一部ネットに掲載されています)


【ケース1:山本病院事件】生活保護患者を食い物に

1999年12月 開設当初から「生活保護のひとばかり。心臓カテーテル検査を強要」という匿名の相談が奈良県に。
2000年1月 奈良県が立ち入り調査(早い)。しかし、心カテが不適切かどうかがわからず。
2001年5月 県や市へ匿名の電話相談やメール。上記心カテ以外に、不正受給などを指摘。
      保健所が立ち入り検査を実施。カテ検査の必要性や根拠をカルテに記載するよう指示。
2007年8月 当該委員の看護師が保健所に直訴
        「生保の患者の入院が決まると、医師が患者の顔も見ずに検査の予約を入れている」
        「心疾患があるようにデータをつくっている」
      カテ抜去を看護師にさせている、等伝える。
      その3日後に県と保健所が立ち入り検査。検査前説明や同意が不十分と指摘。
   9月 県と保健所に匿名投書。死亡事例等を指摘。
   10月 県が投書をそえて郡山警察署に捜査依頼。
2009年7月 奈良県警が元理事長と元事務長を詐欺容疑で逮捕。閉院。


「おかしい!」と気づく人は当然いるわけですが、
「おかしい!」と思ったあとのactionがいつどのように誰によっておこなわれるのかが問題。
そして、その指摘を受けた監督担当部署が何をしてくれるのか(できないのか)も知っておく必要があるわけです。
時間をかければかけただけ、その間に被害者が増えるということがありますので。



【ケース2:銀座眼科事件】レーシックで集団感染(2012/05/14)

2006年8月 開院
2007年7月 患者2人が角膜感染症に。
      相談を受けた別の病院の医師からの診療情報提供等で問題を知るも
      適切な感染対策を取らずに放置。
2009年2月 保健所が休診させて調査開始。保健所に電話相談がたくさんよせられた
2010年12月 業務上過失傷害疑いで院長逮捕。
      
民事訴訟では、被害額合計が4億6千万円。医師が入っていた医賠責保険の上限が3億円。医師には資産がないとのことです。
この裁判では、医師免許取り消しの署名が4000名規模で提出されているそうです。


この事例は、術後のトラブルを相談した先の医師らが怒って保健所に問題指摘をしたから、保健所が動いたと聞いています。
食中毒だけでなく、「おかしい」と思ったらぜひ保健所にお電話を。

他の事例もあります。関心ある方はネットの記事をご覧ください。

【ケース3:臓器売買事件】腎臓購入に1800万円(2012/05/15)
【ケース4:千葉・ニセ医師事件】無免許で30年近くも診療(2012/05/16)
【ケース5:聴覚障害偽装事件】診断偽り年金詐取に加担(2012/05/17)

雑誌の方には他にも載っていますよ。図書館にある方は是非お読みください。
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