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花びらの枚数を数える

2012-04-14 13:14:43 | ブログ

 数字の0,1で始まり、各項はそれぞれ前の2つを足し合わせた数にすると、フィボナッチ数列ができる。すなわち、0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,...である。各項をフィボナッチ数という。ボール著「かたち-自然が創り出す美しいパターン」(早川書房)を読んだ機会に、色々な花の花びらの枚数がどの程度フィボナッチ数に一致するのか、確かめたくなった。

 調べた限りでは、主な花の花びらの枚数は、次の通りである。4:オオイヌノフグリ、ナノハナ、ジンチョウゲ 5:ウメ、サクラ、ツバキ、三色すみれ  6:クロッカス、スイセン、ユリ、アマリリス、チューリップ 8:コスモス 13:マリゴールド、アスター 21:サザンカ、八重ウメ

 この結果をみると、5,8,13,21など、フィボナッチ数の花びらをもつ花が含まれるが、4,6など、そうでない花も少なからず存在する。また、同じ種類の花であっても、個体によって標準的な花びらの枚数の前後にかなりバラつくことも分かる。ただし、すべての花に共通する特徴は、花びらの枚数はともかくとして、花の中で花びらはリング状に散開するという事実である。中には、同心円の形で2つ以上のリングが重なっているような花もある。このような現実の花びらの枚数を何か理論らしいもので説明できるのであろうか。

 植物の茎の先端は、茎の成長点であり、分裂組織となっている。ここでは、細胞が急速に増殖しており、前進する先端(頂端)のすぐうしろでは、原基と呼ばれる葉のもとになるものの側芽が1つ1つ突き出てきはじめる。これらの側芽がその後、葉に成長するのである。上から見ると、茎が上に伸びるにつれて原基の位置はらせんを描く。植物種の80%で、茎についた葉の列はらせんを描くという。花びらというものは、葉が変形したものにすぎないので、同様にらせんを描くプロセスを経て花びらのリングが形成されるものとみなされている。

 ここで、花を構成する各花びらの位置を決めるための理想的なモデルを説明するために、黄金角という数値を導入する。円の円周全体の長さをCとし、円周の長さCをC=A+BでB/A=A/Cのように黄金分割すると、Bは、中心角がおよそ137.5度の「黄金角」である円弧ができる。そうすると、理想的には、各花びらの位置は、角度にして黄金角だけずれた位置にあると考えることができる。

 実際の花びらの位置は、らせんに沿って配列されているわけではなく、リング状に密集しているので、らせん上の各花弁(花びら)の位置は、その角度だけを保存して3つの同心円のいずれかに投影されるようにして形成されるものと考える。この3つの同心円を一番内側から順に、第1、第2、第3リングと呼ぶことにする。

 次に、各花弁にそれが生成された順に、1,2,3,...のように番号をつけて区別することにし、第1リングから順に花弁の生成順に従って各花弁をリングに収容していくものとする。そのとき、1つのリング内で花弁ができるだけ分散するように配置するとともに、リング間でも花弁ができるだけ分散するような最適な配置方法があるだろう。

 結論から言うと、次に示すように、第1リングには1-5の花弁を収容し、第2リングには6-13の花弁を収容し、第3リングには14-21の花弁を収容すれば、ほぼ最適と言えようか。各リングに収容される花弁の順序と、花弁間の角度を以下に示す。

 第1リング:

1      4    2      5    3

 -52.5- -85- -52.5- -85- -85-

 第2リング:

6      9      12     7      10

 -52.5- -52.5- -32.5- -52.5- -52.5-

13     8      11

 -32.5- -52.5- -32.5-

 第3リング:

14     17     20     15     18

 -52.5- -52.5- -32.5- -52.5- -52.5-

21     16     19

 -32.5- -52.5- -32.5-

 各リング内の花弁の配置は、よく角度のバランスがとれているように見える。もし6番目の花弁を第1リングに収容しようとすると、1番目の花弁との角度間隔が20度にしかならないので、やや苦しい配置となるとともに、モデルとしての配置バランスを欠くことになる。同様に、14,15,16,17,18番目の花弁を第2リングに収容しようとすると、最接近する花弁との角度間隔がそれぞれ20度にしかならないので、同様の理由で望ましい配置とは言えない。

 こうしてみると、フィボナッチ数である5,8,13,21枚の花びらをもつ花がよく見られる理由も分かるように思える。もっとも、生物のかたち形成には、特有の「いい加減さ」が働くので、厳密に上記モデル通りになっているとは限らない。植物の進化の過程で花びらの配置や枚数が分化していくであろうし、同一種類の植物であっても、個体形成時に花びらの枚数のバラつきが許されるようだ。

 植物の花びら、ひいては葉の配置(葉序パターンと呼ばれる)は、何故、黄金角程度の間隔をもって分散されるのだろうか。主流となる考え方は、新たな原基は、頂端境界の上で、先行する原基が残しているもっとも大きな隙間に対応した位置に周期的に現れるというものである。つまり、原基は、結晶の中の原子のように、新たな葉を分裂組織に効率的に詰め込むような角度間隔をおいて形成されるというものである。新たな原基の形成には、ある種の植物ホルモンが作用していることも見出されている。

 ところで、フィボナッチ数列のとなりあった項の比は、黄金比に接近していくことが知られている。黄金比とは、線分ACをBC/AB=AB/ACになるようにB点で分割したときのAC/ABの値である。つまり、13/8=1.625,21/13=1.615,34/21=1.619,黄金比=1.618034...である。ABの長さを1、ACの長さをxとすると、黄金比はxとなるので、(x-1)/1=1/xが成り立つ。すなわち、黄金比は、方程式x-x-1=0の根であるので、代数的数である。円周率(パイ)や自然対数の底(e)は、超越数であるので、これらとは異なる。

 そういうことになると、黄金角に対応するフィボナッチ数列がどのようなものになるのか、詮索したくなる。任意の角度tは複素数で表現できることと、2つの複素数の掛け算は各々の角度を足し算したものになることから、次に示すように、フィボナッチ数列Z,Z,Z,Z,...を構成できる。

 Z=cos0+isin0, Z=cost+isint,

 Z=Z=cost+isint,

 Z=Z=cos2t+isin2t,

 Z=Z=cos3t+isinsin3t,...

 角度tを黄金角にとれば、Z,Zなどは黄金角そのものを示すことになるが、このフィボナッチ数列のとなりあった項の比、たとえばZ/Z=cos((5-3)t)+isin((5-3)t)となるが、一般にこの比が一定の値に収束するわけではない。