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「ポーラ・シェア:Serious Play」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

ギンザ・グラフィック・ギャラリー
「ポーラ・シェア:Serious Play」 
2019/2/4~3/25



ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催中の「ポーラ・シェア:Serious Play」を見てきました。

アメリカのグラフィックデザイナーのポーラ・シェア(1948~)は、音楽のアルバム・カバーをはじめ、企業広告、ロゴデザイン、環境デザインなど、幅広い分野で活動して来ました。



そのシェアの作品がgggのスペースにまとめてやって来ました。かつてニューヨークで一大旋風を巻き起こしたザ・パブリック・シアターのポスターから、シティバンクなどのロゴ、タイポグラフィーからブックデザインなどがずらりと揃っていました。



とりわけ数字のポスターに魅せられました。順に1、2、3とデザインしていましたが、遠目で見るのと、近づいて目を凝らすのでは、開けて見える景色が全く異なっていました。



例えば1では、ご覧のように、無数の小さな1のデザインが連なっていて、しかも1つとして同じ1はありませんでした。



7も面白いのではないでしょうか。遠目では、やや薄いインクによって、ポスター全体に7の数字が描かれているように見えました。



しかし近づけば、実に小さな7が、無数に斜め方向へ重なり合っていて、全体の大きな7を象っていることが分かりました。まるで7が雪崩を打つようにつながっていて、もはや殴り書きのようにも映るかもしれません。



さらに英語のPのポスターも忘れられません。Pの文字を描くのは、電話帳と思しき、無数のアドレスと番号でした。これも実物のポスターに目を凝らしてみないと良く分かりません。



こうした一連のポスターとは別に、1つのシリーズとも呼べるのが、シェアが20年前から取り組んでいる、地図をモチーフとした作品でした。



ニューヨークやロンドン、それにパリや東京といった大都市のほか、さらに世界を俯瞰したようなアフリカやアメリカの地図が描かれていましたが、これらも先の数字の作品と同じように、無数の文字、つまり地名や駅名などが細かに記されていました。



カラフルな色使いも魅力の1つかもしれません。網の目のように張り巡らされた地名を辿りながら、さも各地を旅するかのようにして見入りました。



なおタイトルの「Serious Play」(シリアス・プレイ)、つまり「本気の遊び」とは、シェアにとってのデザイナーとしての目標の言葉を意味するそうです。そこで彼女は「本気」が、「まじめ」、「ありきたり」に移行した時点で、「遊び」が消えてしまい、次の境地を探す旅がはじまるとしています。



その自由でかつ鮮烈なデザインは、ともすると1人のデザイナーによるとは思えないかもしれません。まさに常に次を見据えて制作するシェアの才能、ないし旺盛な創作力に感心させられました。



一部にウィーン分離派やロシア構成主義の引用もあるのでしょうか。ともかくビジュアルとしてインパクトのあるポスターばかりで、お気に入りを見つけるのに、さほどの時間はかかりませんでした。


3月25日まで開催されています。

「ポーラ・シェア:Serious Play」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー
会期:2019年2月4日(月)~3月25日(月)
休廊:日曜・祝日。
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅から徒歩5分。JR線有楽町駅、新橋駅から徒歩10分。
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「ポーラ ミュージアム アネックス展2019 捨象と共感」 ポーラミュージアムアネックス

ポーラミュージアムアネックス
「ポーラ ミュージアム アネックス展2019 捨象と共感」
2019/2/22〜3/17



ポーラミュージアムアネックスで開催中の「ポーラ ミュージアム アネックス展2019 捨象と共感」を見てきました。

ポーラ美術振興財団によって、過去に在外研修を受けた若手芸術家を紹介する「ポーラミュージアムアネックス展」も、14回目を迎えました。

今回の参加メンバーは、佐伯洋江、中嶋浩子、松岡圭介、滝沢典子の4名のアーティストで、同じフロアにて、それぞれ個展の形式で作品を発表していました。



色彩の幾何学的なパターンが目に飛び込んできました。それがテキスタイルを学び、ドイツ、フィンランドに研修した中嶋浩子で、「数学的公理や数理モデルなどの形態を再構築し、模様」(解説より)に表した作品でした。



