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Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

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人口減少を食い止めるためにはどうするか?

2025-04-05 | 水圏環境教育
【日本の各地の人口減少に歯止めがかからない】
日本の各地の人口減少に歯止めがかからない。これは,重大な国家の危機である。何が問題か,それは,人口減少によって現在世界第4位であるG D Pが先進国最下位に陥落,あるいはそれ以下になると予測され,税収が減少し国民健康保険制度,社会保険制度,インフラ整備などが維持不可能となり,もはや豊かな国家ではなくなるからだ(現状も決して豊かではない)。現状のままでは,将来の子供達に莫大な借金を残したままにあの世に行ってしまう,と死んでも死にきれない。そう思うのは,私だけではないはずだ。これは政治の問題であり,国民には非がない。政治が悪い,と思う人もいるかもしれない。しかし,それは大きな間違いである。現状を変えていく政治家を選ばない市民一人一人が問題なのだ(私も含めて)。残酷であるが民主主義国家の一員となった日本国民の責任なのである。その理由は,民主主義国家は,意見を言わないと価値観や存在が消えて無くなってしまうのだ(意見をはっきり言うように日本人は教育を受けていない)。それが,民主主義の危険な部分だ。
【なぜ日本は生産性が低いのか】
とはいえ,なんとかしてこの現状を打破しなくてはいけない。そう思い手にした本が日本人の勝算(デービッドアトキンソン著)である【写真①】。この本では,人口減少による諸問題を食い止めるためには国民一人一人の賃金をいかにU Pするかが大きな課題であるとする。そして,賃金を上げるためには日本人の生産性を高める必要がある。生産性とは,G D Pを生産人口で割った値である。悲しいことに,G D Pが世界第4位であっても,生産性は世界28位と先進国で最低水準である。なぜ,日本は生産性が低いのか,それは他の先進国にあって日本にないもの,大人を対象とした教育制度が貧弱であるからだ。確かに,生産性がトップのアメリカ合衆国では,各市町村に大学のエクステンションセンターが配置され,大学が企業や自治体と連携しながら街づくりや地域資源を活用した教育研究活動を行う制度がある。大人を対象とした「アダルトエデュケーション」の機会がある。残念ながら,日本の大学には大人を対象とした教育は限られた範囲にとどまっている(そもそも大学の7割が首都圏にあるのは問題だ)。そのことが,生産性が高まらない原因の一つだと私は考えている。では,大学と連携することでどのようなことが可能となるのか。この書物を基に,その根幹となるスキルを紹介する。
【1 アントレプレナリズム(イノベーションを促進する能力)】
イギリス政府の分析によると生産性向上をもたらす上で,一番重要なのは「アントレプレナリズム」だ。もともとは,東西貿易盛んなマルコポーロの時代に生まれた言葉「仲買人」の意味を持ち,経済学では「イノベーションを起こすような新しい発想の創出,普及,適用を促進する(ファシリテーションする)精神,チャンスを積極的に探ってそれに向かって冒険的にリスクを取る精神」だ。つまり,起業家だけではなく 既存企業でも,あらゆる人間活動に適応可能な能力だ(ピータードラッカー)。イギリス政府の分析によるとこのアントレプレナリズムと生産性の間の相関係数は0.91と極めて強い関係がある。つまり,新しい発想を持ち,既存の経営資源,人材,技術資本を組み直し,新しい企業体系を作り,技術,組織その他の資源の新しい組み合わせを構築することが生産性向上には一番効果的だ。IMDワールド デジタルコンペティティブネス ランキング2017によると,日本企業の機敏性は世界63カ国中 57位で先進国中最下位だ。新しい技術を生み出すより,既存の技術の使い方を変える方が簡単であり生産性向上には効果的である。しかし,日本人はそれがうまくできていないということだ。新しい技術は広く普及させることが一番重要だ。人の手を介するものであり,アントレプレナーがいればいるほど 新しい技術の普及は進むのだ。しかしながら,日本ではアントレプレナーの育成に十分な時間を注いでいない。なぜなら,学校教育だけでは十分に育成することが難しいからである。
【2 労働者1人当たりの物的資本】
設備投資を含めた労働者1人当たりの物的資本の増強である。物的資本とは土地,公的なインフラ,機械なども含み,生産性向上に貢献する傾向も確認される。その投資自体もGDPの成長に貢献し,生産性向上に貢献する。当然物的資本の状況と生産性向上との相関係数は0.77,高い数字である。しかしながら,物的資本に場所により大きな違いあると気づくのは私だけでないであろう。インフラの整備された東京の都市部を拠点に考えると,都心を離れれば,離れるほど公的インフラ(道路整備,公共交通機関や公的建物など)への投資が貧弱である。

【3 社員教育によるスキルアップ】
3番目に生産性の向上と高い相関があるのが社員教育によるスキルアップである。相関係数は0.66 だ。イノベーションを起こし 成長を推進するには社員自身もレベルアップしていかなければない。スキルアップと企業規模の間にも強い相関関係がある。日本には経営者のスキルアップという固有の問題がある。労働者の人材評価は世界第4位で高いにもかかわらず,日本の経営者の能力は極めて低く評価されている(IMDワールド タレント ランキング 2017 によると日本の経営者 ランキングは63カ国中 第57位,分析能力第59位 有能な経営者がいる割合第58位,経営教育を受けたことがある割合第53位,海外経験第63位,経営者分析能力63カ国中59位で先進国中最下位)。

【4技術革新】
実は生産性向上と技術革新の相関係数は意外に低く 0.56だ。先に紹介した3つの要素と比べると決して高くない。このことは,技術革新だけでは生産性を上げるのには不十分であることを示す。イギリスは大学の評価が高く,様々な分野で革新的な技術を生み出しているが,経済全体の生産性向上に対する貢献度合いが期待したほど高くないためであり,その原因を新たに開発された技術の普及率が低いからと分析した。これは,アントレプレナリズムと深い関係がある。要するに研究開発のための研究開発に終始してしまい,実際の導入までこぎつける力が足りないのだ。技術大国と言いながらアナログの部分が多い。日本は特許の数が非常に多いのに特許が活用されていない(OECD もザフューチャー オブ プロダクティビティ報告書)。世界の一流企業は,技術革新が順調に進んで生産性が向上しているが,大半の日本企業の生産性はなかなか上がらない。
【5  競争】
最後に,日本企業の過当競争の問題だ。ワールドエコノミック フォーラムの分析によると日本の企業間競争の熾烈さは世界第1位である。企業間競争の熾烈さは生産性向上にマイナスに働く。競争と生産性向上との間にある相関関係は極めて低い(相関係数0.05)。その理由は、価格競争が厳しくなりローロードキャピタリズムに移行してしまうためだ。利益が削られ,研究開発や設備投資を削ることも余儀なくされ,その結果,将来性と持続性に悪い影響が出る経営戦略をとる傾向が強くなるという。日本は過当競争状態だと指摘されている。



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