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マクロな世界における「もつれ」について検証する

2019-10-27 07:49:27 | ブログ
 量子力学についての7月28日付のブログを書いた後、「量子もつれ」について友人たちと議論した中で、「マクロな世界に限っても、量子現象の観測に似た事象が起こっており、時代はようやく量子論に追いついて来た」という話になった(量子現象と似ているように見えて、実は似て非なる事象という結論になるのだが)。

 例えば、コンビニなどの小売店の多くは、一日の終わりに締めとしてその日の売り上げを計算するとともに、陳列棚上の商品を含めた在庫量を計算している。したがって、任意の時点である特定の商品が棚に存在するか否かは目視により確認するまでは分からず不確定な状態である。

 「量子もつれ」に似た現象として、顧客が商品Aを買ったとき必ず商品Bが必要になるので商品Bを買うとする。この場合には、客がAまたはBを買ったことが分かれば、他方もほぼ確実に買っているという予想ができる。しかし、これほど強い相関関係をもつ商品AとBの例を思いつかないのが難点であった。

 そのとき、参考文献を読んでいて人がはく靴下の色を観測する例に出会った。多くの人は左右で同じ色の靴下をはく。しかし、好んで左右で色の違う靴下をはく人もいるようだ。そこで、多数の人々について左右の靴下の色の観測結果を予想し、「ベルの不等式」が成立するのか否か概略計算してみることにした。

 二つの粒子が相関関係をもつ「量子もつれ」について、量子もつれ生成器から左右など別々の方向に走行する量子の物理量を測定する。左の測定器は、量子の物理量A又はBを測定する。右の測定器は、量子の物理量U又はVを測定する。

 A/Bはどちらか一方しか測れない。不確定性原理による制約である。U/Vについても同じである。

 「量子もつれ」測定上の制約に合わせて靴下の色の観測についても制約を設ける。靴下の色には、黒、青、緑、黄、赤、ピンク、白などがあるが、物理量A,Uとして黒のみ測定でき、B,Vとしてその他の色のいずれかであればその他として測定できるとしよう。もちろん、黒と青の二色のみを測定対象としてもよいし、他の色に変えても問題はない。

 A,Uの値を1に設定し、B,Vの値を-1に設定する。例えば、AU=A&U=1は左右の靴下の色が同じ黒であることを示し、BV=1は他の色同士であることを示し、AV=-1,BU=-1は左右の色が異なることを示す。

 一般的に言って、A,B,U,Vに1または-1の値を設定すると、(AU,AV,BU,BV)に関する1と-1の組合せパターンの数は16通りになる。しかし、その(1,1,1,-1)と(-1,-1,-1,1)の組合せパターンは論理的に矛盾して、マクロの世界ではあり得ないので除外することにする。

 残りの14通りのパターンについて、次の計算式を適用して
   s=AU+AV+BU-BV  (1)
を計算する。

 計算結果は、s=2,0,-2のいずれかとなる。本例の場合には、(1,-1,-1,1)であるので、s=-2となる。

 多くのサンプルについて(AU,AV,BU,BV)を測定し、次の式に従ってsの平均値<s>を求める。
   <s>=<AU>+<AV>+<BU>-<BV>  (2)
 ここで、<AU>は、AUの測定値の平均値であり、AUの値の合計/サンプル数である。<AV>,<BU>,<BV>についても同様である。

 ベルの不等式によれば、力学系に1,-1のような隠れた変数が存在するならば、次の不等式が成立しなければならない。
   -2=<<s>=<2  (3)

 本例の靴下の色の観測については、<AU>=AU=1,<AV>=AV=-1,<BU>=BU=-1,<BV>=BV=1となるので、<s>=-2となり、(3)式が成立する(実際に観測しなくても思考実験だけでこの結論が出る)。

 言い換えれば、この力学系には左右の靴下の各々には何らかの色がついているという「隠れた変数」に相当するものが存在するので、ベルの不等式が成立するのである。一般的には左右の靴下の色は異なっていてよいが、そのサブセットとして左右の靴下の色が同じという場合も含まれると考える。

 ちなみに、量子力学に関する「量子もつれ」の実験の場合には、例として<s>=2.42などであり、ベルの不等式が成立しない。これによって「隠れた変数」が否定されている。量子力学が適用されるようなミクロの世界では、マクロの世界であり得ないパターンの計算式に「足を踏み入れる」ためと思われる。

 参考文献
 ルイーザ・ギルダー著「宇宙は「もつれ」でできている」(ブルーバックス)
 日経サイエンス2019年2月号「最終決着 量子もつれ実証」

台風19号の被害について思うこと

2019-10-20 07:18:40 | ブログ
 台風15号による千葉県などの被害に続いて、今回の19号による広範囲の都県に亘る被害と、台風による自然災害続きである。

 台風19号による被害は、北は岩手県、宮城県から南は静岡県まで14都県に及び、12都県で78人が死亡し、13人が行方不明という(10月18日の報道による)。福島や宮城など7県の68河川、125ヵ所で堤防の決壊が確認されている(同日報道)。

 伊豆半島に上陸した台風19号が、岩手県や宮城県の奥地まで大量の雨水を運んだということは、一つの台風が海から吸い上げた莫大な水の量を物語るものである。地球温暖化の影響が被害に会われた人々の生活にまで及び、それを破壊するようになったのである。

 これらの県では、おそらく気候変動に応じてどのように治水対策を補強するかを想定していなかったようで、まさに気候の危機は人の生活を脅かす危機である。

 東京都は、多摩川周辺で川の増水による建物被害が生じ、1名の死亡者を出したが、人口の割には被害が少ない。東京と他県には、台風に関する限り、防災格差ありと思わざるを得ない。

 この防災格差の要因として、気候変動の影響のほかに、人口減少による地方の疲弊を想像しないわけにはいかない。