※新田義弘・宇野昌人編『他者の現象学Ⅱ:哲学と精神医学のあいだ』北斗出版、1992年所収
2 「意識の構造の変容」
(1)「縦軸の系(「流れること」)の変容(異常)」
(3)「縦軸の系(「流れること」)の変容」:(a)「流れ」の断絶、現在への没入、ここの膨張と偏在!(b) 「流れ」がよそよそしいものとなる!(c) 「流れ」が停滞しよどむ!(37-44頁)
D「間隙の生起」が流れを流れさせている。「間隙の生起」の異常は「流れの流れること」に生ずる異常だ。(38頁)
D-2 「流れること」が時間・空間意識を生起させるので、「流れること」の異常は時間意識・空間意識の変容(異常)を引き起こす。(38頁)
D-2-2 時間意識における変容(異常):(a)《現在》への極端な没入、(b)《未来》へと絶えず先駆けるという仕方での《未来》(予期)の異様な膨張、(c)同じことの繰り返しの中での《過去》の凝結。(38頁)
D-2-3 空間意識における変容(異常):(a-2)「ここ」の膨張と偏在、(b-2)「ここ」の希薄化と拡散、(c-2)「ここ」の縮小と凝固。(38頁)
(3)-2 (a)「間隙の生起(or「流れること」)の異常(変容)の第一」:流れが流れなくなってしまうこと(流れの断絶・途絶)!時間意識における変容(a) 《現在》への極端な没入!空間意識における変容(a-2) 「ここ」の膨張と偏在!(Cf. 37-38頁)(38-40頁)
D-3 「間隙」が「間隙」としてじかに流れの中に露出してしまう事態。(38頁)
D-3-2 「今」と「たった今」が架橋されないし、「ここ」と「そこ」が架橋されない。両者の間に空虚なすきまが生じる。流れが流れない。(38頁)
D-3-3 空虚なすきまの中に「今」が呑みこまれるor流れの他なるものとしての「未来」がじかに経験される。(38頁)
D-3-4 「時間意識における変容」(a)《現在》への極端な没入:一瞬が静止し、現前するすべてが光り輝く。その光に目がくらみこの真白な空白(すきま)の中にすべてが呑みこまれる。流れの停止と解体。時間は停止し、現在への極端な没入。
D-3-4-2 「空間意識における変容」(a-2)「ここ」の膨張と偏在:空間的にすべてが「ここ」となる。(39頁)
D-3-5 「真性癲癇の発作」は、この「間隙の生起(or流れること)の異常の第一」に最も近い。一瞬の永遠化、永遠の現在に呑み込まれるエクスタシー、発作経験の脱落、発作の前と後の時間の断絶。「アウラ体験」(完全に獲得された永久調和、全宇宙の直感、「しかり、そは正し」の心持ち)(ドストエフスキー)。(39-40頁)
D-3-6 また「両極型躁鬱病の躁状態」もこれに近い症状を呈する。世界のすべてと完全に重なり合い、輝ける現在への没入。「今」「ここ」の膨張と偏在。「自分で炭酸水みたいに沸き立ってしまっていた」!(40頁)
(3)-3 (b)「間隙の生起(or「流れること」)の異常(変容)の第二」:流れが急速に流れ去って(失われて)しまうことor「流れ」がよそよそしいものとなること!「流れの希薄化」!時間意識における変容(b) 《未来》へと絶えず先駆けるという仕方での《未来》(予期)の異様な膨張!空間意識における変容(b-2) 「ここ」の希薄化と拡散!(Cf. 37-38頁)(40-42頁)
D-4 「間隙」のもつ架橋能力の相対的弱化。「流れの希薄化」。流れのさまざまな出来事がバラバラでチグハグになる。(40頁)
D-4-2 「時間意識における変容」(b)《未来》へと絶えず先駆けるという仕方での《未来》(予期)の異様な膨張:現在(「今」)が確固としていない。足元から崩れる現在(「今」)。それから逃れるため予期(先取り)された未来にすがる。(40頁)
