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数学でいう無限大とは何か

2023-05-14 08:00:34 | ブログ
 高校の同期生の書いた文集を見ていて、ある寄稿文は、数学の時間に1/NでNを無限大にもっていくと、これは0になることを教わったことに触れて、この0は本当の0とは別物である旨述べていた(この考えはもちろん誤り)。そこで、無限大とは何か、0とは何かについて、ブログで議論することにした。

 自然数の列1,2,3,…に含まれる各数は、モノではなく概念であると同様に、無限大と0も概念である。微分積分学の基本事項として、数列1/NのNを無限大にもっていくと0に収束することを
   lim(1/N)=0
と記述するが、1/無限大=0と表現することはできない。

 また、数をゼロで割ることは、ご法度となっているので、1/0=無限大のように記述することはできない。

 解析学では、無限に並ぶ数の列あるいは無限級数の変数を無限大にもっていくとき収束することが前提条件となることが多い。

 複素数zを変数とする複素関数論では、リーマン球面と呼ばれる2次元球面S2上の各点と北極点(0,1)とを結ぶ直線は、北極点自身を除いて複素平面C上にその点の像を1対1対応に射影する場合がある。そうすると、北極点を無限遠点とみなし、Cに無限遠点を加えれば、S2とC上の各点は完全に1対1対応の空間になるだろう。その場合、複素変数zの定義域が無限大を含む場合と、有限の場合とで複素数の演算方法が異なるので、便宜的に2つのリーマン球面を用意し、場合によってリーマン球面を使い分けるのが便利である。これによって一方の球面はzを変数とする関数fが展開できるような座標系となり、他方のリーマン球面はzの逆数w=1/zを変数とする関数fが展開できるような座標系となる。

 たとえば、z=x1/x0という分数は、無限遠点を中心とする座標では上下をひっくり返したw=x0/x1になる。zの分母x0が0でなければx0で割ってしまってzが出てくるが、x0=0の場合はw=x0/x1の方が0になる。

 このようにすれば、w=0はz=無限大に相当するので、1/無限大=0を認めることになる。一方、zをゼロで割る演算を避けることができる。

 <コラム: ヒルベルトの無限ホテル>
 一軒のホテルがあり、このホテルは無限の旅行者を収容できる。もちろん現実にはこのようなホテルはないが、あくまで比喩として受け取ってほしい。ある日のこと、1号室から始まってすべての部屋に客を収容している状態、すなわち満室のところへ1人の旅行客がやってきて、どうしても宿泊を希望するので、支配人は、スライド方式によって宿泊者全員に別の部屋に移ってもらうことにした。すなわち1号室の客は2号室に、2号室の客は3号室に、・・・、n号室の客はn+1号室に移動してもらった。このようにして1号室を空室にしたのである。これはホテルの部屋数が無限にあるから可能になることであり、もし部屋数が有限であれば不可能である。

 スライド方式では、1の内容を2に、2の内容を3に、・・・nの内容をn+1にというように、nとn+1とを対応づけて順にスライドさせる。同様に、自然数全体の集合、1,2,3,4,…,n,…と偶数全体の集合2,4,…,2n,…をnと2nとの1対1で対応づけすることができて、両者は同じ個数をもつ、あるいは同じ濃度をもつという。無限集合が自然数の集合と同じ濃度をもつとき、可算集合という。ここでは、自然数全体の集合と、その部分集合は同じ個数をもつことを意味する。無限ホテルの場合も同様であり、部屋番号は可算集合であるから、nをn+1にスライドさせてもnとn+1との1対1対応がついており、部屋数は変わらない。

 参考文献
 小島寛之著「数学的思考の技術」(ベスト新書)
 武部尚志著「楕円積分と楕円関数」(日本評論社)