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素粒子論を知らないでは宇宙を語れない

2013-05-14 15:21:03 | ブログ

 先月、欧州共同原子核研究機構(CERN)は、ダークマター(暗黒物質)の痕跡を見つけたとの発表を行った。国際研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)に取り付けた装置を用いて、電子と逆のプラスの電気を帯びた陽電子を観測したという。陽電子は、暗黒物質同士がぶつかって消滅する際に飛び出すと考えられている。

 暗黒物質同士が衝突したときに発生したエネルギーから、電子と陽電子が対生成された。そのうち宇宙線には多く含まれている電子の方を避け、数が少ないと考えられる陽電子の数を計数した、ということであろう。従って、暗黒物質の正体が明らかにされたわけではなく、暗黒物質の正体は不明ながら、その衝突エネルギーをとらえたということである。

 また、1932年にアンダーソンが宇宙線中に陽電子を発見して以来、宇宙線中の陽電子は何度も観測されていることであろう。この陽電子は、従来、超新星爆発に起因すると考えられていた。従って、超新星爆発のような高エネルギー現象に起因する陽電子と、暗黒物質に起因する陽電子とは区分されるべきであろう。まさか、超新星爆発を起源とする陽電子が全面否定されることはないであろうから。

 暗黒物質の最有力候補として、超対称性粒子が挙げられている。超対称性粒子は、素粒子の標準理論の枠外の粒子であり、電気的に中性であり、通常の粒子とほとんど反応せずにすりぬけること、通常の粒子よりはるかに大きい質量をもつことを特徴とするとされる。最も重い超対称性粒子で数テラeVにも及ぶレベルであり、最軽量のニュートラリーノでも通常の粒子よりはるかに重いという。

 2012年夏に、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)という世界最大の加速器をもつCERNは、125ギガeV~126ギガeV周辺でヒッグス粒子とみられる新粒子の存在を高い確率で確かめた、と発表した。専門家の多くは、「LHC実験ではヒッグス粒子よりニュートラリーノのほうが早く発見される可能性がある」とみていたという。そうすると、CERNは、LHCを用いて超対称性粒子を発見することにかなりの期待をかけているということである。

 素粒子論は、難解で理解しがたいところがある。さらに、超対称性粒子となると、一般向けの科学書を読んだくらいでは到底習得したという域には達し得ない。ここでは、問題を挙げるだけで、将来に向けた課題としたいと思う。

 (1)超対称性粒子はどのような理論的必然性から出現してきたものか。

 (2)超対称性粒子は、何故大きな質量をもつのか。

 それにしても、宇宙の仕組みを知るためには、今や、原子や分子、電子、陽子、中性子の知識だけでは間に合わず、素粒子論や場の理論、さらには超対称性理論までが必要な時代が来ているということだろう。素人としては、今後、暗黒物質の研究が進展していく様子を楽しむためには、素粒子論などについて最小限どの程度の知識が必要かということに興味をもつ。言葉を変えれば、現象を追うのではなく、何とか哲学的なとらえ方ができないか、ということを試行したい。

 参照した文献:

・中嶋彰著「現代素粒子物語-ヒッグス粒子から暗黒物質へ」(講談社ブルーバックス)

・広瀬立成著「超ひも理論と「影の世界」」(講談社ブルーバックス)

・小玉英雄著「宇宙のダークマター」(サイエンス社)

・桜井邦朋編「高エネルギー宇宙物理学」(朝倉書店)