Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

芦ノ湖のワカサギはなぜ人気なのか?

2010-02-11 | ワカサギに学んだこと
 第16回ワカサギに学ぶ会 in 河口湖に参加。北は,北海道,南は鳥取県まで,全国のワカサギ研究者ならびに漁業者約100名が集った。1909年にワカサギが放流されて以来,1世紀となった,節目の大会である。山梨県の皆様によって,この記念すべき会が催されたことはワカサギ放流の歴史に永遠に刻まれることであろう。

 久しぶりに,北海道や福島県,山梨県のワカサギ漁師さんたちと再会を果たした。ワカサギの話で多いに盛り上がった。「ワカサギのおかげで私たちは生活できるのです。」本州の沿岸各所では地元ではマイナーなイメージが強いが,この声を聞いてほホッとした。

 中でも,芦ノ湖漁業協同組合が開発した,ワカサギの自然産卵法は,多くの参加者から注目を浴びていた。この方法が開発されたのは,約10年程前であるがそれまでは他の地域からの発眼卵の移植が主であった。しかし,自然産卵法を開発して依以来,年々移植が少なくなり,ついに現在は,完全自給となった。そして,その発眼卵の半分は他の地域へ販売するまでになっている。

 この産卵法の開発者に直接お話を伺った。「なぜ,ここまで自然産卵法が定着したのでしょうか?」「ワカサギを通して人材を育成したこと。」ときっぱり。「ワカサギは,魅力的な魚です。その魅力を長年子どもたちに伝えてきた。今,彼らは成長し大人になった。ワカサギんチュと呼んでいるがワカサギを愛する若物が芦ノ湖のワカサギ増殖を支えているのです。」

 今や,芦ノ湖のワカサギは神奈川の100選に選ばれ,箱根町では町の魚に指定されている。平成19年には農林水産大臣賞を受賞するまでになった。ワカサギ博士として,これほどうれしいことはない。

 ワカサギに限らず,日本国内には教材として魅力ある水産生物が生息している。これらを教材として子どもたちに提供できたらどれだけすばらしい教育がきるだろう。ワカサギから元気をいただいた研究会であった。

ワカサギ博士,デルタスメルトふ化施設を見学

2009-06-28 | ワカサギに学んだこと
 荒涼とした砂漠地帯が続くカルフォルニア内陸部に入ること60分,目的地であるデルタスメルト(私はカルフォルニアワカサギと呼んでいる)のふ化施設に到着した。UCデービス校の付属の施設である。責任者であるJoan博士(女性である)に,場内を案内していただく。この施設は,州政府が管理する揚水ポンプ場施設の中にあり,入室が厳重に管理されており,一般人は立ち入り禁止である。
 
 10名ほどのスタッフがおり,ふ化したデルタワカサギを交代で飼育管理している。各ステージごとに200L程の円形水槽で飼育しており,スタッフが丁寧に説明してくれた。
 
 はじめて生きたデルタスメルトを触ることが出来た。以前,研究者から聞いた話では,キュウリくさくて,触れたものではない。こんなものは食べられない。といっていたが,今回手に取った感触では,日本のワカサギによく似て,区別はつかない。匂いも決して強いものではない。むしろ,日本のワカサギより匂いがしない方である。ただ,之は天然ではないからとジョーンは話していた。

 彼らは,デルタワカサギを食べない。食べないものでも,これだけの施設と人員を配置しているのは,どのような背景があるのであろうか?

 ワカサギの餌であるコペポーダの種類が変わった。これは,船のバラスト水により,運ばれてきたものである。デルタスメルトへの影響が懸念されている。

 また,連邦政府の役人であるフリオより,40年間にわたり,デルタ地域で魚類の最終調査が継続的に実施されていることを聞いた。調査は,月1回,あるいは月に2回の割合で,トロール船によりリングネットを曳いて,生息魚類の個体数と生息域の経時変化を調査し,その結果をインターネットで公開している。

 デルタスメルトの産卵場はサクラメント川であると推定しているが,産卵場を具体的に推定することはほとんど不可能であるという。これまで,1個の卵しか発見していないという。また,水深が深く,透明度が悪いために,しっかりとした産卵生態が抑えられていない。

 その後,閉伊川ワカサギの生活史に関する調査結果を紹介した。特に,ワカサギの産卵遡上の環境要因,ならびに産卵床,そして産卵行動に興味を持っていた。



埼玉県漁連を訪問

2009-06-01 | ワカサギに学んだこと
さいたま市北浦和にある埼玉県漁業協同組合連合会を訪問した。埼玉県には10支所があり、組合員数約は8000人。今回は、秋ケ瀬における遡上魚の調査について。

