都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「第22回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館
川崎市岡本太郎美術館
「第22回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」
2019/2/15~4/14

毎年恒例、現代美術作家を顕彰する「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」も、今年で22回目を迎えました。
応募総数は、昨年より大幅に減り、416点でした。うち専門家諸氏の選定を経て、入選を果たした25組の作家の作品が、川崎市岡本太郎美術館にて展示されています。

風間天心「Funetasia」 *岡本敏子賞
平成が終わりを迎えようとしている今、その時代を振り返るべく、葬儀の祭壇として設えたのが、風間天心の「Funetasia」でした。美術家でもありつつ、僧侶でもある作家は、葬儀を「振り返り、見つめ直し、別れを告げる」(解説より)場として捉え直し、時代としての平成の葬儀を執り行いました。

風間天心「Funetasia」
祭壇の両脇には、平成の終わりに際して、「手放したいもの」を入れるための「供養箱」がありました。それらは改元前の4月末、この祭壇とともに、お炊き上げがなされるそうです。一連のパフォーマンスも見どころかもしれません。

田島大介「無限之超大國」 *特別賞
田島大介は「無限之超大國」において、高層ビル群の連なる都市の光景を、超俯瞰的に描きました。白いパネルの一面に広がるのが、黒インクと丸ペンで描かれた高層ビルで、ほぼ隙間なく、ひたすら密に林立していました。

田島大介「無限之超大國」(部分)
中には多くのクレーンも立ち並んでいて、中国語と思しきビルの看板も垣間見えました。ただあくまでも架空の都市であり、そもそも構造からして現実的ではありませんでした。

田島大介「無限之超大國」(部分)
どこかビルの真上の空から覗きこんでいるかのようで、都市の中へ引き込まれていくような錯覚に陥るかもしれません。しばらく見入っていると、何やら足がすくむかのようでした。

本堀雄二「捨てる紙あれば、拾う神あり」
本堀雄二の「捨てる紙あれば、拾う神あり」も目を引きました。御堂に収まる薬師三尊像と十二神将によるインスタレーションで、いずれの素材も、打ち捨てられた段ボールでした。

本堀雄二「捨てる紙あれば、拾う神あり」
段ボールは細かに切り刻まれつつ、重なり合っていて、彫像は思いの外に精巧に作られていました。元々の使い古しの段ボールの色や文字が、そのまま残されている点も面白く感じました。

檜皮一彦「hiwadorome: type ZERO spec3」 *岡本太郎賞
岡本太郎賞を受賞した檜皮一彦の「hiwadorome: type ZERO spec3」が大変な迫力でした。うずたかく積まれたのは車椅子からなる彫刻で、周囲には強い光とリズミカルな音楽がひっきりなしに発せられていました。

檜皮一彦「hiwadorome: type ZERO spec3」 *岡本太郎賞
車椅子の彫刻は一部が可動していて、まるでSF映画に登場するロボットのようでもありました。また作家の檜皮は四肢に障害を持っていて、自らの身体を扱った映像の作品もあわせて展示されていました。身体性、あるいは人間と機械との関係なども、テーマに扱われているのかもしれません。

イガわ淑恵「民主主義キョウセイマシーン」
ランニングマシーンを用いた参加型の作品もありました。それがイガわ淑恵の「民主主義キョウセイマシーン」で、ランニングマシーンの前に、投票箱を模したボックスが置かれていました。

イガわ淑恵「民主主義キョウセイマシーン」
ここでは参加者がランニングマシーンに乗りながら、昨今の社会や政治問題について賛否を表明するもので、計5分、12問の設問が用意されていました。ともかくひっきりなしに問題が出題されていて、足元も揺らぎ、ゆっくり考える暇はまるでありません。とはいえ、そこに、日常や仕事に忙殺された中でも、難しい社会問題について考え続けて欲しいとした、作家のメッセージが込められていました。なお体験は会期中の土日、及び3月21日(木・祝)に限られます。参加ご希望の方はご注意下さい。(それぞれ10時から)

藤原史江「森羅万象」
大掛かりなインスタレーションが目立つ中、自然の光景を描いた藤原史江の「森羅万象」にも魅せられました。木や山、それに川などが落ち着いたトーンで表現されていましたが、素材を見て驚きました。

藤原史江「森羅万象」(部分)
とするのも木は枯れ枝、山は山の石、そして川はそれぞれ川の石で描いていたからでした。絵画と同時に、使われて磨り減った素材も展示されていました。

國久真有「BPM」 *特別賞
ちょうど私が出向いた日は、國久真有が公開制作を行っていました。毎年、「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」は、作家によるパフォーマンスが、度々、開催されています。それにあわせて見に行くのも良いかもしれません。

佐野友紀「つぎの時代にゆくまえに」
なおパフォーマンスのスケジュールについては、美術館の公式サイトに記載されています。あわせてご覧下さい。

馬嘉豪「子供国の軍隊」
会期中、3月31日までは「お気に入り作品を選ぼう」として、作品の人気投票が行われています。受付で配布される「選ぼうカード」の赤いシールにて、1人1票、気に入った作品に投票することが出来ます。当選結果は4月2日に発表されるそうです。
毎年、楽しみにしている展覧会ですが、今年も刺激的な作品に出会うことが出来ました。

