宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『サキ短編集』⑩ソフィ邸に召使の組合が二つでき、両組合が対立した!かくてシリアの大公をお迎えし「ビザンチン風オムレツ」でもてなすパーテイーが、滅茶苦茶になった!

2020-08-18 21:09:59 | Weblog
※サキ(Saki)、本名ヘクター・ヒュー・マンロー(Hector Hugh Munro)(1870-1916)、『サキ短編集』新潮文庫、1958年。

(10)「ビザンチン風オムレツ」
(a)ソフィ・チャトル=モンクハイムは富裕な一家の夫人だった。だが「富の分配」に関しては「進歩的」で、彼女は「社会主義者」だった。「社交界の集り」や「フェビアン協会の会議」で「資本主義の害悪」を痛罵した。
(b)だが彼女は(ア)資本主義機構が、おそらく自分の一生は持ちこたえるだろうと意識していた。(イ)ただし中年の「社会改良主義者」にとって彼らが注入した善が、死後も存続するだろうと思うことは慰めだった。
(c)ある春の夕方、ソフィ邸はシリアの大公を迎える準備をしていた。ソフィは良き社会主義者として社会的差別を非難し、王侯的階級の観念を軽蔑していた。だがどうせ存在するものなら、高貴なる等級の高貴なる見本が、自分のパーティーに出席することは、彼女にとって喜び且つ熱心に求めることだった。「罪を憎んで人を憎まぬ」寛容さだった。
(d) シリアの大公は「ビザンチン風オムレツ」が大好物であり、ソフィは今日のパーティーのため、パリからわざわざオムレツ専門家の料理人ガスペアを臨時に雇った。
(e)ところがこれを知って、この日、「家事向きの召使の組合」がストライキに入った。ソフィが理由を尋ねるとガスペアがオムレツ専門家になる前、従僕をしていて、2年前のグリムフォオド卿家の大ストライキの時、彼はスト破りだった。だからガスペアを解雇すべしということだった。
(f) ソフィは「家事向きの召使の組合」の主張を聞き入れ、オムレツ専門家のガスペアをクビにした。シリアの大公をともかくお迎えしなければならない。「ビザンチン風オムレツ」については何とか、うまく言い訳しようと考えた。ソフィは難事を切り抜けた。
(g)ところが30分ばかりして、パーティーの準備が整い、シリアの大公をお迎えするばかりになった時、今度は、「料理人の組合」がストライキに入った。(この組合は「家事向きの召使の組合」と異なる。)「料理人の組合」はガスペアの即時復職と組合に対する謝罪を求めた。
(h)かくて シリアの大公をお迎えしてのパーテイーは滅茶苦茶になり、ソフィは神経衰弱に陥った。彼女は社交界から18カ月引退した。再び昔の社交界に出入りし始めた時も、なお注意を要する状態だった。医者は「社交界の集まり」とか、「フェビアン協会の会議」というようなところへの出席を禁じた。ソフィ自身も、それらへの出席をもはや望まなかった。

《感想1》ソフィは「社会(改良)主義者」だったので、自分の邸(ヤシキ)の召使が労働組合を作ることを許した。ところが一つの邸に組合が二つできたため、両組合が対立し、シリアの大公をお迎えしてのパーテイーが滅茶苦茶になった。
《感想2》かくてソフィは、「社会(改良)主義者」であることをやめた。つまり「フェビアン協会の会議」に出席することをやめた。
《感想3》なおフェビアン協会(Fabian Society)は1884年、ロンドンで設立された。イギリスの社会主義知識人による運動団体だ。緩やかな変革をめざす社会改良主義で、マルクス主義の暴力革命を否定する。

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浮世博史『もう一つ上の日本史』①縄文時代は「高度な文明」か?②新嘗祭は「連綿と行われている」わけでなく「200年以上」の中断がある!

2020-08-18 09:06:54 | Weblog
※浮世博史(ウキヨヒロシ)「もう一つ上の日本史、『日本国紀』読書ノート、古代~近世篇」(2020年)「古代~大和政権誕生」の章(27-42頁) 

「古代~大和政権誕生」の章(27-42頁)
(1)縄文時代にも農耕の萌芽はあった(29-30頁)
C 「(縄文時代の文明は)世界有数の高度なものといえる」と百田氏が言うが、それは無理だろう。(縄文土器の「美」が高度のものとは言える。しかし文字もない、学問もない、壮大な建築物もない、都市もないなど、縄文時代の文明が世界有数の高度なものとは言えない。)実際彼自身「当時の世界では、日本の縄文時代の文明よりもはるかに高度な文明が誕生していた」と述べている。
C-2 縄文時代は、紀元前約1万年から前400年くらいまでだ。なお縄文時代には「本格的な農耕や牧畜は行われていなかった」(百田)が「農耕の萌芽はあった」(浮世)。

(2)新嘗祭は、建国から現在まで連綿と行われている祭祀ではない(30-31頁)
D  「建国から」(百田)とあるが、新嘗祭(ニイナメマツリ)は、確認できるの「宮中祭祀としては平安時代に確立されている」(浮世)ということのみだ。
D-2 「連綿と行われている」(百田)とあるが、「15世紀の後花園天皇の時の記録を最後に、17世紀末の東山天皇の時に復活するまで、新嘗祭は200年以上行われていない」(浮世)。

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浮世博史『もう一つ上の日本史』:百田尚樹『日本国紀』は「小説家による日本史」だ(浮世)!「日本は、すばらしい国で、すばらしい人たちが活躍してきた歴史がある」(百田)!

