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バウンドするスーパーボールの行方

2020-11-01 08:29:09 | ブログ
 テレビで「でんじろうの実験」を見ていて、スーパーボールをバウンドさせてその行方を追う実験に注目した。

 水平な床面に斜め方向からスーパーボールを投入すると、ボールは床面上のP点でバウンドして前進し、水平な天井面上のQ点に衝突してバウンドする。Q点でバウンドしたボールはどちらの方向に進むのかという問題である。

 ボールは(1)さらに前進する、(2)Q点で鉛直方向にバウンドし床面に向けて進む、(3)元の経路をたどりP点に向けて後進する、の3つの選択肢がある。

 私は、ボールがQ点に到達するとき、もっていた水平方向の運動量の少なくとも一部は保存されるはずであるから、(1)の結果を予想していた。しかし、実験結果は(3)となり、私の考えは見事なまでに間違っていたことが分かった。

 この結果を自宅で確認するために、木製の大テーブルの上に逆さにした木製の小テーブルを4本の支柱で支える実験装置をつくった。大テーブルの面上は床面に相当し、小テーブルは天井面に相当する。

 床面に斜め方向からスーパーボールを投入すると、ボールは床面上のP点でバウンドし、天井面上のQ点で元のP点の方向に向けてバウンドした。この実験を何度繰り返しても同じ結果であった。

 そこで、参考文献を参照しながら、バウンドするスーパーボールの力学について解析することにした。

 解析中に分かったことの要点は、運動するボールの水平方向の速度とともに、ボールの回転速度と回転の向きが、バウンドするボールの行方を決める重要な役割をもっているということである。

 水平な床面および天井面に垂直な平面内を運動するボールを考える。ボールの回転軸はその平面に対して垂直とし、水平面上にx軸、鉛直方向をy軸にとる。x軸についてボールの進行方向を正とすれば、ボールの回転方向は時計回りを正とし、反時計回りを負とする。また、y軸は鉛直上向きを正の向きとする。

 バウンド直前の速さv1、角速度w1で運動していたボールのバウンド後の速さv2、角速度w2とする。

 バウンドするボールの力学に関する基本的な知識として、二次元の反発係数ex,eyを次のように定義する。ここでRはボールの半径である。
   ex=-(vx2-Rw2)/(vx1-Rw1) (水平方向)
   ey=-vy2/vy1 (鉛直方向)

 ボールは、バウンドの際に鉛直方向だけを見れば上方または下方にバウンドするかバウンドせずにその場に留まる(完全非弾性衝突)が、水平方向では回転のかかり方によって前後にバウンドすることがあるため、それぞれの反発係数の範囲は、
   -1=<ex=<1
0=<ey=<1
となる。また、eyは一次元の反発係数と同様に定数とみなして問題ないが、exはその変動がバウンド前の速度と角速度によって大きく変わるため、ほとんどの場合に定数として扱うことができない。

 床面に投入するボールの角速度をw1=0と仮定しても、ボールと床面の接触点Pに滑り摩擦力がはたらき、ボールは回転軸の周りにvx1とは反対方向に力のモーメントを受けて回転する。このため、vx1>0とすると、vx2>0かつw2>0となる。

 P点でバウンドしたボールは、天井面のQ点に到達するが、バウンド直前の新vx1の絶対値は元のvx2と同じとみなしてよい。新vx1>0にとると、新w1の絶対値は元のw2と同じであるが、新w1<0でなければならない。

 ボールはQ点においても滑り摩擦力を受けるが、新w1の回転方向とは逆方向の回転となるような力のモーメントを受ける。このため、多くの場合にボールの回転は停止し、新w2=0となる。よってexの式から、0<ex=<1の場合にvx1>0,w1<0とすると、vx2<0でなければならない。

 こうなると、Q点におけるexは正数であり、w1<0,w2=0,vx1>-vx2の条件から可能なexの範囲が決まる。P点におけるexを仮定することにより、P点バウンド後のvx2とw2を計算できる。Q点における可能なexを仮定することにより、Q点バウンド後のvx2を計算できる。vx2<0となり、Q点に関するvx1が前進を示すのに対してvx2は後進となる。

 ところで、Q点でバウンドしたボールがvx2>0、つまり前進するようなケースが存在するのだろうか。

 Q点におけるバウンド直前のw1が大きく、すなわち回転の角運動量が大きく、Q点における滑り摩擦力に打ち勝つことができれば、w1の少なくとも一部は保存され、w2>0かつvx2>0となるはずである。-1=
 また、P点におけるバウンドに関し、投入したボールのvx1>0に対してw1<0の回転がかかっている場合には、vx2<0、すなわちボールが後進するケースがあり得ることも理解できる。

 参考文献
 上甲和宏著「ボールのバウンドの数理」(インターネット)