宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

カフカ「禿鷹」:変形した現実の中で私は不死となる!①私の肉体は死体だが、私の精神は不死!あるいは②私の死体が生体へ蘇り、私は不死!

2020-05-24 19:59:22 | Weblog
※カフカ(1883-1924)「禿鷹」(1920)『カフカ短編集』岩波文庫(池内紀編訳)

(1)
私の足を禿鷹がえぐりに来る。禿鷹は靴、靴下、いまや足を繰り返し襲っている。私は苦痛に耐える。その時、紳士が通りかかった。「なぜ我慢しているのか?」と私にたずねた。
《感想1》私を襲う禿鷹。私は足を抉られ、苦痛に耐える。
(2)
「仕方ないのです。追っ払ってもすぐに舞い戻ってくるのです。」私は答えた。「足ですめばいい方です。もうあらかた抉られてしまいました。」
《感想2》私はあきらめている。追っ払っても禿鷹はすぐ戻ってくる。すでに足は抉られ、やがて私は命も失うだろう。
(3)
紳士が言った。「ずどんと1発、禿鷹を撃ち殺せばいいんです。」「鉄砲を取ってきます。」「もう30分ほど我慢できますか?」私は、苦痛に身をよじらせ、「とにかく、お頼みします」と言った。
《感想3》紳士は親切で、賢い。禿鷹を鉄砲で仕留めれば、禿鷹の攻撃から「私」は逃れられる。彼は「鉄砲で禿鷹を撃ち殺してやる」と言う。
(4)
このやり取りを、禿鷹は耳を澄まして聴いていた。紳士が去ると、禿鷹はさっと舞い上がり、弾みをつけ、槍のように嘴を私の喉首に突き刺した。私は仰向けに倒れ、のどの奥から血が噴き出した。
《感想4》このやり取りを聴いていた禿鷹は私を殺そうと、私の喉首を嘴で、刺し貫いた。禿鷹の当然の行動だ。
(5)
みるみる辺りは血にあふれ、その中でもがく間もなく禿鷹が溺れていく。それを見て私はほっと安堵した。
《感想5》「みるみる辺りは血にあふれる。」ここまでは普通の現実だ。だが突然、現実が変形する。私の首から流れ出た血が、池のように大量にたまり、その粘性に禿鷹はからめとられ、血の中でもがき、禿鷹が溺れ死んでいく。
《感想5-2》この時、この変形した現実の中では、私は不死となる。①私の肉体は死体だが、私の精神は不死である。あるいは②私の死体が生体へ蘇り、私は不死である。①であれ②であれ、私の血の池の中で溺れ死ぬ禿鷹!「それを見て私はほっと安堵した。」
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