宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『サキ短編集』③「肥った牡牛」と「優美な若牛」は、「クルジスタンの遊牧民の酋長」と「ニッポンのゲイシャ」ほど違う!

2020-08-08 19:11:37 | Weblog
※サキ(Saki)、本名ヘクター・ヒュー・マンロー(Hector Hugh Munro)(1870-1916)、『サキ短編集』新潮文庫、1958年。

(3)「肥った牡牛」
画家エシュリーは、優美に牛を描く人気で成功した画家だった。彼の家は、街のはずれにあった。晩秋のある日、隣家のアディラが突然、彼のアトリエにやってきた。「うちの庭に牛が入ってきて、花壇の大切な菊の花を食べてる。追い出してほしい」と言った。「あなたは牛の絵を描くから、牛を追い出せると思ったの!」エシュリーが「牛の絵を描いても、牛は追い出せない」と断ったが、結局、アディラの庭に行った。ところが牛は「巨大な斑の牡牛」(「肥った牡牛」)だ。彼がいつも描く「優美な若牛」と全く違う。「クルジスタンの遊牧民の酋長と、ニッポンのゲイシャほど違う」と彼は思った。牡牛は高価な菊の花をむしゃむしゃ食べる。エシュリーが追い出そうとするが、うまくいかない。それどころか牡牛はアディラの家の居間に入り、花瓶の花を食べ始めた。アディらは怒り、「図書館に行って、警察に電話をかけてもらいます」とプンプンしながら出て行った。ところが牡牛はじきに居間から出て、庭からも出て行った。実は、この挿話は画家としてのエシュリーの一生の転機となった。彼の驚異的な作品『晩秋の居間における牡牛』は次の年のパリのサロンで、センセイション起こし大成功をおさめた。その時以来、彼の成功は、一時的なものでなく終生、確保されることなった。

《感想1》「牛を描くこと」と「牛の扱いがうまいこと」に親和性があると思ったアディラの仮説は、事実によって反証された。
《感想2》「巨大な斑の牡牛」(「肥った牡牛」)と「優美な若牛」の違いを、「クルジスタンの遊牧民の酋長」と「ニッポンのゲイシャ」の違いに譬えたのは、ジャポニズムの時代(19世紀後半~20世紀初頭)を思わせる。
《感想2-2》日本の諺なら「月とすっぽん」、「提灯に釣り鐘」、「雲泥の差」だ!
《感想3》「肥った牡牛」の挿話が、実は思いがけなく画家エシュリーの「一生の転機」となったというのがすごい。(「アッと驚かせる」サキの手法だ。)

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安部悦生『文化と営利』「第5章」(その1):ロビンズの「企業文化」の7側面!①安定重視、②リスクを回避しない、③競争的、④大胆さ、⑤集団重視、⑥結果志向、⑦人間関係重視!

2020-08-08 14:45:24 | Weblog
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅰ部 経営文化の理論的解明」「第5章 組織文化のミクロ分析」(66-80頁)(その1)

(1)ミクロ組織論(その1):ロビンズ(経営学者)の「組織文化」(組織内部の企業文化)!(66-68頁)
A ロビンズは、個人の性格と同じように、組織人格つまり「組織文化」があるとする。
例1:フォーマルな服装・丁寧な態度(金融業)、派手でカジュアルな服装・率直で打ち解けた態度(服飾業界)。
例2:関西の「派手で積極的な」風潮、関東の相対的に「澄ました」態度。
A-2 「組織文化」は、(ア)基本的な考え方(価値基準)(Ex. 個人より集団の重視)、(イ)物事の進め方(Ex. 稟議、根回しの重視)、(ウ)行動の仕方(Ex. 体力勝負のどぶ板営業or頭を使った賢い営業)など、習慣、慣習(Ex. 有給休暇の消化の仕方)によって異なる。
A-3 「組織文化」は、文化の表出として、言葉で表現される。同じ会社、業界で「仲間内言葉」(jargon)が発生、仲間の間で絆・連帯感が育つ。マイナス面は閉鎖性が強まること。社内用語、業界用語!
A-4 「組織文化」には、Ex. 業界特有の組織文化、社風、さらにEx. 関東企業と関西企業などの地域差、最終的にはEx. 日本企業としての共通の性質が確認される。(「わが社はわが社です」)

(1)-2 ミクロ組織論(その1-2):ロビンズの「組織文化」の7側面!(68-69頁)
B 「組織文化」つまり「企業文化」には7側面があるとロビンズは言う。①「安定重視」(現状維持の重視)か否か。Ex. 老舗企業。②「革新的でリスクを回避しない」社風。Ex. エレクトロ二クスなどのハイテク企業。③「積極的で競争的」な社風か、「受け身の協調性」が重視されるか。④「細部へのこだわり、詳細な報告、慎重さ」が好まれる社風か(Ex. 失敗が全く許されず、失敗は出世競争の脱落を意味する)、逆に「大胆さ」が好まれる(Ex. 一度の失敗は「向う傷」と許容される)企業文化か。⑤「個人」重視か、「集団」としての組織重視(「チーム志向」)かという側面。⑥「達成過程」か「結果志向」かの側面。Ex. 営業系は「売上の未達」が問題となる。Ex. 証券会社や自動車のディーラーは結果(営業成績の数字)重視。⑦「タスク重視」か「人間関係重視」の企業風土かという側面。

(1)-3 ミクロ組織論(その1-3):仕事のモチベーション(勤労者の意欲)から見た「企業文化」(「組織文化」)の6側面!(69-70頁)
C 「仕事のモチベーション」(勤労者の意欲)から考察すれば、「組織文化」=「企業文化」に6側面がある。①インセンティブとしての「給与(金銭的報酬)」。②「労働条件」Ex. 仕事の負担、労働時間の長短、有給休暇、残業の程度、サービス残業。③「職場環境・労働環境」Ex. 職場環境が充実しているか、快適な環境か否か、3K (キツイ、キケン、キタナイ)職場か。④「昇進可能性」Ex. サービス残業は昇進可能性(ポストと給与)を顧慮すれば長期的にペイする。(人は他者からの承認、例えば部長、課長などのポストを求める。)⑤「仕事それ自体の充実」:カネのためと割り切るだけでは十分でない。(ただし相当の給与が得られればカネのためと割り切れる。)⑥職場における「人間関係」がモチベーションの維持向上に重要。Ex. 上司・同輩・部下との関係。

(1)-4 ミクロ組織論(その1-4):経営者は何に留意して採用を行うか?能力・性格・協調性?(70頁)
D イギリスの経営者に「何に留意して採用を行うか」についてアンケートを行う。「能力(ability)・性格(character)・協調性(willingness to cooperate)」から選ぶ。一番は「性格」(積極性)、次いで「能力」、最後に「協調性」だった。
D-2 日本企業ではおそらく一番は「協調性」だろう。「組織文化」(企業文化)には、国ごとに差異がある。日本企業に共通の企業文化がある。

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