犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

シンドラー社製エレベーター事故

2012-11-20 22:16:55 | 国家・政治・刑罰

11月16日 NHKニュースWEB 「エレベーター事故 初公判見通し立たず」より

 平成18年に東京・港区で、高校生がシンドラー社製のエレベーターに挟まれて死亡した事故は、裁判の争点を整理する手続きが、これまでで最も長い3年に及び、現在も初公判の見通しが立っていないことが分かりました。この事故は、平成18年に東京・港区のマンションで、当時16歳の男子高校生がエレベーターのドアに挟まれて死亡したもので、「シンドラーエレベータ」の東京支社の元保守部長ら5人が在宅のまま起訴されました。

 15日夜、東京地方裁判所で、裁判の前に争点を絞り込む17回目の「公判前整理手続き」が行われましたが、関係者によりますと、初公判の日程は今回も決まらず、裁判が始まる見通しは立っていないことが分かりました。シンドラー側は「事故の前の点検では、ブレーキに関する装置に故障はなかった」と無罪を主張する方針ですが、争点が複雑なことや、検察が鑑定を改めて行ったことなどから、公判前整理手続きは3年に及び、制度が始まってから最も長くなっています。

 こうしたなかで、先月、金沢市のホテルでも同じメーカーのエレベーターで死亡事故が起きていて、非公開の手続きが続き、裁判が始まらないまま再び事故が起きたことに、遺族から批判が出ています。死亡した高校生の母親の市川正子さんは、「裁判がスタートしないことに憤りを感じる。早く裁判で重要な証拠を明らかにして、真の安全対策につなげてほしい」と話しています。


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 先日の金沢市のホテルでのシンドラー社製エレベーターの事故のニュースを聞き、港区の事故のことを思い出しました。また、私が港区の事故のことを忘れていたことも思い出し、このニュースで裁判が始まる見通しは立っていないことも初めて知りました。「犯罪被害者の方々が置かれている状況について国民の理解を深める」「被害者の方々の権利利益の保護が一層図られる社会の実現」といった言葉を羅列するしかない我が身の無力さと、偽善性に気付かされます。

 私は医療事故の裁判に接した経験を通じ、「争点の複雑さ」「証拠の膨大さ」「鑑定の解読の専門性」の前に「人の生命の重さ」を語ると、裁判実務の現場では子供扱いされて嘲笑されることを痛いほど知りました。そして、民事裁判であるか刑事裁判であるかを問わず、積み上げられた概念のピラミッドの下の下のほうから頂上を見上げては、誰が何のために裁判をしているのかが全くわからなくなり、頭をクラクラさせていました。「人の生命の重さ」という言葉だけを借りて、細かい争点の議論に戻るのみでした。

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