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最近の米国の話題から

2012-07-14 16:02:38 | ブログ

 英文雑誌を読んで、外国の政治・経済などの情勢を知るのは楽しい。日本の新聞にも外国についての情報が載るが、ニュースを伝えることが主眼とされているためか、表面的な説明に終わっているように見え、政治や経済の情勢が国民の文化的・宗教的な土壌の上に構築されたシステムという観点でとらえ切れない。一般に外国の事情には不案内なことが多いのだから、システムを構成する機能モジュール、政党、主要人物、宗教団体、制度、関連する他国などを構成要素とし、構成要素間の関係を図示してみて初めてその国の実情を理解できることが多い。英文雑誌の記事には、日本の新聞に欠けているこのような図式を描くための情報が豊富である。以下、最近の米国の話題をとり上げ、コメントを加える。

 ウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事は、公務員の数を減らし、公務員の給料を削減する政策を断行した。このため、この行政に反対する住民は、知事のリコール運動を展開して署名を集め、リコール投票が実施された。その結果は、知事の勝利となったが、その裏には資金が潤沢な共和党員の絶大な支援があったことが知られている。何故、共和党員がこぞってウォーカー知事を支援したのか、この事件が何故年金改革に関連するのか、どうもわからないと思った。すでに引退した州公務員は、かなりの額の年金をもらっており、この年金は州予算のかなりの割合を占めており、年金財政は時限爆弾とみなされている。株価が低迷していて、利益がでるような年金資金の運用が難しい一方、年金支出だけが着実に膨張して行く。危機を感じた知事は、公務員の人件費を削減することによって年金支出と現役世代の人件費を当座の予算枠に収めるように努めるとともに、将来の年金支出をできるだけ抑制しようとしたものと解釈できる。この考えは、小さな政府を目指し、公務員や年金支出をできるだけ削減するとともに、民間による自由競争を助長しようとする共和党の政策に合致するようだ。

 どこの国も年金問題を抱えており、年金制度の健全な運用は容易でない。一方、一般市民は、当面の自分の生活と将来の生活のことしか考えられない。何らかの利益になるような選択が許されるソーシャル・ネットワークに喜んで参入する一方、政治の舞台とは益々縁遠くなって行く。それとともに、民主主義の世の中にあって、住民の声は、政治的判断とは相容れないものに発展して行ってしまう。年金問題に限らず、日本においても、消費税増税についても、原発の再稼働についても、被災地のがれき処分の他自治体による引き受けについても、みられる傾向である。

 次に、米国の大きな問題である米国籍のない違法移民の話題に移る。米国には、1000万人を超える違法移民者が生活している。メキシコからの侵入者が多いが、南米、アジア、ヨーロッパからの不法移民者もいる。米国の移民取締局は、違反者をとらえては本国に送還しているが、あまりの数の多さに手が回らないようだ。そこで、取締局は、主としてとらえた犯罪者をチェックして、違法移民者であれば、刑務所へ送る代わりに本国へ送還しているようだ。また、取締局は、違反者が仕事を得ようとして雇用者に接近したとき、雇用者が求職者の証明書をチェックするよう求めているらしい。違法移民者であれば、職を得られず、自主的に本国に帰国せざるを得ないことが期待できるからだ。一方、南部の会社であると思われるが、違法移民の労働力を当てにしている会社もあるようだ。そのような会社は、安い賃金で違法移民者を酷使するのだろう。違反者が文句を言えば、当局に通報するぞという脅しがある。そういうわけで、米国に流入する違法移民者数から同帰国者数を引いた米国滞留者の数は、増える一方らしい。

 最近になって、自分は違法移民者であることをインターネットなどを介して公表する人々も現れてきた。これは、決して本人の得にはならないはずであるが、移民取締局もとり合わないので、拘束されることもなく時が過ぎるようだ。違法移民者の市民権を徐々に認めて行こうという法案が提案されたこともあり、これらの公表者は、市民権を獲得するための運動を盛り上げようとしているのかも知れない。

 違法移民のことに絡んで、以前見た米国映画と思われる映画のことを思い出した。その映画では、米国人になりすました宇宙人が登場する。その宇宙人は、米国人と見分けがつかない姿形をしており、米国人のように米語をしゃべる。おそらく、米国人であることを証明する偽造した文書も携帯しているのだろう。米国人か宇宙人かを識別するための手段は、ただ一つ、特殊なめがねを掛けて人を観察することだけである。このような映画が作られる背景には、違法移民者の多い米国という環境が影響しているのかも知れない。