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液体窒素の中に赤熱した鉄球を沈める

2018-03-04 08:13:01 | 日記
 テレビで、米村でんじろうさんが演ずるサイエンス・ショウを見た。その中に興味深い実験があったので、この際、その考察を記録しておくことにした。

 実験は、1000度Cまで真っ赤に熱した鉄球を-200度Cの液体窒素が入ったガラス容器の中に沈めるものである。鉄球は、容易には冷却されず、かなり長い時間、赤熱した鉄球の姿が見えていた。

 容器の中には、液体の窒素と、気体となって鉄球の周囲に付着した気体窒素と、固体の鉄球との3相に分かれた物質が同時に存在することになる。ここで、気体窒素の熱伝導性が悪いために、鉄球の熱量が容易には液体窒素まで伝わらず、鉄球は容易には冷却されない。気体窒素は、ある程度、断熱材の役割を果たすことになる。

 気体窒素は熱平衡の状態にないため、その温度を推測することは難しい。鉄球の周囲の気体窒素の分子は、熱せられてその速度が速くなると、表面張力に打ち勝って鉄球を離れ、液体窒素の粘性抵抗に打ち勝って上昇し、大気中に流出する。そうすると、脱出した窒素分子に代わってより温度の低い気体窒素が鉄球の周囲に付着することになる。このような気体窒素の上昇対流も、熱の伝導を妨げる要因となるのであろう。また、液体窒素が蒸発するとき気体窒素から蒸発熱を奪うが、これも熱の伝導にとってマイナス要因である。

 気体窒素分子のダイナミックスをコンピュータ・シミュレーションすることは難しいが、実験によって気体窒素の平均的な温度伝導係数を測定することは、比較的容易であるとみる。液体窒素中の鉄球温度の時間変化は、光高温計のような測定装置を使えば容易に測定できる。この測定結果と、液体窒素の減少量の測定結果とから、気体窒素の熱伝導性能を推定できるだろう。

 最後に、熱伝導に関する基礎的な理論に基づいて気体窒素の熱伝導性能を議論しておこう。

 熱伝導による温度変化の伝わり方をきめる周知の微分方程式がある。この式に現れる定数が温度伝導係数kであり、物質の熱伝導特性を示す数値である(ギリシャ文字のカッパーで表現されることが多いが、ここではkで代用しよう)。

 k(気体窒素)/k(鉄)は、鉄のkを1としたときの気体窒素の係数比率を示している。また、この値は、鉄の熱伝導に関する時間スケールを1としたときの気体窒素の時間スケールを示している、と言い換えてもよい。

 そこで、ざっくりとした値ではあるが、気体窒素の係数比率を計算してみると、1000分の1のオーダーなので、鉄球と比較して同一熱量を伝導するに要する時間が1000倍程度になることが分かる。