Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

お台場海浜公園の海底調査【TBS飛び出せ!科学くん】

2010-11-07 | 東京湾
 海洋生物の解説の依頼を受け,お台場海浜公園の海底調査に同行した。東京湾といえば,決して詳しいわけではないが,少なくとも東京港のすぐそばで生活し毎日海に接していることは事実である。それだけ,東京港への思い入れは強く,「何とかしたい!」(なあどか,すっぺす!!)という思いは閉伊川と一緒である。しかし,その度合が極端に異なる。何が異なるかというと,生活排水の量である。東京港はそのほとんどがヘドロで埋め尽くされている。上から見ると真っ黒。2900万人の生活排水が流れこんでくるのだ。
 また,何処の場所でも共通なのは人々の意識。どうしても陸上生活を送る人間は,水へのケアがない。自然が何とか解決してくれると思っているのだろう。どうすれば,東京湾に対する関心を高めればいいのか。何とかできないものか?この思いから同行を決意した。「東京湾でも生物が頑張って生きている」。生物にエールを送りつつ,私たちが何が出来るだろうか,を考えるきっかけになれば,と願う。12月4日にオンエアされる予定である。

ワカサギ博士の見た品川の海

2010-04-13 | 東京湾
 ワカサギ博士が閉伊川から高級リゾートマンションの立ち並ぶ品川に移って5年目となった。毎朝の運河を見ながらのジョギングが日課である。昨日は土砂降りの雨であったが,本日は気持ちの良い朝の天気であった。

 一般に,海といえば青いイメージを持つだろうが,品川の海(運河)は違う。特に土砂降りの次の日は茶色をしている。時には,白い時もある。なぜだろう。

 聞くところによると,大雨が降ると水再生センターでは雨水と一緒になった未処理の汚水が排出されているようだ。このような処理施設は合流式下水道という。東京湾の8割は合流式下水道である。雨の度にこのような現象が起きるのである。しかも,沿岸にはマンションが急激に立ち並び,汚水処理場は限界に達しているという。

 アメリカの五大湖もかつては同様の合流式下水道であったらしい。シーグラントのエージェントによるとすべての浄化槽を分流式下水道にして完全に処理をした処理水を排出しているという。オランダもそうであるらしい。

 確かに,海洋にはある程度の栄養が必要であろうが,今の状況は決してジョギングをして気持ちいいものではない。かといって,分流式下水道にすればすべて解決するかいうとそうではないと思う。何らかの改善策が必要であろう。
(ご指摘を受け語句を訂正しました。ありがとうございます)

芝浦アイランド周辺はなぜ水がきれいなのか?

2009-11-13 | 東京湾
 大学から自転車で10分。港区内に芝浦アイランドがある。広さは6ha(6万平方メートル),大学の広さは22haであるから,4分の1ぐらいの広さである。この島の西側にはモノレールが走る。その直下に、長さ約500m、幅5m、深さ1mほどの浅瀬が広がっている。初めて訪れたとき、「おやっ?」と思った。何かが違う。いつも見ている色ではないのである。

 品川浦周辺には見ない光景だ。観察すると石の間に潜り魚たちが何やら食事中であった。ボラが群れている。ハゼもいる。ここに集まる魚は10cm程度の小型魚が多い。浅瀬が生物の多様性を育んでいるようだ。生物が有機物を固定しているのであろう、この周辺は特有のにおいが少ない。

 このような場所がなぜ東京湾沿いに少ないのか?東京湾は、埋め立てられて運河になっており、あくまで船の通り道だからでだ。生態系のことを考えて作られていないのだ。品川から深川までのエリアは、かつて江戸前の干潟が広がった。今となっては、運河や桟橋が目立つ。

 この芝浦アイランドには、平成17年にマンションが完成し,人口が1万人の町が現れた。平成21年には町会が立ち上がった。この浅瀬は、カニ護岸といい、環境浄化を願い、住民の強い要望でできたものらしい。そして、住民らによりボランティアで環境浄化活動が行われているという。

ワカサギ博士、さかなクンと共演

2009-11-08 | 東京湾
東京海洋大学学園祭では、毎年恒例さかなクンによる講演会が開かれるが、教員も一緒に登壇することになっているようだ。
今年は、ワカサギ博士の出番となった。テーマは運河にすむ魚ボラである。

第1部「運河にはどんな魚がいるかな?」
ワカサギ博士「大学周辺の運河には全部で63種類、どんな魚いるでしょう?」
ワカサギ博士「ボラ、ハゼ、フグ、アユ、スズキ、サンマ、マイワシ、ウルメイワシ、ウナギ、タツノオトシゴの仲間(サンゴタツ)等」がいるんですよ。この中で一番多い魚は何かな?
会場より「ボラ」
ワカサギ博士「そうなんです。正解です。」「今日は、運河から特別ゲストが来ています。ボラ子ちゃんです。」

第2部「ボラ子ちゃん登場」
ボラ子ちゃん「さかなクン、どうして私たちボラは運河にたくさんいるのか理由を知っていますか?」
さかなクン「いい環境だから?」
ワカサギ博士「そうなんです。運河には下水の排水が流れていて、1年中20度以上の水が常時流れているのです。」
ボラ子ちゃん「でも、私たちの大好きな海藻が生えなくて排水から流れ出る有機物やヘドロばっかり食べています。」

