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量子力学についての認識を見直す

2019-07-28 08:20:36 | ブログ
 量子力学で言う「量子もつれ」に関する自然科学ダイアログに参加した。その中で参加者の説明を聴いたり、自分はこう考えるという発言をしたり、メールを書いてその筋の専門家と思われる参加者と議論したりした後、自分の認識を見直した方がよいと思うようになり、このブログを書くことにした。

 まず、ハーフミラーの例を挙げる。この鏡は、射出器から投入された光の粒子(光子)を50%の確率で反射し、50%の確率で透過するものである。反射光と透過光の各々を検出するための検出器を設けると、光子はいずれか一方の検出器でしか検出されない。

 私が「光子の波動関数は反射の波と透過の波に二分される」と言うと、専門家は「光子の波動関数は二つの波動関数に分かれるわけではない」と注意する。

 光子の波動関数は、鏡を通過した後に、波動関数1+波動関数2のように重ね合わせの状態になるが、これは二つの波動関数に分かれることを意味するものではないという。「分かれる」と言うと断絶を意味するが、両波動関数は相関関係を保ったまま共存すると考えるのであろう。

 波動関数は考えている力学系の状態を表すベクトルであるので、状態ベクトルとも呼ばれる。この場合には、二つの波が干渉することはないので、波動関数の代わりに状態を表す表記をした方が分かりやすい。

 専門家の鵜沼さんに教えていただいた状態の簡略表記を使う。

 ハーフミラーを透過した場合、部分系の状態は「1T」・「0R」である。反射した場合は「0T」・「1R」である。・はアンド記号である。この2つがすべての可能性である。

 全体の状態はすべての可能な状態の重畳(線形結合)になると考える。
  全体の状態=「1T」・「0R」+「0T」・「1R」
ただし、全体の状態を正規化するための定数を省略する。この例も一つの粒子に関する「量子もつれ」と言える。

 次に、二重スリット実験の例を挙げる。

 エネルギー・レベルの揃った多数の電子(電子線)を2つのスリット(穴)が開いた板を通してスクリーンにぶつけると、スクリーン上で干渉縞、すなわち、山と谷が交互に現れる干渉模様を観測することができる。

 この二重スリット実験を単独の電子を1個ずつ放出し、スリットを介してスクリーンにぶつけても同じ干渉縞ができることから、スリットを通過したこの電子の二つの球面波が重ね合わされた結果、スクリーン上のいずれかの山を形成する一点の粒子として観測されることが分かる(「二つの球面波に分離し、」と言うと、専門家の注意が入る)。電子がどの山に属する一点となるかは、スクリーンとの衝突という量子の測定によって決まる確率事象である。

 (2019年6月16日付の「常温でコヒーレント状態を維持する量子現象」のブログの中で、二重スリット実験に言及した個所の記述:「スリットを通過した電子は二つの球面波に分離し、この二つの波動が重ね合わされた結果、・・・」とあるを上記記述に訂正します。分離した波が重ね合わされるというのは矛盾と受け取られる。)

 この場合には、二つの波が干渉するので、波動関数の表記の方がよい。スリットa,bから出た二つの球面波をそれぞれ波動関数a、波動関数bとすれば、スクリーン前の空間における波動関数は、二つの球面波の重ね合わせとなり、
   全体の波動関数=波動関数a+波動関数b
と表記できる。

 さらに、二つの粒子が相関関係をもつ「量子もつれ」の例を挙げる。量子もつれとは、重ね合わせの状態にある複数の量子の間で、そのうちの1個の量子を測定すると、他の量子にも瞬時に影響が及ぶという状態のことをいう。例えば、電子Aのスピンが上向き(u)であれば電子Bのスピンが下向き(d)であり、Aのスピンが下向きであれば電子Bのスピンが上向きの値を取るという相関関係が付与された状態である。

 この場合、一方の部分系の状態は「uA」・「dB」であり、他方の部分系の状態は「dA」・「uB」である。

 全体の状態はこの二つの状態の重ね合わせとなるので、
   全体の状態=「uA」・「dB」+「dA」・「uB」
と表記できる。

 量子Aを測定すると、重ね合わせ状態が壊れて「u」か「d」かのどちらかに確定してしまう。このとき、量子Aの状態が「u」に確定すると、その影響は空間的な距離に関係なく瞬時に量子Bに伝わり、量子Bの状態は「d」に確定してしまう。

 ボーアを代表者とする「コペンハーゲン学派」は、量子の測定によってその波動関数が収縮し、確率的な存在であった量子が粒子として観測されると解釈した。これをコペンハーゲン解釈という。この解釈は激しい反論を呼び、観測問題としてその後長く議論されることになる。

 特に、アインシュタインは、確率解釈を基軸とするコペンハーゲン学派の解釈に強く反発した。

 1935年、アインシュタインらは論文を発表して、量子力学の記述が不完全だと主張した。「力学系を乱すことなく、ある物理量の値を測定できるとき、その物理量に対応する物理的実在の要素が存在する。」と考えた。言い換えれば、力学系には、「物理量の仮定的値が実在する」と主張した。「仮定的実在」とは、「観測しなくてもその物理量の値が存在するはずであると仮定される」ということである。

 物理的実在に対応する物理量の値が初めから、互いに排他的な値uとdを取っていたという結論は矛盾以外の何物でもない。だから、量子力学は間違っているというのである。

 それとともに、二個の粒子A,Bが「量子もつれ」の関係にあるとき、AとBとが十分に遠く離れていても、Aの物理量の測定を行ってその値が確定すれば、Bの物理量の値が瞬時に確定する。つまり、Aの情報が光の速度を越える速さでBに伝わることになるので、非局所的長距離相関という。アインシュタインが嫌う現象である。

