Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

4<チカとワカサギ>

2005-03-07 | ワカサギに学んだこと
 ワカサギは,日本海沿岸には多い。しかし,太平洋側には涸沼や北浦,小川原湖だけに大きな個体群として自然分布するといわれている。これに対し,
岩手県の三陸沿岸に目を向けると,入り組んだ湾のあちこちに,ワカサギの近縁種である「チカ」が多く分布している。ワカサギとチカは一見すると区別がつかない。写真に示すとおり,一見どちらがワカサギなのか区別がつかない。外形的な大きな違いは腹鰭基部が背鰭基部より前にあるのがワカサギ,その逆がチカである。これも,産卵期が近くなるとお腹がふくらみ区別がつかなくなる。最終的にはレントゲン写真を撮り脊椎骨数を数える。おおよそ57個がワカサギ,60個以上がチカである。

 一方,生態的な違いは大きい。ワカサギは河口から3.0km上流にある淡水域で産卵するのに対して,チカは海浜で産卵し海で成長する海水魚である。しかも,産卵期はワカサギより一月早く,両者が入り交じって産卵することはない。チカは成長ととともに河口域に出現するが,もしワカサギも生息しているとすれば,成長の早いチカがワカサギを餌として食べ,さらに餌も競合するとことになる。このような理由から,三陸沿岸にはチカが優先し,ワカサギが分布域を広げることができないのである。

 では,なぜ地下の優占する三陸沿岸で、閉伊川にはワカサギが分布するのであろうか?これまで明らかになった生活史を解説しその謎に迫っていきたい。