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ハイレゾ音源の効能を探る

2014-11-30 13:31:29 | ブログ
 ハイレゾリューション(ハイレゾ:高解像度)音源が普及し始めているという。ハイレゾ音源は、CDより生の音(原音)に近く、人が演奏会場にいるような臨場感を得られるとか、脳のリラックス効果があるという特徴をもつようだ。そこで、この際、これらの特徴がどのような科学的根拠によるものなのか、整理しておくことにした。

 まず、ハイレゾ音源は、CDのようにディジタルの音楽データであるが、情報量がCDの3~6.5倍あるという。すなわち、それは、原音をCDよりもきめ細かくサンプリングして記録しているから、アナログレコードには及ばないものの、再生の忠実度が高いということになる。言い換えれば、CDよりも演奏会場の臨場感に近い高音質が得られるということである。

 次に、ハイレゾ音源の記録・再生できる音域を他と比べると、CDが22kHzまでの音域、アナログレコードが40~50kHzに対して、48~96kHzもある。CDの22kHzは、ほぼヒトが聞き取れる音域範囲に合わせている。そうすると、ヒトが聞き取れないにもかかわらず、ハイレゾ音源の音域範囲が広く、アナログレコードの倍近くあるのには意味があるのか、という疑問が生じる。

 音楽データを長時間に亘ってサンプリングし、その強度の時間変化をさまざまな周波数成分に分解したとき、それらの強度分布(パワースペクトル)が周波数fにほぼ逆比例するという事実が知られている。パワースペクトルとは、周波数成分fが音波という形で人の耳まで搬送するエネルギー成分の大きさと考えてよいだろう。つまり、周波数fがもつ音響エネルギーは、比例定数×1/fで与えられる。

 そこで、CD音源が放出するエネルギーの全体量を求めるために、比例定数は別として、関数1/fを変数fについて40から22kまで積分してみると、概算で6.21という値を得る。次に、CD音源のエネルギー量に対して、ハイレゾ音源が追加するエネルギー量を求めるために、関数1/fを22kから96kまで積分すると、1.35という値を得る。こうしてみると、6.21という値に対して追加のエネルギー分は、無視できない程の大きさをもつことが分かる。

 ハイレゾ音源がもたらす追加の音響エネルギーは、人が聞き取れるものではないが、それにもかかわらず、聴覚などを通じて人の脳神経に作用するようだ。

 音楽に限らず、不規則に時間変化する量のパワースペクトルが周波数にほぼ逆比例するようなゆらぎ現象は、1/fゆらぎと呼ばれている。

 地球的、あるいは宇宙的規模の物理現象、例えば、気温の長期変動、地球の自転速度の変化、年間の雨量のばらつき、太陽黒点の活動、海の波のリズム、宇宙線の強度変化などにも、1/f型パワースペクトルを示すゆらぎ現象が存在していることが発見されている。近年、それらの大自然にあらかじめ存在している現象の中に生息する生物が、生命を維持していくために活動させている体内臓器、器官の運動にも1/f型ゆらぎが存在していることが発見されるに至り、自然界の物理法則と生体との関わりが論じられるようになった。例えば、心臓の鼓動も速くなったり遅くなったり、不規則にゆらいでいるが、心拍周期の変動を長時間に亘って測定し、そのパワースペクトルを調べると、1/fに近い結果が得られるという。

 そうであれば、クラシック音楽などに内在する1/f型ゆらぎが、大脳の神経細胞に作用して、大脳がその1/fゆらぎに同調するような活動を誘起し、人を心地よい精神状態に導く、と考えるのが自然である。CD音源に比べて、ハイレゾ音源は、より1/fゆらぎに近い音場を実現できると言える。

 ただし、現実的な問題として、フル・バージョンのハイレゾ音源を楽しむためには、それなりに金がかかる。パソコンに専用ソフトをインストールし、ネットから有料のハイレゾ音源をダウンロードすれば、パソコンだけで聴けるようだ。また、パソコンとUSBを介して、持ち運びできるハイレゾ対応のiPhoneやスマートフォンで聴くこともできる。さらに、専用プレーヤーと、ハイレゾ対応のヘッドフォンまたは同対応のスピーカーとを用意すれば、本格的にハイレゾ音源を楽しむことができるだろう。

 私の手持ちのCDプレーヤーの説明書を見ると、この装置は、32ビット/192kHzまでのD/Aコンバーターを備えており、USBメモリーやCD-RWを介して、通常のCDよりもサンプリング周波数の高い音楽ソースを入力できるので、より高音質のオーディオ再生を楽しむことができる。しかし、そのアナログ出力の再生周波数範囲を20kHzまででカットしているので、残念ながら、満足できるような1/fゆらぎの効能は望めない。

 参考文献
 蔵本由紀著「非線形科学」(集英社新書)など