第3部「運河のこれから」
ワカサギ博士「さかなクン、おいしいお魚が食べられるようになるにはどうしたらいいでしょうかね。」
さかなクン「これからもずっと、おいしい魚を食べていくためには、私たち消費者はしっかり残さず食べること。そして、排水に余計なものを流さないこと。これが大切。」
ワカサギ博士「東京湾には2900万人の排水が流れ込みます。一人一人ができるだけ東京湾を汚さないように気を配り、おいしいお魚が食べられるようにしていきたいですね。」
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 さかなクンとの出会いは、かれこれ10年前だ。水産生物という魚の授業の時だった。J.S君が「先生、最近先生と同じような魚好きのタレントが出ているよ。」と教えてくれた。「へー、私意外にも魚好きが、世の中にいるんだ」とうれしく思ったことを思い出す。当時は、「魚ってすばらしい生態編」という副教材を作成し、ワカサギの生態調査に精を出していた頃である。魚好きであるとともに、海洋の環境問題や食文化の啓発に力を注ごうとする、誠実な姿勢が印象的であった。

ボラはなぜ集まるのか?

2009-11-04 | 東京湾

 下水処理場の排水口から,大量の処理水が流れ出る。排水口周辺には,通年,ボラが生息し,競うように排水口に集まっている。トドと呼ばれる60cm超級の大型ボラから,小型のボラまで大挙として群れている。一体なぜ,ボラは集まるのか?
 
 ボラの好物は海藻である。しかし,海藻以外にも様々な食べ物を食べるようだ。ボラを水槽で観察していると面白い。底層を丸ごと口に加え,砂など口から不要になった物をはき出している。

 では,排水口付近では何をしているのか?品川では,体の大きい個体が排水口に近い場所に群れる。ここは排水からの流れが激しいところである。

 よくみていると,排水口から流れ出てくる白色の直径2-3mm程度の細かい粒子を食べている。時に,茶色のものも見られる。

 その正体は一体何であろうか?私たちは仮説を立てた。もしかしたら,それはボラの好きな藻類かもしれない。ボラの好きな藻が沈殿池に生えているかもしれない。

 早速,処理場の見学をすることになった。ここは東京ドーム4.5個分の広大な敷地に,沈殿池,微生物浄化槽が並んでいる。もうすでに,還暦を迎えた施設もある。

 よくみていると,沈殿池には茶色の浮遊物が浮かんでいる。まさしく,排水口から流れ出るものによく似ていた。「あれは,何でしょうか?」「排泄物などです」

 そして,その茶色の有機物は25mプールの端から端へとゆっくり流れに従って動いている。少しずつ移動させながら沈殿させるのだ。深海に降り注ぐマリンスノーのようにゆっくりと沈んでいく。

 しかし,沈まないものも当然ある。沈殿しないものは,上澄み液に一緒に取り込まれ,排水処理へと回される。その後,最終的に排水口へ流れ出るのであろう。

 さらに,雨水が大量に入り込むと,沈殿が大幅に間に合わない。凝集剤は,有機系凝集剤やポリ塩化アルミニウム(PAC)を使用する。

 実は,近年の沿岸のマンション大開発で大量の汚水が発生し,処理能力の限界を超えている。この処理場は3つの区を担当する。3区を合わせると150万人以上が住んでいる。さらに,昼間の出勤者を合わせるとそれ以上であろう。還暦を迎えた沈殿池には,物足りなさを感じた。後で聞いた話だが,昨年は東京ドーム12杯分の有機物が運河に流れ出たという。運河のヘドロの正体である。

 5年後には,ここに1000億円をかけて巨大な排水処理施設が出来るそうだ。そのお金はもちろん税金だ。

イノベーション・ジャパン in 有楽町

2009-09-17 | 東京湾
 イノベーション・ジャパン,大学発「知」の見本市が有楽町の東京国際フォーラムで開催された。企業や官界との連携を促進するために全国の大学が一堂に会し,大学発のものづくりの取組を紹介するものである。全国の100以上の大学が集まり,ブースを設けそれぞれのものづくりの紹介がされていた。

 中でも,目をひいたのは「ものづくりではない産学官連携」というお茶の水大学サイエンスエデュケーションセンターだ。これは,理科教育支援員や環境学習会等を通して社会貢献するという立場に立った取組である。このような取組は,企業にとって直接的な利益に繋がらないが,市民の科学リテラシーを高め社会全体の利益に繋がるのである。

 イノベーション・ジャパンは金曜日まで行われる。

東京湾のおいしい話

2009-08-31 | 東京湾
東京湾のおいしい話と題し,東京湾サイエンスコミニュケーションが開催された。東京湾で漁獲された5種類の魚を参加者の皆さんでいただいた。その魚は,ボラ,カマス,スズキ,アナゴ,アジである。一番人気は,ボラであった。私も頂いたが,本当においしい。甘いのである。食した余韻の後に,東京湾の物質循環,漁業と食文化の歴史について講師の方より話をいただく。その後,東京湾と私たちの未来と題し,参加した方々でグループディスカッションを行った。
グループ1「ボラがこんなにおいしいとはびっくりでした。」
グループ2「ボラがおいしいのに驚きましたが,安全性が気になりました」
グループ3「東京湾というと聞こえが悪いのですが,江戸前ブランドを作って売り出したらどうでしょうか。いけると思いますよ。」

やはり,物質循環が大きなテーマであるのだが,やはり「食」にひかれる。東京湾でもやはり「食」なのである。次は,安全性と江戸前ブランドの開発がテーマになりそうである。