(1)エリダノスの流れ!
墜落したパエトンを受け取ったのは、故国を遠く離れた地の、大いなるエリダノスの流れだった。水の精たちがパエトンの遺骸を埋葬し、墓碑銘を立てた。哀れな父親アポロンは、悲しみにやつれ、顔を隠し、まる1日の間、日が出なかった。
(2)母親クリュメネと「太陽の娘たち」!
母親のクリュメネは、悲嘆のあまり半狂乱で、地上のいたるところを遍歴し息子の遺骸を探し求めた。ついにそれを探し当てたが、それは異国の河辺に埋められた彼の白骨だった。パエトンの姉妹の「太陽の娘たち(ヘリアデス)」も涙をそそぎ、パエトンの名を日夜呼び叫んで塚に伏した。
(3)月が4度満ちた!
こうして月が4度満ちた。ある時、長女パエトゥーサが大地にひれ伏そうとしながら、急に足がこわばって動かなくなった。まばゆいばかりに色白のラムペティエが、姉のそばに駆け寄ろうとすると突如根が生えたように動けなくなった。次の妹が手で髪の毛をかきむしろうとすると、むしり取られたのは木の葉だった。
(4)「これがお別れ」!
「太陽の娘たち(ヘリアデス)」がこの出来事に驚いているうちに、樹皮が下腹部を包み、腹部、胸部、肩、手としだいに上へあがってゆく。口だけが残っていて母親を呼び求める。母親はうろうろとあちこちへ駆け寄る。娘たちが「これがお別れ!」と言う。樹皮がこの最後の言葉をふさいでしまった。
(5)「琥珀」!
そしてそこから、涙が流れ落ちる。できたばかりの枝からしたたるこの樹脂は、日光で凝固して「琥珀」となった。澄んだ流れの河がこれらを受けとって、ローマへ運び、妙齢の婦人たちの身につけられることとなった。
《参考1》「太陽の娘たち(ヘリアデス)」は「ポプラ」の木になったという。
《参考2》エリダノス川は神話上の北洋に注ぐ大河で、河口にエレクトリデス(琥珀)諸島がある。この川は、バルト海にしか産しない琥珀が青銅器時代の地中海世界に入ったときの交易路,いわゆる「琥珀の道」の記憶をとどめるものとされる。
サンティ・ディ・ティート(1536-1603)『ポプラに変身したパエトンの姉妹たち』
墜落したパエトンを受け取ったのは、故国を遠く離れた地の、大いなるエリダノスの流れだった。水の精たちがパエトンの遺骸を埋葬し、墓碑銘を立てた。哀れな父親アポロンは、悲しみにやつれ、顔を隠し、まる1日の間、日が出なかった。
(2)母親クリュメネと「太陽の娘たち」!
母親のクリュメネは、悲嘆のあまり半狂乱で、地上のいたるところを遍歴し息子の遺骸を探し求めた。ついにそれを探し当てたが、それは異国の河辺に埋められた彼の白骨だった。パエトンの姉妹の「太陽の娘たち(ヘリアデス)」も涙をそそぎ、パエトンの名を日夜呼び叫んで塚に伏した。
(3)月が4度満ちた!
こうして月が4度満ちた。ある時、長女パエトゥーサが大地にひれ伏そうとしながら、急に足がこわばって動かなくなった。まばゆいばかりに色白のラムペティエが、姉のそばに駆け寄ろうとすると突如根が生えたように動けなくなった。次の妹が手で髪の毛をかきむしろうとすると、むしり取られたのは木の葉だった。
(4)「これがお別れ」!
「太陽の娘たち(ヘリアデス)」がこの出来事に驚いているうちに、樹皮が下腹部を包み、腹部、胸部、肩、手としだいに上へあがってゆく。口だけが残っていて母親を呼び求める。母親はうろうろとあちこちへ駆け寄る。娘たちが「これがお別れ!」と言う。樹皮がこの最後の言葉をふさいでしまった。
(5)「琥珀」!
そしてそこから、涙が流れ落ちる。できたばかりの枝からしたたるこの樹脂は、日光で凝固して「琥珀」となった。澄んだ流れの河がこれらを受けとって、ローマへ運び、妙齢の婦人たちの身につけられることとなった。
《参考1》「太陽の娘たち(ヘリアデス)」は「ポプラ」の木になったという。
《参考2》エリダノス川は神話上の北洋に注ぐ大河で、河口にエレクトリデス(琥珀)諸島がある。この川は、バルト海にしか産しない琥珀が青銅器時代の地中海世界に入ったときの交易路,いわゆる「琥珀の道」の記憶をとどめるものとされる。
サンティ・ディ・ティート(1536-1603)『ポプラに変身したパエトンの姉妹たち』