毎年、4月から5月になると、東京湾から荒川に天然アユが遡上する。多い年は800kgを超えたが、去年と今年はその半数の400kgであったという。減少した理由は冬季における水温の低下も考えられるのはないかと話した。

また、それに伴って、ワカサギも混隠されるという。今回はこのワカサギの様子を伺うのが目的であった。ワカサギも同様に、少なかったようである。

閉伊川の状況も、芳しくない。鮎の天然遡上は例年ほどではなく、ワカサギもさっぱり、ウグイもいないという。


閉伊川ワカサギ博士,カルフォルニアワカサギ博士と会談

2009-03-04 | ワカサギに学んだこと
 閉伊川ワカサギ博士は,本日カルフォルニア大学デービス校のカルフォルニアワカサギ博士と意見交換をした。デービス校はメインストリートがどことなく,TUMSATに似ている。

 カルフォルニアワカサギは正式名称はデルタスメルト(以下デルタスメルトとする)というが,世界中でサンフランシスコ湾の奥にある,サクラメント川河口域とスイスン湾の周辺にしか住んでいない大変貴重な魚だ。

 しかし,サクラメント水路により大量の水が汲み上げられ南カルフォルニアに運ばれる。それも,ダムなどからではなく,直接河口域から汲み上げられるという。3月のポンプアップが一番多いという。なぜかというと,農業用水につかっているからである。

 その3月はデルタスメルトのふ化の時期と重なる。そのため,3月にふかした仔魚は大量に吸い上げられ,生息が不可能な場所へと運ばれる。産卵期間は3-5月である。4,5月もまたくみ上げがあり,仔魚への影響は計り知れない。

 また,サクラメント川河口域は汚染がひどい。周辺には工場が並ぶ。ゴールドラッシュ時のセディメントがたくさん堆積している。また,降水量も少なく,デルタ地帯は干上がり,以前生息していた場所は陸地になっている箇所が多い。生息環境としては決していいものではない。

 こうしたことが原因で,デルタスメルトは減少の一途をたどっている。地元の人々は,特に大きな魚に興味があり,小さい魚にはほとんど興味がないという。また,キュウリ臭が強く,多くの人から好まれないという。

 デルタスメルトを守るか,それとも農業を守るかというと,やはり農業であり,サケを守るか,デルタスメルトかというと,はやりサケであり,保護対策の選択肢から外れてしまう,と嘆く。デルタスメルトは小さいので食べないそうだ。

 今できることは,ふ化場で稚魚を育て,放流することが一番だという。残念ながら,サクラメント川の流れが速く,水深が深いため,産卵場の生息環境は明らかになっていない。閉伊川漁師の知恵として,産卵場造成によって,個体群が増大する可能性があること話すと,大変興味を持っていた。また,閉伊川で実施したワカサギの産卵遡上の環境要因で,春の大潮で夕方6時頃が最も遡上が多いことそれは,月の周期にも関係があることを話をすると,じつはデルタスメルトも同じ現象であり,なぜなのか不思議であったが,同じワカサギ属の性質ではないかと大変興味を持っていた。

 また,神奈川県の芦ノ湖で実施している,ワカサギの自然産卵法について話をすると,こちらにも大変興味を示し,ぜひ取り組んでみたいということであった。

 絶滅が心配されるデルタスメルトを救うため,日本の技術が役立つ日が来そうである。ただ,心配なのは,デルタスメルトは地元民になじみがないことである。サケマスふ化場下流に生息するイトヨのようなものだ。理想的なのは,デルタスメルトを通して一人一人が水環境への意識を高めることだ。

 ハイポメサス(ワカサギ属)を通してお互いの国の研究者や漁業者が交流を持つことで,何らかの可能性が開けることを願い,会談は終了した。今年は,ワカサギ放流100年である。100周年を記念し,催しをしたいものである。
 
Dr. JAPANESE SMELT MEET DR. DELTA SMELT
IN UC DAVIS, TWO SMELT DOCTORs TALKED ABOUT SMELT FISH FOR THE FUTURE. THEY DISCUSSED ABOUT HOW TO INCREASE DELTA SMELT, AND INFORMED ABOUT JAPANESE SMELT SPAWNING CONDITION RELATION TO SPRING TIDE, AND HOW TO MAKE SPAWNING GROUND, HOW TO DO ASHINO-KO NATURAL SPWANG METHOD.


