及川 均 Logbook

フォトグラファー及川によるblogです。

マクロレンズって?(Lesson 4)

2008年06月26日 | 写真のお勉強
今日はマクロな話をしてみよう。


Lesson 4:マクロレンズについて。



前回はレンズの焦点距離について勉強した。

焦点距離が短いレンズを広角レンズといい、広い範囲を写すことができる。

逆に焦点距離が長いレンズを望遠レンズといい、狭い範囲を写すことができる。
言い換えると、遠くのものを大きく写すことができるのが望遠レンズだ。
「望遠鏡」って言葉もあるしね。

従って、広角(ワイド、W)の反対語は望遠(テレ、T)ってことになる。


んじゃ、水中写真でよく使う「マクロ」ってナニ?

ってことになるけど、マクロとは拡大して撮影できるように近づいてもピントの合う機能のこと。

マクロ写真というと、やっぱりウミウシとかハゼの拡大写真を想像するでしょ。



んで、被写体を大きく撮るには2つの方法がある。


一つは、遠くのものを大きく写すための望遠レンズを使う。

もう一つは、被写体まで近づいて撮る。


だったら、望遠レンズで近づいて撮っちゃえば簡単じゃ~ん。

と思うけど、これがなかなか難しい。


その理由を説明しよう。


まずは20mmの広角レンズのレンズの先っちょを見てちょ。

20mmレンズを装着して、ピントを無限遠(はるか遠く)に合わせた時のレンズの状態。




続いて、同じレンズでピントを25cm先に合わせた時のレンズの状態。
ちなみに、このレンズの最短撮影距離は25cm。



よ~く見ると、ピントを近くに合わせた時にレンズの先っちょが少し飛び出てる。



続いて、105mmのマクロレンズでピントを無限遠に合わせた時。




んで、同じレンズでピントを30cm先に合わせた時。
ちなみに、このレンズの最短撮影距離は30cm。




どう?
今度はかなり長く出てるでしょ?


つまり、望遠レンズ(一般的には望遠鏡のように胴長のレンズの場合が多い)でピントを近くに合わせるには、レンズをズズズィ~っと前に出さなきゃなんねえの。

これって、レンズのピントリング(グリグリ回すヤツ)をグリグリとたくさん回す必要があるってこと。
自分で回すにしても、オートフォーカス(モーター)で回すにしても、労力が必要だし、ピントを合わすまでに時間もかかる。

そして、そもそも望遠レンズというのは遠くの物を大きく写すためのものなので、
近くにピントを合わすってのは、水中でウミウシとかハゼとかエビ・カニとかマニアックな路線の人、もしくは陸上でも昆虫などやっぱりマニアック路線の人しか使わないの。

なので、メーカーもあまり作ってないってワケよ。(たぶん)


それでもやっぱり需要はあるワケで、種類は少ないけど一応各メーカーで数種類のランナップはあるようだ。

上の写真のは、私が最もよく使うニコンの105mmマクロレンズ。
このレンズの最短撮影距離は約30cm。写真の通り近くにピントを合わすためにかなりレンズが飛び出てしまう。
逆に20mmのワイドレンズは最短撮影距離が25cmだけど、これはマクロレンズとは言わない。
なぜなら、ワイドレンズで近づいてもやっぱり拡大写真は撮れないから。(←私の想像だけど・・・)

まあ、そんな訳でマクロレンズとは、近づいてもピントの合う望遠レンズだと思ってもらってよいのではないかと・・・

ちなみに、標準に近い焦点距離の60mmのマクロレンズってものあるけど・・・
でも、300mmとか超望遠のマクロレンズってのは作るのがすんごく大変になると思われるし、価格も高くなり、さらに需要が少ないので存在しないんだと思ってる。


と、一眼レフ用のレンズのことばかり書いているけど、んじゃコンデジはどうなのよ!?

って人も多いと思う。


でもね、話は全く同じなワケよ。


前回も書いたように、コンデジのレンズは35mm換算値で35mm~105mmくらいの焦点距離のモデルが多い。
んで、105mm側で近くにピントを合わすには、やっぱりレンズをたくさん動かさなければならず、構造上難しい。
そこで、マクロモードなるものがあり、これを使うとレンズユニットが少し前に出るのではないかと私は思ってる。(携帯電話のカメラレンズを見ながらマクロモードを切り替えると動いてるのがわかるよ)
そうすることで、被写体まで近づいてもピントが合う。
しかし、やっぱり限界があり、一眼レフのマクロレンズほど近づくことはできないモデルが多いようだ。

広角側では20cmくらいまで近づけるのに、望遠側にすると60cmくらいまでしか近づけないものが多い。(このことに腹を立てる人も多いと思うけど、今まで話したように望遠レンズで近くにピントを合わすってのは大変なワケよ)

そこで、外付けのマクロレンズ(クローズアップレンズ)を使う人が登場する。
このレンズを付けると被写体まで近づいてもピントを合わすことができるようになる。
しかし、その機能と引き換えに遠くにさがるとピントが合わなくなるので、マクロレンズは頻繁につけたり外したりと大忙しなダイビングになるのだ。


一眼レフ用のマクロレンズは最短から無限遠までピントが合うので大変便利。

あ、ちなみに一眼レフ用のレンズの最短撮影距離とはレンズと被写体の距離ではなくて、フィルム(CCD)面から被写体までの距離なので、上の写真のような105mmレンズではレンズの先からだと数cmくらいにピントが合うのだ!

ハゼなんかの場合だと、最短まで寄らずに画面いっぱいに撮れる。
ところが、コンデジではクローズアップレンズを付けると近づかないとピントが合わないので近づきたい。
・・・んだけど、ハゼは引っ込んじゃう。
かといって、クローズアップレンズを付けないと60cmくらいまでしか寄れないので、画面に大きく写すことはできないし、やや遠いのでフラッシュもキレイには当たらないのよ。

どう、一眼レフの方が簡単にハゼが撮れる理由がわかったのでは?
でも、逆に言うと引っ込まないハゼやウミウシなんかはコンデジでも充分キレイに撮れるってこと。

ウチのゲストに口をすっぱくして言ってるけど、その道具で撮れるものを撮りましょう。
撮れないもので粘っても腕が悪いんじゃなくて、道具が悪いの。
自分の持ってる道具の特性を知り、できることをやれば結果も良好ってワケよ。


ちなみに、コンデジ界でもさらなる拡大写真が撮れるようにスーパーマクロモードなるものがある。
これは、レンズの前2~3cmくらいにピントが合うようだが、レンズはワイド側固定(今まで書いてきた理由によるものと思われる)、かつフラッシュが使えないことが多い。

水中写真として考えると、そんなに近づいて逃げない生物はほとんどいない(ウミウシですら逃げる)し、フラッシュが使えないので発色が悪いので、私としてはあっても嬉しくない機能だと思ってる。(実際にコンデジの時でも使ったことすらない)




うわ~

気がつけばまた長々と書いてしまった。

嫌われるな。こりゃ。



ちなみに、詳しい方は知ってることだけど、スーパーマクロでもフラッシュが使えるのがあったり、一眼レフ用のマクロレンズでもレンズが飛び出さない仕組み(インナーフォーカス)のレンズがあったりするんだけど、その辺の細かいご指摘はナシでお願いします。
あくまでも一般的なお話でね。