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一般相対論について考えること

2015-04-05 11:30:19 | ブログ
 2月に書いたブログでは、「アインシュタインの一般相対性理論で定式化された重力場方程式は、古典力学のポアソン方程式に相当するものであり、重力の源になる質量やエネルギーが時空の曲がりの程度を示す数値に等しいことを示している。」と記述した。

 重力場方程式の左辺には時空の曲がりの程度を示すアインシュタインテンソルが置かれ、右辺には質量やエネルギーの量を示す数値が置かれることになる。ここで、右辺が物理量であるのに対し、リーマン幾何学に基礎をおくアインシュタインテンソルが物理量なのだろうか、という疑問が生じる。

 そこで、この疑問を解消するために、重力場方程式の左辺のディメンション(次元)が右辺のそれに一致することを確認することにした。

 まず手始めに、重力場方程式のベースとなっているポアソン方程式の左辺と右辺のディメンションを算出することにした。ポアソン方程式の左辺は、重力場のポテンシャルを質点の位置座標に関して2回微分することを示している。また、右辺は、重力定数Gと重力源の質量密度との積を含んでいる。

 ポアソン方程式のディメンションを計算すると、左辺、右辺ともに時間の-2乗となり、ディメンションの一致が確認される。

 次に、アインシュタインの重力場方程式の左辺と右辺のディメンションを算出する。右辺は、重力定数G、光速度cの-4乗およびエネルギー運動量テンソルを含んでいる。このテンソルの値として、エネルギー密度をとると、質量密度×光速度の2乗であるから、右辺のディメンションは、長さの-2乗となる。

 左辺のアインシュタインテンソルは、2階の共変テンソルと呼ばれるもので、それは、微分式に現れるdxの-2乗を別とすれば、無次元の計量テンソルとみなしてよいだろう。そうすると、左辺のディメンションは、長さの-2乗となる。

 これで重力場方程式の左辺、右辺のディメンションが一致することを確認できた。しかし、右辺にエネルギーに関係する物理量が存在するのに左辺には対応する物理量が現れないのが気にかかる。

 左辺の計量テンソルは、見かけは無次元であるが、実際には重力場のポテンシャルに相当する物理量が隠れていて、同じディメンションの光速度cの-2乗を掛けることによって結果として無次元になっていると解釈すれば納得できる。

 こうしてみると、重力場方程式は、重力源があれば、その大きさに対応して時空に曲がりが生じるということを述べている。しかし、3次元の宇宙空間に曲がりが生じるとき、それに対応する重力源が存在するのか否かについては、何も言っていない。

 参考文献2には、「物質がなくても時空は曲がることができるので、物質が曲率テンソルのすべての成分を決めているわけではない。」の記述がある。曲率テンソルとは、リーマン幾何学に出てくる空間の計量であり、アインシュタインテンソルの一部を構成するものである。

 物質がないのに空間の曲がりが現れそうな例として、ワームホールをとりあげてみよう。私は、昨年8月に書いたブログで、素人考えとして、ワームホールについて次のように記述している。

 「超新星爆発によって新たにブラックホールが形成されたものとしよう。チューブの入り口となるこの新しいブラックホールの形成をトリガーとして、チューブの掘削作業が、空間中を伝播するかのように進行し、(宇宙の別の場所につくられる)出口に到達するのだろう。三次元宇宙では、重力に関係なく特異点が形成され得ることを考慮すると、チューブの出口は、超新星爆発とブラックホールの形成がなくとも、三次元宇宙のどこにでも形成されるのであろう。参考文献が「ホワイトホール」と呼ぶ場所である。」

 私の想像するワームホールは、専門家の考えるワームホールと一致しているのか否か確かめるために、参考文献1のワームホールについての記述を参照する。

 参考文献1は、シュバルツシルト時空のモデルに基づき、我々の住んでいる宇宙と別の宇宙とをつなぐワームホールの構造を紹介している。このワームホールの中央付近の領域は、喉の部分と呼ばれ、ブラックホールとして観測される。このワームホールは、一つのブラックホールを両方の宇宙から共有するように対称的な構造をしているため、ホワイトホールに相当するものをもたない。したがって、ブラックホールの特異点は、ワームホールの中心線上の中央の点に位置することになる。我々の宇宙からこのブラックホールに入ることは可能だが、出ることは不可能である。したがって、シュバルツシルト時空のワームホールは、通行不可能である。

 私のワームホールと参考文献1のワームホールとを比べると、ホワイトホールの有無という違いはあるが、空間のトポロジカルな構造は同じである。しかし、参考文献1の著者は、このワームホールがどのようなプロセスを経て形成されるのかについて、何も言及していない。それは、一般相対論の枠内では言及できないのであろう。

 ワームホールは、新しいブラックホールの形成をトリガーとして、新たな三次元領域の生成というプロセスを経て形成されると考えるほかないであろう。参考文献1のワームホールは、新しいブラックホールの形成に合わせて、その近隣に都合よく別の宇宙空間が用意されていなければ実現できない。どうも作り物のワームホールという感想をもたざるを得ない。

 あるいは、我々の同じ宇宙上で近隣の2つの地点をつなぐ参考文献1のワームホールも考えられる。しかし、このようなワームホールは、必然的に、重力源によらない三次元空間の曲がりが生じる。また、近隣にペアの物質吸い込み口をもつブラックホールは、観測されていない。

 カー型のブラックホールは、ワームホールというトンネルを介して、宇宙の別の場所にあるホワイトホールにつながっている可能性がある。ブラックホールの特異点とは別に、ホワイトホールの中心にも特異点が存在する。しかし、後者の特異点は、前者のものとは異なり、すべての物質を吐き出す特異点とみなされている。したがって、このホワイトホールは、ブラックホールを時間反転させた存在であると言える。このワームホールでは、一方の漸近的平坦な時空からもう一方の漸近的平坦な時空へ移動することができる。ただし、あくまでも一方通行であり、もとの空間に戻ることはできない。

 ワームホールとホワイトホールのいずれも観測されていない。名古屋大学でワームホールが実在するか検証しようとしているという報道があったが、今のところ、過去の観測データを解析中のようである。

 参考文献3の著者は、「時空の「特異点」が生じるところで、アインシュタイン理論は破綻してしまう」と述べている。特異点が出たら、そこは宇宙の終点であるとともに、理論の終点でもあるという考え方であろう。

 ワームホールの存在は否定できない。しかし、ワームホールを通過することによって時間旅行をするなど空想の産物と言ってよいだろう。今のところ、SF物語を面白くするために考えだされたフィクションと考えておいてよいだろう。しかも、一部の物理学者がSF関連の商業主義に迎合し、一般相対論の枠内で往復旅行が可能なワームホールのモデルを設計し、SF映画などにリアル感を与えるという名目で協力しているのではなかろうか。

 参考文献
 1.佐藤勝彦著「相対性理論」(岩波書店)
 2.二間瀬敏史著「なっとくする宇宙論」(講談社)
 3.大栗博司著「重力とは何か」(幻冬舎新書)
 4.ポール・ハルペルン著「タイムマシン ワームホールで時間旅行」(丸善)