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ヨーロッパの指導力

2010-03-05 15:35:19 | 国際・政治

 タイム誌3/8号に掲載されているヨーロッパの世界に及ぼす指導力が低下しているとする記事を読み、より平和な世界を構築するためには、ヨーロッパの世界に向けた指導力が必要であろうと感じてこの記事を書くことにした。

 タイム誌の記事によれば、第二次世界大戦後の世界では、米国-ソ連間にいわゆる冷戦状態が続き、このとき西ヨーロッパは米国と強力なきずなを築き、その世界的な地位は充分存在感のあるものであった。このとき、中国は、世界的な存在感という点では小さいものであった。日本の世界的な存在感は、その経済規模の大きさにもかかわらず小さいものであった。

 ところが、冷戦が終了した後、中国の経済規模が次第に大きくなり、中国が台頭してくることになった。現在では、米国と中国とは、互いに小競り合いをしながらも、いわゆる2極として世界的に大きな存在感をもつようになった。それは、単に中国がまもなく世界第2位の経済大国になるためだけではない。最近コペンハーゲンで行われた気候変動についての会議では、中国は、ヨーロッパを抑えて世界的な指導力を発揮したではないか、というわけである。このような状態において、米国は、ヨーロッパよりも中国を含めたアジアにより多くの関心を示し、その結果として、米国とヨーロッパとの間のきずなは相対的に弱まり、ヨーロッパの存在感が低下していることが指摘されている。なお、世界における日本の存在感は、小さいままであり、以前と変わっていない。

 タイム誌の記事を読んだ当初、ヨーロッパあるいはEUは、現在のままでいいのではないかと思った。米国と中国とは、いずれも経済規模の大きな単一国家であることから、良きにつけ悪しきにつけ帝国主義的な態度で振る舞うこともあるだろう。EUは、現在27ヵ国の集合体であるから、EUに良い面での帝国主義を期待するのは無理であろう。言い換えれば、EUに世界的な指導力を期待するのは無理ではないか、と思えた。ヨーロッパは、科学技術の分野での貢献が大きいし、世界の模範となるような平和的な連合組織を形成しているのであるから、それだけで充分存在感があると思えるのである。しかし、EUが平和連合であればこそ、世界平和のためにもっと貢献できるのではないかという期待感をもってしまうのである。

 中東は、メソポタミア文明の発祥地であり、5000年にも及ぶ古い歴史をもつ地域である。例えば、イランやアフガニスタンの人々は、主としてイスラム教を信仰し、この宗教に則った生活を営み、政治的には政府役人の言うことよりも所属する部族の長やイスラム教教師の言うことを尊重する人々である。すなわち、中東の国々は、欧米とは全く異なる文化と伝統をもち、欧米の文化や自由・平等、民主主義の思想と相容れないことは明らかである。米国は、中東の国々と比べたら300年程度の歴史しかもたない新興国と言ってもよい。米国は、もっと中東の国々に住む人々を尊重してしかるべきである。

 しかるに、米国は、ソ連との冷戦時代には共産主義国の拡大を防ぐという名目でアフガニスタンを戦場とし、冷戦が終わってテロリズムの脅威が増したとき再びアフガニスタンに侵攻した。米国は、「テロリズムに対する戦争」と言っているが、再びアフガニスタンの人々を戦争に巻き込んでしまったのである。その結果、米国は、元々テロの意志がない敵と戦闘し、罪のない一般市民を犠牲としてきたのである。すなわち、米国には、イラクやアフガニスタンに侵攻する目的があいまいになってしまったのに対し、アルカイダやタリバンは、自分の国を守るという立派な大義名分の下に戦っているのである。米国の対アフガニスタン戦は、すでに戦争のための戦争となっている。戦争というものは、いつの時代の戦争もそうであるが、なんと不条理で非人道的な行為であることか。そこでは、米国が中国に対して主張する人権尊重は何の意味ももたない。

 心ある人々は、ヨーロッパがリスボン条約の締結を終え、EUの組織を強化することを契機として、その指導力を発揮し、戦争好きの米国の前に立ちはだかってこれを抑制することを期待していたようである。しかし、この期待は、早くも期待外れになりそうである。EUは、国の集合体という事情があって、単一国による帝国主義的な世界支配には、かないそうもないし、EU自身がアフガニスタンにNATO軍を出兵しているという弱みもある。さらに、選出されたEUの初代大統領と外務大臣の顔ぶれをみても、ヨーロッパの指導力と言うとき、期待感よりも失望感の方が大きいようである。しかし、人々がそこまでヨーロッパに期待するのは、世界平和と言うとき、期待できるのは、ヨーロッパをおいて外にはないという世界平和への願いが込められているためであろう。