D-4-3 「空間意識における変容」(b-2)「ここ」の希薄化と拡散:「ここ」が希薄化し、周囲へ流出して行って失われてしまう。「ここ」がスカスカになり、「そこ」に浸食されてしまう。すべてが手元からすべりおちてしまう。(41頁)
D-4-4 「間隙の生起(or「流れること」)の異常の第二」:「流れ」が急速に流れ去って(失われて)しまうことor「流れ」がよそよそしいものとなること!流れに見えない「他なるもの」がひそかに侵入。流れが内側から脅かされている。「流れ」がよそよそしいもの、落ち着けないもの、他性を帯びたものとなる。(41頁)
D-4-5 「分裂病Ⅰ型」は、「間隙の生起(or「流れの流れること」)の異常の第二」の状態を呈する。Ex. 少しでも目を離すと、自分がばらばらに壊れてしまう。Ex. 「もの」のアイデンティティの不安定ないし不成立、「すりかわり」体験。「買ってきたらもう換えられていた。」Ex. 「トイレで尿と一緒に魂が流れていってしまった。」Ex. 「瞬間、瞬間に自分が変わってしまう。」(41頁)
D-4-5-2 なお「分裂病Ⅱ型」は、横軸の系(「他なるもの」)の変容、つまり対他関係・対人関係の歪みから生じる。(42頁)
(3)-4 (c)「間隙の生起(or「流れること」)の異常(変容)の第三」:「流れ」が「停滞」しよどんでしまうこと!「未来」は存在しない!時間意識における変容(c) 同じことの繰り返しの中での《過去》の凝結!空間意識における変容(c-2) 「ここ」の縮小と凝固!(Cf. 37-38頁)(42-44頁)
D-5 「間隙の生起(or「流れること」)の異常の第三」は「間隙」の持つ架橋能力が柔軟性を失って硬直化してしまう事態だ。(42頁)
D-5-2 時間意識における変容(c) 同じことの繰り返しの中での《過去》の凝結!時間は同じところをぐるぐるめぐる習慣化されたパターンを形成。新しい出来事が入り込む余地がない。すべて過去の繰り返しで常同的様相。過去が凝結し、その塊が膨れ上がり現在を侵食する。「未来」に背を向ける。「未来」が流れの中に入ってくることを恐れる。「未来」は存在しない。(42頁)
D-5-3 空間意識における変容(c-2)「ここ」の縮小と凝固!「ここ」以外の「そこ」に対する極度の無関心。(42頁)
D-5-4 「両極型躁鬱病の鬱状態」および「単極性鬱病」は、「間隙の生起(or「流れること」)の異常(変容)の第三」(流れが停滞しよどんでしまうこと)に対応する。Ex. 「散乱した風景の限りない灰色の中で見失われた一個の小石」が私だ。Ex. 「底の方に沈み込んだまま浮かび上れなくなってしまった。」Ex. 「未知なる未来」はあってはならない、「未来はすべて予定済み」。(43頁)
D-5-5 「縦軸の系(「流れること」)の変容」によるものは「鬱病Ⅰ型」と呼ぼう。Cf. これに対し「横軸の系(「他なるもの」)の変容」によるものが「鬱病Ⅱ型」だ。対他関係にかかわる鬱病だ。(43頁)
(3)-5 「縦軸の系(「流れること」)の変容(異常)」による精神疾患:(1)(a)「流れの断絶・途絶」による「真性癲癇の発作」・「両極型躁鬱病の躁状態」!(1)(b)「流れの希薄化」による「分裂病Ⅰ型」!(1)(c)「流れの停滞」による「鬱病Ⅰ型」!(44頁)
D-6 精神疾患は「対人関係論」に解消できない。「意識の構造」における(1)「縦軸の系(「流れること」)の変容(異常)」による精神疾患もあるからだ。(1)(a)「流れの断絶・途絶」による「真性癲癇の発作」・「両極型躁鬱病の躁状態」。(1)(b)「流れの希薄化」による「分裂病Ⅰ型」。Cf. 「分裂病Ⅱ型」は、(2)横軸の系(「他なるもの」)の変容(異常)、つまり対他関係・対人関係の歪みから生じる。(1)(c)「流れの停滞」による「鬱病Ⅰ型」(「両極型躁鬱病の鬱状態」および「単極性鬱病」)。Cf. これに対し「鬱病Ⅱ型」は、(2)「横軸の系」(「他なるもの」)の変容(異常)による。対他関係にかかわる鬱病だ。(44頁)
