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生活習慣病から見えてくる血管系の健康

2014-09-23 15:07:29 | 健康・病気
 週刊朝日に「知れば防げる認知症7大リスク」として、糖尿病、高血圧、うつ病、歯の健康、アルコール、たばこ、頭部外傷が挙がっていた。このうち、頭部外傷は、(交通事故などによって)頭を打ち、脳に衝撃が加わって神経細胞が損傷することによる、とある。このような不慮の事故に要因があるものを除けば、残りの6大リスクは、主として生活習慣に要因があるものばかりである。アルコールとたばこを除くリスク因子には、遺伝要因も否定できないのであろうが、生活習慣の改善によって大幅に認知症を予防できることが明らかになりつつある。この6大リスクのリストを見ていると、認知症とは、生活習慣病の一種であり、心臓、肺、肝臓、すい臓などの臓器に現れる病気症状が脳に(あるいは脳にも)現れる病気だな、と納得させられる。

 さらに、注目すべきは、これら6大リスクによって発症する病気がほとんど血管系の障害に集約されるということである。最近では、人の血管年齢を測定する装置も使われており、その人の実年齢と比較することも行われている。実年齢と比べる血管年齢の数値は、生活習慣の違いがいかに個人差となって現れるかを示しているようである。以下、6大リスクの各々について、血管系の障害という観点から点検する。

 糖尿病については、「糖尿病になると血管に障害が起きやすく、脳に十分な栄養や酸素がいかなくなる。また高血糖による「酸化ストレス」が、脳の神経細胞にダメージを与える」とあり、血管に起きる障害が脳を含めたいくつもの臓器に悪さをすることが知られている。

 高血圧については、「高血圧は動脈硬化を進行させ、脳の血管を詰まらせたり、出血させたりする」とあり、高血圧が脳ばかりではなく、心臓にも障害を起こすことはよく知られている通りである。血流の圧力が比較的高いということは、その流速が比較的遅いことを意味するから、動脈硬化の原因物質が血管壁により沈着しやすい、と理解できる。塩分の取り過ぎが血圧を上げる方向に働くことはよく知られているが、我々の減塩努力はまだまだ足りないな、と痛感させられる。

 うつ病と認知症との関係はまだ明確になっていないが、うつ病による脳の血流の低下が認知症を発症させやすいのではないか、と疑われている。

 歯の健康については、「よく噛むと、脳の血流が増え、脳の働きが活発になるといわれているが、とくに認知症の症状とかかわりの深い前頭前野という部分が、顕著に活性化する」とある。歯槽膿漏になると、そのうみが血液を介して脳にも回り、神経細胞にダメージを与えることがあるというから怖ろしい。

 アルコールについては、「アルコール依存症患者や大量に飲酒する習慣がある人には、脳の委縮や脳血管障害が高い割合で起こり、認知機能の低下がみられる」という。大量のアルコールもまた、血管の障害を起こしやすいことを言っている。

 たばこについては、「喫煙は血管を収縮させて血液の流れを悪くし、動脈硬化を促進させる。このため、心筋梗塞や脳梗塞といった病気の原因だけでなく、認知症のリスクにもなる」とある。たばこの百害と言われるが、その中には認知症もあるという程度か。

 以上は、認知症発症のリスク因子と血管系の障害という観点から見たものであるが、認知症予防のためによいとされる生活習慣と血管系の保全という観点から点検してみよう。

 健康的な生活習慣として、多くの認知症予防のための文献に現れるものを以下に挙げる。
 ・定期的に運動する
 ・健康的な食事を守る
 ・人とのつながりや心の健康の維持に努める
 「定期的に運動する」には、いわゆる有酸素運動ばかりでなく、家事にしっかり取り組んだり、余暇活動を楽しむなど、身体を活動的に動かすこと全般が含まれると広く解釈してよいようだ。これらの活動によって、脳を含めた体全体の血流が良くなるわけだから、認知症の予防になることが理解できる。最近の知見で注目すべきことは、軽く筋肉を鍛えると、筋肉中のグルタミンが増え、風邪などの病気に対して多くのリンパ球をつくりだし、身体の免疫力を強化できることである。

 食事は、健康な血管や血液をつくる基であるから、健康的な食事の重要性については言うまでもないであろう。マスコミを通じて血管年齢を若く保つのによい食品が報告されている。

 「人とのつながりや心の健康」には、良好な交友関係を保つことや、ストレスにうまく対処することが挙げられている。交友関係の満足感と認知機能との関係については、身体の活動レベルを上げるとともに、直接脳を刺激し、認知機能を良好に保つのであろうと推定されている。良好な交友関係も活動的な生活の一部であり、脳を含めた体全体の血流を良い状態に保つメリットが大きいものと解釈できる。

 ここまで検討してきて、人間の血管系がどのように形成されるのか、ほとんど知識がないことに気付かされた。ある参考文献によると、「生命を維持する毛細血管から離れた細胞が皆無であることは、自然の驚異の一つに数えられる」という。細胞が分裂すると、それに同期して毛細血管の方も拡張されるのだろうか。

 また、血管に動脈硬化が生じたとき、コラテラール(側副血行路)ができて血流が確保されることがあると言うが、脳と脳以外の場所でそのような血行路のでき方がどう違うのか、という疑問もある。

 参考文献
 週刊朝日2014.8.22号
 ダグラス・パウエル著「脳の老化を防ぐ生活習慣」(中央法規)
 和田秀樹著「「思考の老化」をどう防ぐか」(PHP新書)
 エイドリアン・ベジャン著「流れとかたち」(紀伊国屋書店)