ストライプを描く三角形が、幾重にも連なっていて、手前にはアクリルと思しき、透明な板が吊り下がっていました。いずれも三角形や四角形にカットされていて、空調によるのか、僅かに揺れていました。



昨年、イタリアでの1年間の研修を終えたのが、松岡圭介で、黒壇やメープル材などの木を用いたオブジェを展示していました。



「RIFGIATO-Babele」に目を引かれました。黒い頭部を象った作品で、一見、陶かと思いきや、ガラスで作られていました。なお、松岡圭介は、2016年の「18th DOMANI・明日展」にも出展していました。独特な有機物を表したような、木彫に見入ったことを覚えています。



そのDOMANI展に、同じく参加していたのが佐伯洋江でした。ここではシャープペンシルや色鉛筆による紙の作品を出展していて、花とも、何とも言い難い不思議なモチーフを細かな線にて表していました。



しかしながら、今回は線の展開よりも、面的な広がりを見せていたかもしれません。とするのも、鉛筆だけではなく、墨を散らしては、まるで大気か雲の靡くような光景を描いていたからでした。



かつては、時に鋭く、また滑らかな線で、植物的なモチーフを描いた作品が多く見られましたが、また新たな変化を示していたのかもしれません。どこか幽玄な世界が広がっていました。



「ポーラ ミュージアム アネックス展2019 創生と技巧」
会期:3月20日(水)〜4月14日(日)



なお第14回の「捨象と共感」を終えると、3月20日からはメンバーを入れ替え、「創生と技巧」と題した、第15回のポーラミュージアムアネックス展がはじまります。あわせて見に行くのも良さそうです。


3月17日まで開催されています。

「ポーラ ミュージアム アネックス展2019 捨象と共感」 ポーラミュージアムアネックス@POLA_ANNEX
会期:2019年2月22日(金)〜3月17日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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2019年3月に見たい展覧会【へそまがり日本美術/東寺/百年の編み手たち】

2月中頃より急に暖かくなり、日によっては春のような陽気を見せています。地元近辺でも河津桜が咲き揃ってきました。

先月に見た中では、江戸の奇想のオールスターの優品を集めた「奇想の系譜展」(東京都美術館)をはじめ、世界を巡る写真の魅力に引かれた「石川直樹展」(東京オペラシティアートギャラリー)、それに未完の建築を美術家にも着目して紹介した「インポッシブル・アーキテクチャー」(埼玉県立近代美術館)などが印象に残りました。

3月もたくさんの展覧会がスタートします。今月に見たいものをリストアップしてみました。

展覧会

・「闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s」 アーツ前橋(~3/24)
・「VOCA展2019 現代美術の展望」 上野の森美術館(3/14~3/30)
・「雨ニモマケズ(singing in the rain)」 BankART Station+R16スタジオ(3/1~3/24)
・「生誕130年記念 奥村土牛」 山種美術館(~3/31)
・「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」 高崎市美術館(~3/31)
・「ほとけをめぐる花の美術」 根津美術館(~3/31)
・「屏風をひらけば―神奈川県立歴史博物館所蔵の屏風絵」 神奈川県立歴史博物館(3/2~3/31)
・「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」 東京都庭園美術館(~4/7)
・「太田の美術vol.2 生誕100年 飯塚小玕齋展―絵画から竹工芸の道へ」 太田市美術館・図書館(~4/7)
・「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」 東京ステーションギャラリー(~4/14)
・「高野山金剛峯寺 襖絵完成記念 千住博展」 そごう美術館(3/2~4/14)
・「ラリック・エレガンス 宝飾とガラスのモダニティ」 練馬区立美術館(~4/21)
・「両陛下と文化交流―日本美を伝える」 東京国立博物館(3/5〜4/29)
・「The 備前―土と炎から生まれる造形美」 東京国立近代美術館工芸館(~5/6)
・「志賀理江子 ヒューマン・スプリング」 東京都写真美術館(3/5~5/6)
・「華ひらく皇室文化」 泉屋博古館分館(3/16~5/10)
・「春の江戸絵画まつり へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」 府中市美術館(3/16~5/12)
・「工事中!〜立ち入り禁止!?重機の現場」 日本科学未来館(2/8〜5/19)
・「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」 国立西洋美術館(~5/19)
・「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」 国立新美術館(3/20~5/20)
・「六本木クロッシング2019展:つないでみる」 森美術館(~5/26)
・「イメージコレクター・杉浦非水展」 東京国立近代美術館(~5/26)
・「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」 東京国立近代美術館(3/12~5/26)
・「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」 東京国立博物館(3/26~6/2)
・「ラファエル前派の軌跡展」 三菱一号館美術館(3/14~6/9)
・「ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ」 DIC川村記念美術館(3/23~6/16)
・「百年の編み手たち-流動する日本の近現代美術」 東京都現代美術館(3/29~6/16) 
・「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」 21_21 DESIGN SIGHT(3/15~6/30)