カルフォルニアのチカの歯形

2008-08-15 | ワカサギに学んだこと
カルフォルニアのチカは日本のチカに比較して歯が鋭い。歯だけではなく,舌の上にも鋭いとげを持っている。しかも,大きな口である。どのような生き物を食べているのだろうか?日本のチカはエビ等の甲殻類が好物であるが,このような鋭利な歯は持っていない。
追記 これはチカでない可能性がある。「night smelt」Spirinchus starksiという日本にはいないキュウリウオ科で,砂浜で夜に産卵する。確かに,surf smelt といって販売していたが,チカ(surf smelt)と混同している可能性がある。

カルフォルニアのチカ

2008-08-15 | ワカサギに学んだこと
カルフォルニアでは,チカ漁が盛期である。毎年6,7,8月頃にはチカが産卵のためhalf moon bay やfort blackの海岸に集まってくる。日本のチカは3,4月が盛期である。このチカは,MBARI(深海生物研究で有名なモンテレー湾海洋研究センター)の隣にあるチオピーノで有名なレストラン「フィルズマーケット」に並んでいたチカ。10匹で1ドルであった。体長は12センチ前後である。1年魚であろうか?
追記 これはチカでない可能性がある。「night smelt」Spirinchus starksiという日本にはいないキュウリウオ科で,砂浜で夜に産卵する。確かに,surf smelt といって販売していたが,チカ(surf smelt)と混同している可能性がある。

閉伊川ワカサギ,ニューヨークへ

2006-07-24 | ワカサギに学んだこと
閉伊川のワカサギが太平洋東海岸から,大西洋西海岸にあるニューヨークで紹介された。
場所はロングアイランドユニバーシティー,ブルックリンキャンパス。fugedaboutitの発祥の地。
第30回NATIONAL MARINE EDUCATOR'S ASSOCIATION (2006)にて発表された。来年度はメイン州でワークショップを開催する予定。
(Abstract) Education about fisheries science and technology (including marine science) has carried out in number of 46 fisheries high schools in all over Japan from Hokkaido to Okinawa to produce industrial workers.
 In conjunction of small number of student apply to enter the school; some of the fisheries high school was intended to change fisheries education to another field.
Now, many of the school are trying to emphasize not only producing industrial workers, but also a volunteer in community activity. According to Yaizu Shizuoka fisheries High School Principal, the approaches can be considered as “education of 2 way point”.
Marine ecological research activity is thought to be most effective study to enhance the literacy of ocean environment.
 Let me introduce the ecological research activity carried out in Iwate Prefecture Miyako Fisheries High School in North of Japan.


閉伊川ワカサギ研究所

2005-12-22 | ワカサギに学んだこと
ついに、念願の研究所が完成!閉伊川ワカサギ研究所(Hei river and Wakasagi Reserch Institute)が市内のY川河口域に。といっても、3坪ほどしかない大変小さな施設である。この研究所では、採取用具の保管、魚類標本収集整理などを目的としている。私財数十万円を投入したものである。この建物は、田窪の物置で(TYR-638,約3m×3m)物置としては割合大きめ。4月からの産卵調査に向け準備が始まっている。

4<チカとワカサギ>

2005-03-07 | ワカサギに学んだこと
 ワカサギは,日本海沿岸には多い。しかし,太平洋側には涸沼や北浦,小川原湖だけに大きな個体群として自然分布するといわれている。これに対し,
岩手県の三陸沿岸に目を向けると,入り組んだ湾のあちこちに,ワカサギの近縁種である「チカ」が多く分布している。ワカサギとチカは一見すると区別がつかない。写真に示すとおり,一見どちらがワカサギなのか区別がつかない。外形的な大きな違いは腹鰭基部が背鰭基部より前にあるのがワカサギ,その逆がチカである。これも,産卵期が近くなるとお腹がふくらみ区別がつかなくなる。最終的にはレントゲン写真を撮り脊椎骨数を数える。おおよそ57個がワカサギ,60個以上がチカである。

 一方,生態的な違いは大きい。ワカサギは河口から3.0km上流にある淡水域で産卵するのに対して,チカは海浜で産卵し海で成長する海水魚である。しかも,産卵期はワカサギより一月早く,両者が入り交じって産卵することはない。チカは成長ととともに河口域に出現するが,もしワカサギも生息しているとすれば,成長の早いチカがワカサギを餌として食べ,さらに餌も競合するとことになる。このような理由から,三陸沿岸にはチカが優先し,ワカサギが分布域を広げることができないのである。

 では,なぜ地下の優占する三陸沿岸で、閉伊川にはワカサギが分布するのであろうか?これまで明らかになった生活史を解説しその謎に迫っていきたい。