〈検証Ⅸ-3〉宮崎口蹄疫:安愚楽牧場は厳罰に処されるべきである

茶色字:県検証委報告書からの引用

@県検証委報告書が示す安愚楽牧場の違法性                                                                                                                                                  県検証委報告書は、7例目安愚楽児湯第7牧場について、「当該農場では4月8日以前に口蹄疫の症状が出て感染が拡がり、翌9日以降にまん延状態になったと推定することが妥当である。」と記した。安愚楽牧場の通報は4月24日であり、少なくとも半月以上も感染の疑いを隠蔽していた可能性が、あらめて極めて濃厚となった(家伝法第13条「通報義務」・第14条「隔離義務」違反)。何故当局は、安愚楽牧場に対して、速やかに強制立入調査(捜査)をしないのか。当局と安愚楽との関係を疑われても仕方がないのではないか。特に7例目児湯第7牧場の従業員(当時)に対しては直接聞き取り調査を行うべきなのに、当局はいまだにそれさえも行っていない。経営側の主張だけでは調査として不十分であることは明白である。

県検証委報告書は「最初の感染経路、初発の原因究明」の中で、次のように記した。                                                                                                                                                                                                国の疫学調査に対して、地元では、7例目の大規模な企業経営牧場が初発ではないかとの意見が圧倒的に多かった。地元農家等の間では、この農場に関してさまざまなことが噂されており、事実関係が明らかにならないと、今後安心して再開できないとの声も強かった。

この農場の管理獣医師は、関連する13の農場を一括して管理しており、7例目の農場には3月から4月にかけては全く行っていないと説明している。家畜の症状は従業員から電話で聞いて、投薬等の処方を指示していたとのことであった。

このように、この農場においては、さまざまな問題が露見しており、初発であったかどうかは断定できないとしても、この農場の社会的責任はきちんと問われるべきとの意見もあった。

安愚楽牧場の飼養衛生管理は極めて杜撰だった。異常畜で尋常ならざる状況になった4月上旬、本社から専務の増渕進氏が宮崎入りし総指揮をとった。牧場長ら従業員が胃腸薬や抗生物質を大量投与していたとされ、児湯地区13農場全体(1万5千頭)を一人で担当していた専属の森山良幸獣医師は、そのような状況にもかかわらず、3月から4月にかけては第7牧場を訪問していない。

また、初発農場についての【検証結果】として県検証委報告書は次のように記した。                                                                                                                         ・7例目の農場については、当該農場を経営する会社からの聞き取りによれば、4月22日に農場の獣医師が発熱、食欲不振、流涎、びらんを確認したものの、蹄に水疱が見当たらなかったために経過観察することとし、その旨を担当役員に報告。翌23日に症状を呈する牛が増加したことや、周辺農場に感染が拡大し始めたことから担当役員が本社と協議し、県に報告を行うこととしたが、夜遅かったため、翌朝連絡することとしていたとのことである。

そして翌24日に、家保から当該農場に対して、他の農場の関連農場として立入検査を行う旨の電話連絡があり、この電話の中で、初めて農場側から家保に異常の報告がなされた。この時の家保の立入検査では、全体の半分程度の牛房で流涎を確認し、検体を採取している。

家保による立入検査、あるいは殺処分の際には、農場側から上記以外の内容の申し出はなかったが、その後の調査で、4月8日の時点で食欲不振を示した牛が確認されたこと、4月9日から17日まで多数の牛に食欲改善薬を投与していること、さらに、4月17日に農場全体に熱、鼻水等の風邪の症状を示す牛が出たため、4月18日から20日にかけて全頭に抗生物質を投与したことが明らかになった。こうした状況から、国の疫学調査は4月8日を発症日と推定している。

・しかし、4月8日の症状を口蹄疫の症状とするならば、翌9日に同一棟の数十頭の牛に食欲不振改善薬を一斉投与していること、その後数日のうちに同一の症状を呈する牛が爆発的に拡大していたこと、そして、今回の口蹄疫は発生初期においては伝染力が弱かったとされていることを併せて考えれば、作業日誌や診療記録上からは明らかになっておらず、また、従業員からの証言も得られていないものの(はた注:ジャーナリスト横田一氏、下記裁判の被告側は証言を得ている)、当該農場では4月8日以前に口蹄疫の症状が出て感染が拡がり、翌9日以降にまん延状態になったと推定することが妥当である。

・また、3月下旬に風邪、食欲不振等の症状を呈する牛がいたことは作業日誌等から明らかになっており、これらの症状が口蹄疫であったとの確証はないものの、当該農場の獣医師が一人で他の関連農場も任されていたために、管理が行き届いていなかったのではないかということも考えあわせれば、国の疫学調査が発症日として推定した4月8日より前に、当該農場で口蹄疫が発生していたと推定することが妥当である。

@安愚楽牧場への強制立入調査(捜査)は急務である                                                                                                                   以上のように、これまで裁判記録(原告:安愚楽牧場 被告:旬刊宮崎)やジャーナリスト横田一氏の取材記事等(記事1 記事2-1 記事2-2)で既に明らかになっていた内容の一部が、県検証委員会報告書でも確認された。6例目水牛農家に安易に初発冤罪を着せた国疫学調査チームは、この県検証委報告をどのように受け止めるのか。特にチーム長の津田知幸動衛研企画管理部長は、2010年12月8日衆議院農水委員会参考人質疑でも安愚楽寄りともとれる発言に終始していた。安愚楽児湯第7牧場の従業員には直接聞き取りせず、また、水牛農家・1例目・7例目(安愚楽)の全検体の抗体値等を公表しないままでは、疫学調査の公正性を疑われても仕方がない。現在の疫学調査チームは解体し、新たなチームを再編し、真実解明のために、何よりもまず安愚楽牧場を強制立入調査することが必要である。

@安愚楽牧場は獣医師法違反で処罰されるべきである                                                                                                                              県検証委報告書は「検証で明らかになった7例目の農場等における獣医師の診療の状況は、家畜伝染病予防法のみではなく、獣医師法に照らしても問題がある疑いがある。国及び県としては、事実関係をさらに調査するとともに、各種法律の規定及び趣旨に反する部分があれば、早急に改善するよう強く指導する責務がある。」と記したが、「改善指導」ではなく、獣医師でない者による投薬については獣医師法第18条違反により当然処罰すべきである。また、当局は、獣医師法第21条に基づく安愚楽児湯第7牧場の診療簿(治療報告書)の提出を求めこれを公開すべきである。

@安愚楽牧場は家伝法違反および補助金適正化法違反で厳罰に処されるべきである                                                                                        今回の口蹄疫における安愚楽牧場への手当金等は、100億円超にものぼる。もちろんその原資は国民の税金である。安愚楽牧場への手当金等の交付は、家伝法に基づき当然停止・返還請求すべきである(家伝法第58条「手当金」)。即刻、強制調査(捜査)し、犯罪事実が確定すれば補助金適正化法に基づき刑事罰に処すべきである(五年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金、又はこれを併科)。もし仮に、安愚楽牧場に対して県が「指導」という無意味なパフォーマンスに留めるのであれば、県と安愚楽とは完全に癒着しているということになるのではないか。

なお安愚楽牧場については7例目安愚楽児湯第7牧場以外の県内直営農場についても、感染隠蔽が疑われる数々の地元情報があることも申し添える。  

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