2 「意識の構造の変容」
(1)「縦軸の系(「流れること」)の変容(異常)」
(3)「縦軸の系(「流れること」)の変容」:(a)「流れ」の断絶、現在への没入、ここの膨張と偏在!(b) 「流れ」がよそよそしいものとなる!(c) 「流れ」が停滞しよどむ!(37-44頁)
D「間隙の生起」が流れを流れさせている。「間隙の生起」の異常は「流れの流れること」に生ずる異常だ。(38頁)
D-2 「流れること」が時間・空間意識を生起させるので、「流れること」の異常は時間意識・空間意識の変容(異常)を引き起こす。(38頁)
D-2-2 時間意識における変容(異常):(a)《現在》への極端な没入、(b)《未来》へと絶えず先駆けるという仕方での《未来》(予期)の異様な膨張、(c)同じことの繰り返しの中での《過去》の凝結。(38頁)
D-2-3 空間意識における変容(異常):(a-2)「ここ」の膨張と偏在、(b-2)「ここ」の希薄化と拡散、(c-2)「ここ」の縮小と凝固。(38頁)
(3)-2 (a)「間隙の生起(or「流れること」)の異常(変容)の第一」:流れが流れなくなってしまうこと(流れの断絶・途絶)!時間意識における変容(a) 《現在》への極端な没入!空間意識における変容(a-2) 「ここ」の膨張と偏在!(Cf. 37-38頁)(38-40頁)
D-3 「間隙」が「間隙」としてじかに流れの中に露出してしまう事態。(38頁)
D-3-2 「今」と「たった今」が架橋されないし、「ここ」と「そこ」が架橋されない。両者の間に空虚なすきまが生じる。流れが流れない。(38頁)
D-3-3 空虚なすきまの中に「今」が呑みこまれるor流れの他なるものとしての「未来」がじかに経験される。(38頁)
D-3-4 「時間意識における変容」(a)《現在》への極端な没入:一瞬が静止し、現前するすべてが光り輝く。その光に目がくらみこの真白な空白(すきま)の中にすべてが呑みこまれる。流れの停止と解体。時間は停止し、現在への極端な没入。
D-3-4-2 「空間意識における変容」(a-2)「ここ」の膨張と偏在:空間的にすべてが「ここ」となる。(39頁)
D-3-5 「真性癲癇の発作」は、この「間隙の生起(or流れること)の異常の第一」に最も近い。一瞬の永遠化、永遠の現在に呑み込まれるエクスタシー、発作経験の脱落、発作の前と後の時間の断絶。「アウラ体験」(完全に獲得された永久調和、全宇宙の直感、「しかり、そは正し」の心持ち)(ドストエフスキー)。(39-40頁)
D-3-6 また「両極型躁鬱病の躁状態」もこれに近い症状を呈する。世界のすべてと完全に重なり合い、輝ける現在への没入。「今」「ここ」の膨張と偏在。「自分で炭酸水みたいに沸き立ってしまっていた」!(40頁)
(3)-3 (b)「間隙の生起(or「流れること」)の異常(変容)の第二」:流れが急速に流れ去って(失われて)しまうことor「流れ」がよそよそしいものとなること!「流れの希薄化」!時間意識における変容(b) 《未来》へと絶えず先駆けるという仕方での《未来》(予期)の異様な膨張!空間意識における変容(b-2) 「ここ」の希薄化と拡散!(Cf. 37-38頁)(40-42頁)
D-4 「間隙」のもつ架橋能力の相対的弱化。「流れの希薄化」。流れのさまざまな出来事がバラバラでチグハグになる。(40頁)
D-4-2 「時間意識における変容」(b)《未来》へと絶えず先駆けるという仕方での《未来》(予期)の異様な膨張:現在(「今」)が確固としていない。足元から崩れる現在(「今」)。それから逃れるため予期(先取り)された未来にすがる。(40頁)
D-4-3 「空間意識における変容」(b-2)「ここ」の希薄化と拡散:「ここ」が希薄化し、周囲へ流出して行って失われてしまう。「ここ」がスカスカになり、「そこ」に浸食されてしまう。すべてが手元からすべりおちてしまう。(41頁)
