gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

物理学について記録しておきたいこと

2015-02-15 12:41:01 | ブログ
 物理学の専門家によって書かれた多くの書物が出版されている。また、インターネットに蓄積された知識データベースを検索すると、物理学に関する多くの知識を得ることができる。しかし、科学は「理解困難」なものである、というのが定説になっているし、物理学はその最たるものであろうから、一般的に言って、素人が物理学について何か書くなど想定外のことかも知れない。

 それでも、物理学という難解な学問について素人が自由に書けるということは、すばらしい。ブログという広域メディアから最大限の恩恵を受けているという気がする。

 ニュートンの運動方程式は、質量mの粒子などの物体が力Fを受けたときの粒子の位置rの時間発展を記述するもので、次の式で表現される。
    md2r/dt2=F      (1)
rは、一般に3次元空間上の粒子の位置(x,y,z)を示すベクトルを想定するが、1次元空間に限定する場合には単なるxである。Fも同様に、各次元の力の成分(fx,fy,fz)を示すベクトルであり、1次元空間ではfxが該当する。運動する粒子の速度vは、dr/dtである。p=mvを運動量という。

 一方、ニュートンが導いた万有引力の法則は、二つの物体の質量をm1,m2、その間の距離をrとするときの両物体間に働く引力の大きさFを定めるもので、次の式で表現される。
    F=Gm1m2/r2     (2)
ここで、Gは万有引力の定数である。

 (1)の運動方程式と(2)の万有引力の式とは、全く独立しているから、理論的には、(1)で言う慣性質量mと(2)で言う重力質量m1,m2とは無関係である。慣性質量と重力質量とが等しいことは、実験的に確かめられている。

 式(2)が式(1)から派生したものではなく、式(1)から独立しているという事実は、ニュートンの古典力学から量子力学・素粒子論と相対性理論に発展した現代物理学においても、量子力学と相対性理論の対決のような形で引き継がれているものであり、現代物理学の大問題が、すでにニュートンの古典力学に根源をもっていた宿命的なものであったことを気付かせるものである。

  力Fがポテンシャルの形式で表現できる場合には、そのポテンシャル表現がそのままエネルギー量を表すので、力よりもポテンシャルを使う方が便利である。ポテンシャル表現を使うと、(2)式から導かれる重力ポテンシャル(あるいは位置エネルギー)と電気的なポテンシャル(電位)をエネルギー量という共通のディメンション(次元)で表現できる。

 運動方程式(1)から速度vで運動する粒子の運動エネルギー:mv2/2を導くことができる。

 運動エネルギーとポテンシャル・エネルギーとの和が粒子のもつ全エネルギーである。ポテンシャル・エネルギーが粒子の位置(x,y,z)だけで決まる場合には、全エネルギーは、時刻、粒子の位置、速度などにかかわらず一定に保たれる(エネルギー保存則)。

 運動方程式を、(1)の代わりに、粒子の位置、運動量および全エネルギーを用いて表現した方程式として、ハミルトン方程式などがある。

 電磁気学の基礎方程式として知られるマクスウェル方程式は、4つの式から成り、電界と磁界に関するすべての電磁現象を記述できる。しかし、マクスウェル方程式には、運動方程式(1)に伴う質量mに関連する物理量が現れない。マクスウェル方程式から波動方程式が導かれ、時間的に変化する電磁界が波動として伝わることが明らかになった。また、光は電磁波の一種であることも結論づけられる。

 空間のあらゆる場所を満たし、光を伝える実体として、エーテルと呼ばれる媒質が想定された時代もあった。しかし、精密な実験によってエーテルの存在が否定され、マクスウェル方程式は、質量mとは無関係であることが明らかになった。つまり、マクスウェル方程式は、ニュートンの運動方程式から独立した原理であり、今思えば革命的な理論であったのである。

