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TPP時代の国内産業保護

2012-03-14 14:11:29 | ブログ

 まず、米国の話から始める。米国では、太陽光産業が生み出すジョブの数は、太陽光発電パネルの製造から販売、設置、メンテナンスなどのサービスに至るまで100,000にもなるという。しかし、最近では、中国の発電パネル製造会社の攻勢が激しく、中国政府の補助金の支援を受けた安価な発電パネルが米国内に流入し、米国のパネル製造会社は苦境に立たされている。

 そこで、米国政府は、中国からの輸入発電パネルに対して高い関税をかけることを検討している。しかし、100%の関税をかけたとき50,000の国内のジョブが失われ、50%の関税では43,000のジョブが失われるという。

 発電パネルの製造業と関連サービス業のジョブ比率は、1:3程度である。また、中国の太陽光発電パネルの世界シェアは60%ほどということである。そこで、米国内での中国製品の占めるシェアが同じ60%とし、100%の関税によって米国内に流入する中国製品が0になると仮定してみる。そうすると、この産業が生み出すジョブ100,000のうち、米国の製造業には25,000のジョブ、関連サービス業には残り75,000のジョブが従事されていることになり、サービス業のうち中国製品を扱うサービスは45,000を占めている計算になる。そこで、失われるジョブの数50,000という推定も大げさな数字とも思えない。

 そういうことになると、中国製品に高い関税をかけたとき失われるジョブは43,000~50,000、現状の関税のままでは最悪の場合でも失われるジョブは製造業の25,000程度ということになり、製造業は存続が危ぶまれるが、高い関税をかけない方がベターという方向である。高い関税をかけると、発電パネルの価格が高止まりとなり、消費者の足を引っ張ることになり、再生可能エネルギー利用の気勢がそがれることにもなる。

 日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に入り、コメなどにかける関税のことが話題になっている。日本のコメの場合、現状では高い関税と補助金で保護されているが、それでもコメ生産農家は苦しい状況である。コメにかけている関税がゼロになった場合、輸入米の価格がどのくらいになるか、試算されている。同様に、失われるジョブという観点からも検討が必要ではなかろうか。もっとも、現実には、1つのジョブには複数種類の生産物が対応しているであろうから、あるいは兼業者が多いであろうから、失われるジョブ数を計算するのは容易ではないであろう。

 米国の太陽光産業の例を1つのモデルとして一般化したとき、どのような生産物に適用できるのかわからない。それでもモデル化してみたくなる。ある生産物の国内製造に係わるジョブ数をn、この生産物の国内製造に係わるジョブの比率をpとする。そうすると、この国内製品に対応する関連サービス業に係わるジョブの比率は(1-p)/p、ジョブ数はn(1-p)/pとなる。上記の米国の発電パネルの例では、国内製造業のジョブ数と対応するサービス業との比率が25,000対30,000であるから、5:6の比率となる。また、国内製品のシェアをs、輸入品のシェアを1-sとする。輸入品についても、製造ジョブ数と対応するサービス業に係わるジョブ数との比率が同じと仮定してよいから、輸入品に関連するサービス業に係わるジョブ数は、n(1-p)(1-s)/psとなる。比率pは、その生産物のみに依存する定数である。ジョブ数nとシェアsは、関税率rと時間tに依存する関数とみることができる。短期間であれば、nとsとは比例関係にあるとみてよいだろう。問題は、n(r,t)またはs(r,t)の関数形である。需要予測データや統計データなどからこれが推定できれば、国内製造に係わるジョブ数nや輸入品に係わるサービス・ジョブ数の推移を推定できる。