D-4-4 「間隙の生起(or「流れること」)の異常の第二」:「流れ」が急速に流れ去って(失われて)しまうことor「流れ」がよそよそしいものとなること!流れに見えない「他なるもの」がひそかに侵入。流れが内側から脅かされている。「流れ」がよそよそしいもの、落ち着けないもの、他性を帯びたものとなる。(41頁)
D-4-5 「分裂病Ⅰ型」は、「間隙の生起(or「流れの流れること」)の異常の第二」の状態を呈する。Ex. 少しでも目を離すと、自分がばらばらに壊れてしまう。Ex. 「もの」のアイデンティティの不安定ないし不成立、「すりかわり」体験。「買ってきたらもう換えられていた。」Ex. 「トイレで尿と一緒に魂が流れていってしまった。」Ex. 「瞬間、瞬間に自分が変わってしまう。」(41頁)
D-4-5-2 なお「分裂病Ⅱ型」は、横軸の系(「他なるもの」)の変容、つまり対他関係・対人関係の歪みから生じる。(42頁)
(3)-4 (c)「間隙の生起(or「流れること」)の異常(変容)の第三」:「流れ」が「停滞」しよどんでしまうこと!「未来」は存在しない!時間意識における変容(c) 同じことの繰り返しの中での《過去》の凝結!空間意識における変容(c-2) 「ここ」の縮小と凝固!(Cf. 37-38頁)(42-44頁)
D-5 「間隙の生起(or「流れること」)の異常の第三」は「間隙」の持つ架橋能力が柔軟性を失って硬直化してしまう事態だ。(42頁)
D-5-2 時間意識における変容(c) 同じことの繰り返しの中での《過去》の凝結!時間は同じところをぐるぐるめぐる習慣化されたパターンを形成。新しい出来事が入り込む余地がない。すべて過去の繰り返しで常同的様相。過去が凝結し、その塊が膨れ上がり現在を侵食する。「未来」に背を向ける。「未来」が流れの中に入ってくることを恐れる。「未来」は存在しない。(42頁)
D-5-3 空間意識における変容(c-2)「ここ」の縮小と凝固!「ここ」以外の「そこ」に対する極度の無関心。(42頁)
D-5-4 「両極型躁鬱病の鬱状態」および「単極性鬱病」は、「間隙の生起(or「流れること」)の異常(変容)の第三」(流れが停滞しよどんでしまうこと)に対応する。Ex. 「散乱した風景の限りない灰色の中で見失われた一個の小石」が私だ。Ex. 「底の方に沈み込んだまま浮かび上れなくなってしまった。」Ex. 「未知なる未来」はあってはならない、「未来はすべて予定済み」。(43頁)
D-5-5 「縦軸の系(「流れること」)の変容」によるものは「鬱病Ⅰ型」と呼ぼう。Cf. これに対し「横軸の系(「他なるもの」)の変容」によるものが「鬱病Ⅱ型」だ。対他関係にかかわる鬱病だ。(43頁)
(3)-5 「縦軸の系(「流れること」)の変容(異常)」による精神疾患:(1)(a)「流れの断絶・途絶」による「真性癲癇の発作」・「両極型躁鬱病の躁状態」!(1)(b)「流れの希薄化」による「分裂病Ⅰ型」!(1)(c)「流れの停滞」による「鬱病Ⅰ型」!(44頁)
D-6 精神疾患は「対人関係論」に解消できない。「意識の構造」における(1)「縦軸の系(「流れること」)の変容(異常)」による精神疾患もあるからだ。(1)(a)「流れの断絶・途絶」による「真性癲癇の発作」・「両極型躁鬱病の躁状態」。(1)(b)「流れの希薄化」による「分裂病Ⅰ型」。Cf. 「分裂病Ⅱ型」は、(2)横軸の系(「他なるもの」)の変容(異常)、つまり対他関係・対人関係の歪みから生じる。(1)(c)「流れの停滞」による「鬱病Ⅰ型」(「両極型躁鬱病の鬱状態」および「単極性鬱病」)。Cf. これに対し「鬱病Ⅱ型」は、(2)「横軸の系」(「他なるもの」)の変容(異常)による。対他関係にかかわる鬱病だ。(44頁)