 「物理量の仮定的値が実在する」とは哲学的な言語表現であるが、これを量子力学の言葉で言い換えれば、力学系には「隠れた変数が存在する」ということを意味する。

 アインシュタインがこの問題を提起した後、「隠れた変数」が存在するのか否かをめぐって多くの実験が行われた。特に、ベルという人が、隠れた変数があらゆる値をとると仮定して設定したときに成立しなければならない「ベルの不等式」を提唱したので、実験はこの不等式が成立するか否かを検証するという形で行われた。

 その結果は、量子力学の予言どおりであった。つまり、ベルの不等式が成立しないことが検証されたのである。「隠れた変数」は否定されるとともに、非局所的長距離相関が実験的に証明されたのである。これでアインシュタインの言う「物理量の仮定的値が実在する」という説は否定された。

 これによって、ボーアが唱えるところの「二つの粒子A,Bの間に相関関係が確立している場合、全体をひとつの力学系と考えなければならない。したがって、Aについての測定操作は二個の粒子からなる力学系全体におよぶはずである。」とする「分離不能性」説が正しいことが確認された。

 このような結論が出ても、まだ不満をもつ人々がいるであろうと想像できる。論理的な思考をする人であれば、「二つの粒子が相関関係をもつという力学系の中にその相関を示す変数が存在しない」ということは矛盾であると考え、不快感をもつかも知れない。

 かく言う私も、力学系が量子もつれの関係にあるとき、一つの波動関数が二つに分離するというイメージを長い間捨て去ることができないでいた。その結果、二つに分かれた波動関数の各々には、その相関を示す標識、つまり隠れた変数が存在するはずと考えていた。この種の理論を総称して「局所的隠れた変数の理論」と呼ぶ。ここで言う「局所的」とは、隠れた変数の信号が光速を越えるスピードで伝わることはできないことを意味している。

 隠れた変数が完全に否定された現在、量子力学が教えることを自然の法則として受け入れたいと思う。

 参考文献
 並木美喜雄著「量子力学入門」(岩波新書)
 古澤明著「光の量子コンピューター」(インターナショナル新書)
 日経サイエンス2019年2月号「最終決着 量子もつれ実証」

「カエル跳び」パズルに挑戦する

2019-07-07 06:36:04 | ブログ
 参考文献を読んでいて、「カエル跳び」と称する次の問題に出会った。

 「図に示すように、白と黒全部で10個のペグが11個の穴に並んでいる。白と黒を入れ替えるのが目的である。ただし、ペグは、隣の穴か一つのペグを跳び越した先の穴にしか移動できない。これら各5つのペグを入れ替えることはできるのだろうか?」



 とにかく各5つのペグを入れ替えることができることを示せばよいのだろうと考えて、左端の白ペグを最左端の穴まで移動させてみる。その結果、ペグの配列は、白黒黒黒黒黒(空穴)白白白白となり、移動可能であることが確かめられる。ペグの動きの数は16ステップである。

 次に、右側に残った白ペグの中の左端の白ペグを同様の手順で最左端から2番目の穴まで移動させる。ペグの動きの数は16ステップである。

 このようにして、同じ手順で右側の3番目、4番目の白ペグを左端に移動させる。ペグの動きの数は各々16ステップである。

 最後に、残った5番目の白ペグを左端に集結させると、ペグの入れ替えが完了する。ペグの動きの数は11ステップである。

 このようにして、16ステップ×4+11ステップ=75ステップかかるが、各5つのペグの入れ替えが可能であることを確認する。

 そこで、参考文献の正解を見て愕然とする。ペグを効率よく動かすと、35ステップでペグの入れ替えが完結するのである。

 ここで、この種のパズルに取り組む前には、問題が何を求めているのか時間をかけて分析する必要があることが分かる。

 各サイドのペグの数をPとすると、最小の動きの数は、(P+1)^2-1の式で表される。

 P=5の場合、35ステップの内訳は、ペグを隣に移す数が10であり、ジャンプの数は25であることを知る。しかも白または黒のペグの移動は前進のみであり、後退はない。

 私の行った移動方法では、P=5の場合の75ステップの内訳は、見かけ上ペグを隣に移す数が50であり、ジャンプの数は25であり、ジャンプの数は正解と同じである。しかし、ジャンプ数25のうち20は、ジャンプした後、隣に後退させている。したがって、正味の数は、隣に移す数が70であり、後退のないジャンプ数は5であり、効率の悪い移動であることが分かる。

 次に、問題を発展させて、「白と黒全部で10個のペグが12個の穴に並んでいる。中央の2個の穴が空穴である。ペグの移動のルールは同じとして、各5つのペグを入れ替えよ。」という問題に挑戦する。

 白または黒のペグの移動は前進のみであり、後退はないものとすると、行き当たりばったりのペグ移動では、行き詰ってしまう。

 いろいろ試行錯誤をしてみて、白ペグと黒ペグが交互に並ぶような配置にもっていくことが肝要であることを知る。このように配置すると、白ペグおよび黒ペグの各々について「カエル跳び」の連続技が可能となり、効率よいペグ移動ができる。

 P=5の場合、45ステップでペグの入れ替えが完結する。45ステップの内訳は、ペグを隣に移す数が20であり、ジャンプの数は25である。

 一般に各サイドのペグの数をPとすると、ペグを隣に移す数は4×Pとなり、ジャンプの数はP×Pとなる。したがって、最小の動きの数はP^2+4P=(P+2)^2-4の式で表される。

 参考文献
 ジョン・メイソンなど著「教科書では学べない数学的思考」(新評論)