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男女性差に関する補足

2010-02-13 14:10:27 | 社会・経済

 先日のブログで、「汝、この生きづらき者」と題して、女性の生きづらい社会の現状と、何がその原因なのかについて述べた。その原因として、「胎児後期に、男児の大脳はその睾丸から分泌する男性ホルモンにさらされるが、女児の大脳はさらされないため、男女間で神経ネットワークの形成に違いが生じ、この男女差が社会生活において性差となって現れるためである」と書いた。

 2/12のサイエンスカフェで人間総合科学大学の新井康允先生の「女の脳、男の脳-脳科学の最前線-」という講演を聴き、基本的には上記の原因で間違いではないと確信した。しかし、男性および女性が置かれる社会環境という点で若干の補足があった方がよいと考えて、この記事を書くことにした。

 講演の最後に、人間のもつ「共感性」の多少と「システム化の脳」の多少について、一般の男子、一般の女子、アスペルガー症候群の人を対象にして採取されたデータの紹介があった。ここで、「共感性」とは、「他の人の気持ちや感じ方を理解し、自分を同調させ、相手が考えていること、感じていることが引き金となって自分の中にも何らかの感情が生じる。」と定義される。また、「システム化の脳」とは、「機械いじり、ルール、規則性、因果関係、数学、物理学、工学を得意とする脳」と定義される。実験データによれば、女子は、一般に「共感性」の得点が高いが、男子に比べて「システム化」の得点が低い。また、男子は、一般に女子に比べて「共感性」の得点が低いが、「システム化」の得点がより高い。さらに、アスペルガー症候群は、著しく「共感性」に欠けるが、「システム化」の得点が高い人も少なくないという統計データの結果となった。

 新井先生は、一般に女子は男子よりも「共感性」が高い、すなわちコミュニケーション能力が高いと説明された。それならば、女子が男子より「社会性」に欠けるとみなされるのは何故かという疑問が生じる。これについては、こう説明するのが妥当であろう。「共感性」あるいはコミュニケーション能力とは、程度の差こそあれ、正常な人間が男女ともにもつプリミティブな能力であり、すなわち母性本能に近いような能力であり、「システム化」の能力とはかなりレベルが違うのではないかということである。「社会性」と言ったとき、それは「共感性」とは直接関係がなく、男性支配の社会において主として男性本位に構築されたルールや規則に適合できる能力とみるべきではなかろうか、という疑問が生じるのである。つまり、男性に比べて、女性は、社会のルールや規則に適合するためのポテンシャル壁が高いというハンディがあるのではなかろうか、という疑問である。確かに、そのような側面を否定できないが、それが話の全体なのかとなると、納得できないものがある。

 自由、平等というと、現在ではあたり前の概念のように見えるが、実は人類が到達した至高の理想なのである。例えば、一種類の猿が集団で生活する社会において、2匹の猿は支配するものと支配されるものとの非対称の関係においてのみ両者が存立し得るものであり、対等の関係というものは存在し得ないのである。これは、集団生活するすべての動物、昆虫について当てはまる生物の性癖なのである。人間ですら、長い人類の歴史を通じて自由、平等の思想を確立したのは、ごく最近のことと言っても過言ではない。そのために、この世に生まれ落ちた人間、特に女性の頭脳は、その後の学校教育や学習の機会があるにもかかわらず、自由、平等、すなわち自分と相手との間の対等な関係という考え方にまだ容易に追いつけない状態なのである。そもそも、自分の要求と相手の要求とがコンフリクトするとき、自由と平等が両立することは困難である。自分が自由を主張すると支配する側となって相手の自由を抑制して相手を支配される側とするので、バランスを保った対等の関係を維持するのが難しい。どうしても、非対称の関係になり勝ちである。

 社会生活において、二者の利害が対立するということは、ごく通常の状態であるので、いかにしてできるだけ対等の立場を保ちつつ平静に問題を解決するかとい能力は、「社会性」というものの中で大きなウェイトを占める能力であろう。女性は、学習によって理屈では分かっているつもりであっても、相手と利害が対立するという現実のプラクティスの場面となると、相手との対話を通じてできるだけ対等の立場を保ちつつ問題を解決するというプロセスに辛抱できず、支配するものとされるものという大脳が元々もっていたプリミティブな思考回路が優先的に働き、怒りが爆発することになるのであろう。そして、この女性の性癖は、一般にほとんど終生変わらずに繰り返し発揮されるものとみられる。男性であっても、現実のプラクティスの場面で相手と対等の立場を保ちつつ問題を解決するというプロセスを実行するのは難しい。しかし、男性の頭脳は、元々女性との間にある性差と、社会生活の経験を通じて磨かれたスキルによって、女性よりは「社会性」を発揮して平静に問題を解決できるように見える。

 以上のような考察の結果として、男女性差の根源は、やはり基本的には胎児後期に形成される大脳の男女差に大きく依存するものと考えざるを得ないのである。ただし、学校教育など社会環境の影響を受けて、大脳の男女差は、概して誕生時よりも縮まっているであろうと推測されるのだが。

 サイエンスカフェの受講者の1(女性)がコメントされていたことであるが、女性は、「共感性」とか「言語能力」のように女性の得意とするスキルを生かして仕事をしてもらうのが女性の幸福のためにも社会のためにも望ましいことであろう。もちろん、女性がその美貌を売り物にすることも可であろうが、例えば看護師のように男性よりも優秀な能力を発揮する分野で活躍してもらうのが望ましいことである。女性が、男性の得意とする分野に挑戦し、男性と肩を並べるかそれ以上のキャリアを取得し、成功したという例も少なくない。しかし、男女性差によって男性よりもポテンシャル壁が高いというハンディのある分野に敢えて挑戦するのは、成功したときのリターンが大きいかも知れないが、失敗するリスクも大きいように思われる。