 夏目漱石の「三四郎」という小説では、大学で研究している野々宮君という人が光線の圧力を測定するという場面が出てくる。光線は、多数の光子から構成されるから、光線が圧力をもつということは、個々の光子が、運動量と運動エネルギーをもつことを意味する。ニュートンの運動方程式によれば、運動量と運動エネルギーをもつ粒子は、質量をもたねばならないから、質量がない光子がもつ物理量はニュートンの古典力学では説明できず、量子力学の構築を待たねばならなかったのである。

 量子力学において、粒子の運動は、シュレーディンガー方程式で記述される。この方程式は、ハミルトン演算子、全エネルギーおよび波動関数から構成される。ハミルトン演算子は、全エネルギーに対応する数学記号である。波動関数は、粒子の位置ベクトルrの関数であるが、粒子の位置(x,y,z)が不確定であるという含みをもつ関数である。シュレーディンガー方程式の解は、全エネルギーの値と波動関数の関数表示である。シュレーディンガー方程式は、ニュートンの運動方程式(1)に相当するが、(1)とは異なり、粒子の位置を確定するような解をもたないということである。言い換えれば、粒子の存在場所は決定されず、確率的にしか定まらないということである。

 典型的なシュレーディンガー方程式の全エネルギーは、電気的なポテンシャルを含むが、粒子に働く重力作用は無視される。つまり、式(2)の作用は考慮されないということである。

 ディラックは、量子力学にアインシュタインの特殊相対性理論を組み込んでディラックの方程式をつくり、真空から対生成される電子と陽電子の理論を導いた。

 量子力学は、量子場の理論に発展し、素粒子論を花開かせた。自然界には、電磁気力、弱い力、強い力、重力の4つの力が存在する。このうち、電磁気力と弱い力を電弱力として統一することに成功した(電弱理論)。次に、電弱力と強い力とを統一する大統一理論が構想されているが、この理論を実証するためには1024電子ボルトという莫大なエネルギーを生成できる加速器が必要なため、その実現は容易ではない。宇宙誕生後の10-36秒から10-34秒の間に 強い力と電弱力が分岐したと推定されている。

 一方、万有引力の式(2)は、二つの物体間の距離rが0に近づくと発散するので、この欠点を解消しつつ重力ポテンシャルを一般化したポアソンの方程式を使うと便利である。アインシュタインの一般相対性理論で定式化された重力場方程式は、古典力学のポアソン方程式に相当するものであり、重力の源になる質量やエネルギーが時空の曲がりの程度を示す数値に等しいことを示している。

 一般相対性理論の知識は、全地球測位システム(GPS)で使われている。また、天文学や宇宙物理学には、この理論によって説明できる現象がいくつもあり、このようなマクロの世界では不可欠な理論である。

 宇宙が誕生してから10-44秒後の世界は、直径が10-33cm(プランク長)という小さな世界であり、ここでは、重力を含めた4つの力が一本化されていたと考えられている。素粒子論が扱うようなミクロな世界では無視できるほどの弱い作用しかもたない重力も、2粒子が10-33cmという超ミクロの距離に近づくと、他の力と同じような効果を発揮する。ここに、「重力の量子力学」が必要となる。4つの力を一本化するような理論として、「超ひも理論」が提案されている。

 超ひも理論は、今までに確立された素粒子論と矛盾しないことは当然のことであるから、量子力学を基礎としていることは疑いない。そうすると、一般相対性理論も何らかの量子化が施されるような変形がなされて、超ひも理論に組み込まれたということであろう。4つの力が一本化された超ミクロの世界を実現するためには、1028電子ボルトという途方もないエネルギーが必要であり、超ひも理論が実証される可能性は、まず考えられない。

 ニュートンの古典力学で独立している(1)と(2)の法則は、量子力学と相対性理論の時代となった現代においても、一つに統合することが途方もなく困難にみえるとともに、物理学者の夢となっているのであろうか。

 参考文献:
 中嶋彰著「現代素粒子物語」(ブルーバックス)
 広瀬立成著「超ひも理論と「影の世界」」(ブルーバックス)