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宇宙の形を推測する

2014-08-23 07:15:21 | ブログ

 参考文献を読んでいて、宇宙の形と、宇宙儀と称する宇宙のモデルとに興味をもった。地球儀とは、地球の表面形状をモデル化したものであって、地球の表面形状についての情報を、中心を同じくする小さいモデル球体の表面上に射影したものと考えることができる。同様に、宇宙儀とは、宇宙という空間の形状についての情報を、何らかの方法で射影することによって形成される物体と考えることができる。以下、参考文献に出てくる宇宙の形や宇宙儀についての説明を、自分なりの文章表現の仕方で記録する。

 我々の宇宙は、幾何学の用語を用いると、三次元多様体と呼ばれる空間であると言われる。三次元多様体とは、四次元空間の中に包含される空間であって、局所的には三次元ユークリッド空間であるが、空間全体としてどのような形状をしているのか知ることができない。我々が四次元空間の中に身を置いて我々の宇宙の全体像をながめることができないためである。しかし、宇宙は、無限の広がりをもつ空間か、果てはないが有限のスペースをもつ空間かのいずれかであることは確かであろう。地球の表面は、果てはないが有限のスペースをもつ球面の一例である。

 そこで、宇宙は、三次元球面であると仮定してみる。参考文献が「丸い宇宙」と呼ぶ形状の空間である。この仮定の下に、宇宙儀を数学的に表現すると、三次元球面である宇宙を、三次元空間上に射影することによって形成される物体、ということになる。

 まず、地球表面のような二次元球面を二次元平面上に射影してできる像について考える。二次元球面上の点の位置は、球面座標を用いると、(r,t,t)で表せる。rは球の半径、tは球の中心と北極点を結ぶ直線と、任意の点の位置ベクトルとの間の角度、tは位置ベクトルが赤道面に落とす影と水平方向の基準座標軸との間の角度である。rは一定であるので、(t,t)が変数となる。この二次元球面を赤道面で切断して北半球部分と南半球部分とに分ける。赤道面を含む二次元平面上に北半球を射影すると、二次元球面上の点(r,t,t)は、二次元平面上の点(rsint,t)に移る。すなわち、北半球を二次元平面上に射影すると、半径rの円板が占める二次元領域となる。同様に、南半球を同じ二次元平面上に射影すると、半径rの円板が占める別の二次元領域となる。つまり、二次元球面は、二つの円板でモデル化できることが分かる。

 北極点上の点を子午線に沿って赤道を通過して南極点にまで移動させると、その射影である円板上の点の軌跡は、北半球の円板の中心からその半径方向に移動して赤道に相当する円周にまで達し、次に南半球の円板の円周から同じ角度tを保ったままその中心に達する。従って、北半球の円板の円周と南半球の円板の円周とは、同じ角度tについて接続しているものとみなされる。あるいは、同じ半径rをもつ2つの円板が、同じ極座標に基づいて重ね合わされている、と考えてもよい。

 次に、宇宙のモデルである三次元球面を三次元球体に射影する手続きを考える。三次元球面上の点の位置は、球面座標を用いると、(r,t,t,t)で表せる。rは球の半径、t,t,tは二次元球面についての座標角(t,t)を三次元球面に拡張する座標角である。rは一定であるので、(t,t,t)が変数となる。この三次元球面を赤道面で切断して北半球部分と南半球部分とに分ける。北半球を三次元空間に射影すると、三次元球面上の点(r,t,t,t)は、半径rの三次元球体内の点(rsint,t,t)に移る。同様に、南半球を同じ三次元空間に射影すると、半径rの別の三次元球体となる。つまり、三次元球面は、二つの三次元球体でモデル化できることが分かる。

 三次元球面上のいずれかの位置を北極とみなし、北極点上の点を子午線に沿って赤道を通過して南極点にまで移動させると、その射影である三次元球体内の点の軌跡は、角度(t,t)を一定に保ったまま、北半球対応の第1球体の中心からその半径方向に移動して第1球体の表面に達し、次に南半球対応の第2球体の座標(r,t,t)に移り、同じ角度(t,t)を保ったまま第2球体の中心方向に移動してその中心に達する。従って、第1球体の表面上の一点と第2球体の表面上の一点とは、同じ角度(t,t)について接続しているものとみなされる。あるいは、同じ半径rをもつ2つの球体が、同じ球面座標に基づいて重ね合わされている、と考えてもよい。

 地球が宇宙の三次元球面上の北極点に位置しているものとすれば、三次元球面上の南極点は、地球から最も遠く離れた位置と考えられる。北極点と南極点との間の距離は約137億光年と考えてよいだろう。そうすると、地球は第1球体の中心に位置し、第1球体内には地球から137/2億光年までの距離にある星や銀河が散りばめられていることになる。また、南極点は、第2球体の中心に位置し、第2球体内には137/2~137億光年までの距離にある銀河が散りばめられていることになる。

 このようにして、星や銀河がどのように宇宙儀の中にマッピングされるかが推測できるが、どうも地球儀に比べて使いづらい。どこかで、こんな宇宙儀なんか要らない、三次元空間上の星や銀河を二次元球面である天球上に投影した天体図の方がよほど便利だ、という声が聞こえる。なるほど。そこで、宇宙の形を念頭におきながら、実際に星や銀河が見える夜空の風景に戻ってみる。