2020-08-18 09:03:06 | Weblog
※浮世博史(ウキヨヒロシ)「もう一つ上の日本史、『日本国紀』読書ノート、古代~近世篇」(2020年)  

「はじめに」:「小説家による日本史」!
A 百田尚樹『日本国紀』(2018)は「小説家による日本史」だ。「戦後の歴史教育に対する、一般的な日本人の不満」が凝縮された本だ。

「序章」:「日本は、すばらしい国」!
B 百田尚樹『日本国紀』は要約すると、「日本は、すばらしい国で、すばらしい人たちが活躍してきた歴史がある。しかしGHQの占領政策、戦後の教育によってその歴史がゆがめられた」と述べる。
B-2 同書、第9章以下は次のようにも要約できる。「侵略ではなく自衛」であった戦争が、「GHQ・戦後の教育」によって、「自衛ではなく侵略」にされてしまった。

《感想1》「日本の国に生まれたことをどう考えるか」という問題が根本にある。言い換えれば、「『日本人』である以前に、『人』(人類)だと考えるかどうか」の問題だ。
《感想2》私見では、「日本人」は、「日本人」であって同時に「人」だ。「人」の立場から「日本人」を見ることも必要だ。もちろん「日本人」としての「お国自慢」はある。
《感想3》日本が「すばらしい国」かどうかは、「人」の立場から見ると、簡単には言えない。例えば、こんなに非正規労働者がいて生活が大変では「すばらしい国」とはない。だが「すばらしい国」にしたいと思うのは、この国に住む限り「日本人」として、また「人」として当然だ。
《感想4》「GHQの占領政策」のもとで「日本国憲法」が制定されたのは確かだが、この「憲法」に大多数の国民が賛成したのも確かだ。
《感想4-2》戦争はこりごりであり、原爆を落とされ、多くの者が空襲で焼き殺され、多くの兵士が餓死しまた無駄に死ぬような愚かな戦争指導をした戦争指導層への怨みがあった。戦争を防ぎ、勝手なことを指導層にやらせない保障を、憲法は与えた。多くの国民はかくて賛成した。
《感想5》占領軍の裁判と別に、「国民法廷」を開設し、戦争指導者を、日本国民自体が断罪すればよかったのだ。だがその機会がなかった。残念だ。
《感想5-2》「一億総ざんげ」など、まやかしだ。「ざんげ」すべきは戦争指導層だ。
《感想5-3》だが多くの兵士が「戦地で」残虐な行為を行ったのも事実だ。一方で「命令にもとづく残虐行為」もあったし、他方で「兵士が状況の中で勝手にやった残虐行為」もあった。
《感想5-4》戦争は「殺し合い」だから、本来残虐だ。だから「戦争」開始を決定した戦争指導層に、残虐行為発生の最大の責任がある。
《感想6》「人類(人)」の歴史は「侵略」「征服」「奴隷化or二流市民化」「収奪」の歴史だ。残念だが、それが事実だ。
《感想6-2》その観点から見れば、朝鮮半島を日本が「植民地」化し、中国を「侵略」したのは事実だ。(「GHQの占領政策、戦後の教育」と関係ない。)相手の国民に恨まれて当然だ。「人類(人)」の観点から見れば、事実だ。
《感想6-3》当時は「帝国主義」の時代だった。英仏独伊米は帝国主義国であり、「侵略」「征服」「奴隷化or二流市民化」「収奪」を行った。日本も後進の「帝国主義」として「侵略」「征服」「奴隷化or二流市民化」「収奪」を行った。それが時代の事実だ。
《感想7》日本は敗戦し、また今や「帝国主義」の時代が過ぎ、日本について言えば、「日中平和条約」「日韓基本条約」で一応の、和解がなされた。今後は、日中、日韓が、「未来志向」でつきあっていくしかない。(日中韓は互いに隣国だ。)
《感想7-2》すでに現在のいずれの国民も大部分が戦争を知らない(直接には戦争責任がない)世代だ。それぞれの国民が属す「国」の関係の問題を上手に、互いに折り合い、受け入れ合って、憎み合わず、相互理解・相互信頼のもとでつき合って行くことも可能だ。そうした道を、慎重に探していくべきだ。
《感想7-3》今は、日中関係、日韓関係がすっかりこじれてしまった。残念だ

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