宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

安部悦生『文化と営利』「第7章」(その6):一般に《目的の体系》を「神話」と呼ぶなら、《利潤最大化という「目的」》あるいは《この世的(此岸的)=功利的な「目的」》の体系も「神話」だ!

2020-08-24 15:52:06 | Weblog
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅰ部 経営文化の理論的解明」「第7章 合理性モデルと新制度学派」(91-100頁)(その6)

(3)-10 一般に《目的の体系》を「神話」と呼ぶなら、《利潤最大化という「目的」》あるいは《この世的(此岸的)=功利的な「目的」》の体系も「神話」だ!(98-99頁)
P 個人主義的・功利主義的・合理主義的・効率主義的・適応主義的パラダイムへの挑戦として(社会学的)制度学派は誕生した。
《感想5》合理主義は安部氏が言うように「手段合理性」だ。だからいかなる「目的」にも合理性は仕える。だが、「合理性=効率性=適応モデル」としてのチャンドラー・モデル(93頁)において、「合理性」は単なる手段合理性ではない。チャンドラーの「合理性」は、利潤最大化を「目的」とする限りでの手段合理性だ。
《感想5-2》 (社会学的)制度学派は「単なる手段合理性」としての合理性を問題にしたのでなく、《利潤最大化を「目的」とする限りでの手段合理性》あるいは《この世的(此岸的)=功利的な「目的」にとっての手段合理性》だけを「合理性」と呼ぶことを批判したのだ。
《感想5-3》《利潤最大化という「目的」》あるいは《この世的(此岸的)=功利的な「目的」》あるいはそれら目的の体系と異なる目的の体系が「神話」である。「神話」は《あの世的(彼岸的)な「目的」》の体系だ。
《感想5-4》一般に《目的の体系》を「神話」と呼ぶなら、《利潤最大化という「目的」》あるいは《この世的(此岸的)=功利的な「目的」》の体系も「神話」だ。

P-2 (※《利潤最大化という「目的」》あるいは《この世的(此岸的)=功利的な「目的」》の体系を前提する)合理主義的立場においては意志決定者の《選好や効用》(※上記の目的の体系)は与件として定義され問題視されることがない。
P-3 これに対して社会学的新制度論は、活動主体自身を「問題視し説明しようとする視角を提供する。」(※つまり意思決定者=活動主体の《目的の体系》を問題視するということだ。)

(3)-11 行動の動因は、感情・理念・利害であるが、長期的に見て、人間社会は利害(合理性、効率性、※功利性、※適応性)に基づいて動いていく(99頁)
Q 社会学的新制度論は「アクターが・・・・損得の合理的計算よりも、《何がその場においてふさわしい行動であるか》を基準にして自らの行動を決定する」と主張する。(99頁)
《感想6》《何がその場においてふさわしい行動であるか》とは《目的の体系》とそれに仕える《手段合理性》を決定することである。《目的の体系》or《目的》は「短期的な」《感情》にもとづいて決定されることもあるし。「短期的・中期的な」《理念》に基づくこともある。そして《目的の体系》or《目的》の決定において最も長期的なのは《利害》である。

Q-2 安部氏が言う。「行動の動因は、感情・理念・利害であるが、長期的に見て、人間社会は利害(合理性、効率性、※功利性、※適応性)に基づいて動いていく。」(99頁)
Q-6 「新制度学派の認知論は、人間界における自然科学的な要素(客観性、※利害、※利潤最大化、※功利性、※適応)の過小評価を行っているように見える。」(99頁)

《感想6-2》安部氏は「利害・感情・理念」の3者からなる人間行動の枠組みを考えるべきだと言う。(91-92頁)これに関連する安部氏の議論は次の通り。
Cf.  (c)「利害」追求としての意思は、(a)「感情」、(b)「理念」追求と異なり合理的だ! 政治は、理念や理想を追い求めがちだが、経済は利害追求であり、「ウィンウィンの関係」も築けるし、「手段合理性」(=手段適合性=目的合理性)の追求であり、「先が読める」(※予測可能性)という点で健全だ。従って人間の「進化」(※民主主義的な最大多数の最大幸福、最終的にはすべての人間の幸福の実現に向かって進むこと)にとって有用だ。(44-46頁)
Cf.  (b)「理念(理想)」は非合理的、中期的だ。(Cf. (a)「感情」は非合理的、短期的だ。)なお(b)「理念」に基づく行動は旧来の用語でいえば「価値合理性」を持つと呼ばれる。(44-46頁)
Cf. 「意思」は、(a)感情、(b)理念、(c)利害の3要素から成り立つ!(c)「利害」追求としての意思が、(a)「感情」、(b)「理念」追求と異なり最も合理的だ!(44-46頁)

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