 星や銀河から地球までやってくる光線のイメージは、直線の軌道に沿って地球まで届くように見えるが、これらを包含している三次元多様体が曲がっていれば、我々は、曲線軌道に沿ってやってくる星の光をまっすぐやってくると見るわけだ。もし宇宙の形が三次元球面であるならば、遠くの銀河からくる光がこれを示唆する軌道をとるのではないか、と想像したくなる。地球が三次元球面上の北極点の位置にあるとすると、南極点が存在するはずである。南極点附近の銀河からくる光は、どの方向から地球に届くのだろうか。南極点の方向を特定できるということは、宇宙が少なくとも有限の空間であることを示唆していることになる。

 空間の曲がり具合を表す数値として、曲率が用いられる。曲率は、一般的に言って局所的なものであり、空間の位置によってその値が異なると考えてよい。曲線の場合には、注目する点で接する円を考えて、その円の半径の逆数がその点における曲率である。

 一方、局面の曲率は、正、負または0のいずれかの値をとる。二次元球面の曲率は正の一定値である。平坦な二次元平面の曲率はどこでも0である。また、二次元双曲面の曲率は負である。局面が貫通孔をもつドーナツ型の二次元トーラスの表面は、その曲率が正の領域と負の領域とがあるが、トーラス全体で曲率を平均すると、0になることが証明されている。

 三次元空間についても、視覚的な図示はできないが、曲率をもつと考える。三次元球面は、一定の曲率をもち、それは正の曲率であると考える。しかし、三次元宇宙は、局所的には正、負または0の曲率をもつようなデコボコした空間であってもよく、宇宙全体で平均した曲率が正になるような宇宙は、トポロジカルには三次元球面と同型とみなしてよいだろう。

 しかし、三次元宇宙の平均した曲率を考えるとき、難問に遭遇する。それは、ブラックホールが占める空間が極端に曲がっており、その曲率が無限大に発散する特異点となっているため、宇宙の平均的な曲率が考えられないためである(宇宙は、恒星、銀河、ダークマターなどの重力源が存在することと、空間自体の曲がりのため、空間がところどころ曲がっており、デコボコしているが、ブラックホールのような特異点を除けば、宇宙の曲率を平均化できると考えられる)。

 アメリカの数学者ハミルトンは、有限のスペースをもつ閉じた三次元宇宙の曲率の均一化を試みた。そして、均一化されていく曲率の変化の仕方を、物理学における「熱方程式」を模した偏微分方程式を用いて表現した。その偏微分方程式に従って空間の曲率は変化し、その曲率の変化に伴って、三次元宇宙の形が変化していく。つまり、注目している宇宙は、無限に存在する宇宙の形全体が連続的に配置された世界の中を、形を変えて流れていく。

 しかし、ハミルトンは、閉じた二次元宇宙(閉曲面)に対しては曲率の均一化が必ず成功することを証明したが、三次元宇宙の場合には必ずしも成功しないことを示した。つまり、空間の変形を表現する偏微分方程式に従って宇宙を変形していくと、空間がなだらかになっていくどころか、ある点の曲率が無限大に発散する特異点が発生することを発見した。

 三次元宇宙は、その空間の位置座標値が連続して変化していくべきであり、特異点の存在は不自然に見える。そうすると、見かけ上は特異点に見えるが、その特異点周辺をさらに詳細に探求すると、空間が連続的に続くことが分かってきた。すなわち、閉じた三次元宇宙は、三次元球面に同型なのではなく、少なくとも一つの貫通孔をもつ三次元トーラスの形状をしていると考えざるを得ないのである。

 この宇宙には、あるブラックホールを入口とするチューブが存在しており、そのチューブが宇宙の別の場所に出口をもつような構造をしているということである。このチューブは、ホーキングなどが「ワームホール」と呼ぶものに相当する。

 しかし、ワームホールには、疑問も生じる。チューブおよびこれを介してつながっている宇宙の別の場所の出口がどのように形成されるのか、ということである。宇宙の別の場所に、超新星爆発というプロセスを経ることもなく、入口と対になるブラックホールが形成されるのだろうか。自然は、三次元空間について連続性のつじつまを合わせるために、そこまでやるのだろうか、という疑問である。

 超新星爆発によって新たにブラックホールが形成されたものとしよう。チューブの入り口となるこの新しいブラックホールの形成をトリガーとして、チューブの掘削作業が、空間中を伝播するかのように進行し、その出口に到達するのだろう。三次元宇宙では、重力に関係なく特異点が形成され得ることを考慮すると、チューブの出口は、超新星爆発とブラックホールの形成がなくても、三次元宇宙のどこにでも形成されるのであろう。参考文献が「ホワイトホール」と呼ぶ場所である。

 ここで、重力源がなく、曲率0の平坦な三次元空間にチューブの出口が形成されることになると、既存の三次元空間とチューブの接続箇所が直角に折れ曲がることになり不自然ではないか、と考えてしまう。しかし、重力源がなくても三次元空間が曲がり得ると考えると、この接続箇所がなめらかにカーブするように形成されても不思議ではないであろう。

 そう考えると、チューブの入口がホワイトホールであり、チューブの出口もホワイトホールという構成のワームホールがあっても不思議ではない。しかし、そのようなチューブの入口がつくられるためには、その場所が三次元空間の特異点に変わるような余程の衝撃が必要なのかも知れない。

 ワームホールの形成は、四次元空間内に新たな三次元空間の領域が創り出されることを意味する。そうであれば、ブラックホールの特異点が新たな宇宙を創生し、それが膨張していくことを意味するから、我々の三次元宇宙がある特異点から始まり、膨張拡大することと同じ原理に基づくものらしい、と推測できる。

 参考文献

 根上生也著「トポロジカル宇宙」(日本評論社)

 スティーヴン・ホーキング著「ホーキング未来を語る」(アーティストハウス)