ギャラリー

・「ポーラ ミュージアム アネックス展2019-捨象と共感」 ポーラ ミュージアム アネックス(~3/17)
・「ポーラ・シェア:Serious Play」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~3/25)
・「光るグラフィック展2」 クリエイションギャラリーG8(~3/28)
・「天明屋尚 国津神」 ミヅマアートギャラリー(~3/30)
・「内海聖史展ーやわらかな絵画」 上野の森美術館ギャラリー(3/14〜3/30)
・「バック・トゥ・ザ江戸絵画-若冲・蕭白・蘆雪・白隠-」 加島美術(3/21〜3/31)
・「ピエール セルネ & 春画」 CHANEL NEXUS HALL(3/13~4/7)
・「奥山由之 写真展:白い光」 キヤノンギャラリーS(3/7~4/15)
・「吉田謙吉と12坪の家―劇的空間の秘密」 LIXILギャラリー(3/7~5/25)
・「イームズハウス:より良い暮らしを実現するデザイン」 ギャラリーA4(3/19~5/30)

まずは恒例の春の江戸絵画まつりです。府中市美術館で「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」がはじまります。



「春の江戸絵画まつり へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」@府中市美術館(3/16~5/12)

これは例えば「きれい」などで括れない、不格好や不完全な、言わばヘタウマとも呼べる作品に注目して日本美術を俯瞰するもので、中世の禅画から江戸の奇想、さらには近代の洋画など、約140点が展示されます。


既に特設サイトをはじめ、出展リストも公開されていますが、会期中に1度、大規模な展示替えがあります。前期チケットを持参すると後期は半額です。あわせて見に行きたいと思います。



この春、一番注目の日本美術展となるやもしれません。東京国立博物館にて「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」が開催されます。

「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」@東京国立博物館(3/26~6/2)

真言宗の総本山として信仰を集めた東寺には、古くより密教に関した様々な美術品が収められてきました。その寺宝を一堂に公開するのが「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」で、とりわけ講堂の21体からなる立体曼荼羅のうち、史上最多となる15体の仏像が出展されます。


いずれの仏像も全方位の360度から見られるように工夫されるそうです。かねてより仏像展示では定評のある東博だけに、また東寺で拝観するのとは違った迫力が体感出来るかもしれません。

約3年間にも及ぶ大規模改修工事がようやく終了しました。東京都現代美術館にて、「百年の編み手たち-流動する日本の近現代美術」が開催されます。



「百年の編み手たち-流動する日本の近現代美術」@東京都現代美術館(3/29~6/16) 

これは同館のコレクションを編集的な視点から紹介するもので、1910年代から現代へと至る作品が、3フロアの展示室全体を用いて公開されます。また本展と同時に、主に休館中の間に収集された新収蔵品を紹介する「MOTコレクション ただいま/はじめまして」も開催されます。全館規模でのコレクション展だけに、質量ともに見応えのある内容となるのではないでしょうか。


なお改修に際しては、サインシステム、さらにレストランやカフェも一新されるそうです。オープン初日の3月29日(金)は、入場が無料で、20時までの夜間開館も行われます。初日の夜も狙い目となるかもしれません。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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