井口雄介「Para-site-frame-work」
撮影も可能です。4月14日まで開催されています。
「第22回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館(@taromuseum)
会期:2019年2月15日(金)~4月14日(日)
休館:月曜日。3月22日(金)。
時間:9:30~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
「第22回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」
2019/2/15~4/14

毎年恒例、現代美術作家を顕彰する「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」も、今年で22回目を迎えました。
応募総数は、昨年より大幅に減り、416点でした。うち専門家諸氏の選定を経て、入選を果たした25組の作家の作品が、川崎市岡本太郎美術館にて展示されています。

風間天心「Funetasia」 *岡本敏子賞
平成が終わりを迎えようとしている今、その時代を振り返るべく、葬儀の祭壇として設えたのが、風間天心の「Funetasia」でした。美術家でもありつつ、僧侶でもある作家は、葬儀を「振り返り、見つめ直し、別れを告げる」(解説より)場として捉え直し、時代としての平成の葬儀を執り行いました。

風間天心「Funetasia」
祭壇の両脇には、平成の終わりに際して、「手放したいもの」を入れるための「供養箱」がありました。それらは改元前の4月末、この祭壇とともに、お炊き上げがなされるそうです。一連のパフォーマンスも見どころかもしれません。

田島大介「無限之超大國」 *特別賞
田島大介は「無限之超大國」において、高層ビル群の連なる都市の光景を、超俯瞰的に描きました。白いパネルの一面に広がるのが、黒インクと丸ペンで描かれた高層ビルで、ほぼ隙間なく、ひたすら密に林立していました。

田島大介「無限之超大國」(部分)
中には多くのクレーンも立ち並んでいて、中国語と思しきビルの看板も垣間見えました。ただあくまでも架空の都市であり、そもそも構造からして現実的ではありませんでした。

田島大介「無限之超大國」(部分)
どこかビルの真上の空から覗きこんでいるかのようで、都市の中へ引き込まれていくような錯覚に陥るかもしれません。しばらく見入っていると、何やら足がすくむかのようでした。

本堀雄二「捨てる紙あれば、拾う神あり」
本堀雄二の「捨てる紙あれば、拾う神あり」も目を引きました。御堂に収まる薬師三尊像と十二神将によるインスタレーションで、いずれの素材も、打ち捨てられた段ボールでした。

本堀雄二「捨てる紙あれば、拾う神あり」
段ボールは細かに切り刻まれつつ、重なり合っていて、彫像は思いの外に精巧に作られていました。元々の使い古しの段ボールの色や文字が、そのまま残されている点も面白く感じました。

檜皮一彦「hiwadorome: type ZERO spec3」 *岡本太郎賞
岡本太郎賞を受賞した檜皮一彦の「hiwadorome: type ZERO spec3」が大変な迫力でした。うずたかく積まれたのは車椅子からなる彫刻で、周囲には強い光とリズミカルな音楽がひっきりなしに発せられていました。

檜皮一彦「hiwadorome: type ZERO spec3」 *岡本太郎賞
車椅子の彫刻は一部が可動していて、まるでSF映画に登場するロボットのようでもありました。また作家の檜皮は四肢に障害を持っていて、自らの身体を扱った映像の作品もあわせて展示されていました。身体性、あるいは人間と機械との関係なども、テーマに扱われているのかもしれません。

イガわ淑恵「民主主義キョウセイマシーン」
ランニングマシーンを用いた参加型の作品もありました。それがイガわ淑恵の「民主主義キョウセイマシーン」で、ランニングマシーンの前に、投票箱を模したボックスが置かれていました。

イガわ淑恵「民主主義キョウセイマシーン」
ここでは参加者がランニングマシーンに乗りながら、昨今の社会や政治問題について賛否を表明するもので、計5分、12問の設問が用意されていました。ともかくひっきりなしに問題が出題されていて、足元も揺らぎ、ゆっくり考える暇はまるでありません。とはいえ、そこに、日常や仕事に忙殺された中でも、難しい社会問題について考え続けて欲しいとした、作家のメッセージが込められていました。なお体験は会期中の土日、及び3月21日(木・祝)に限られます。参加ご希望の方はご注意下さい。(それぞれ10時から)

藤原史江「森羅万象」
大掛かりなインスタレーションが目立つ中、自然の光景を描いた藤原史江の「森羅万象」にも魅せられました。木や山、それに川などが落ち着いたトーンで表現されていましたが、素材を見て驚きました。

藤原史江「森羅万象」(部分)
とするのも木は枯れ枝、山は山の石、そして川はそれぞれ川の石で描いていたからでした。絵画と同時に、使われて磨り減った素材も展示されていました。

國久真有「BPM」 *特別賞
ちょうど私が出向いた日は、國久真有が公開制作を行っていました。毎年、「岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」は、作家によるパフォーマンスが、度々、開催されています。それにあわせて見に行くのも良いかもしれません。

佐野友紀「つぎの時代にゆくまえに」
なおパフォーマンスのスケジュールについては、美術館の公式サイトに記載されています。あわせてご覧下さい。

馬嘉豪「子供国の軍隊」
会期中、3月31日までは「お気に入り作品を選ぼう」として、作品の人気投票が行われています。受付で配布される「選ぼうカード」の赤いシールにて、1人1票、気に入った作品に投票することが出来ます。当選結果は4月2日に発表されるそうです。
【TARO賞】#第22回岡本太郎現代芸術賞 展ではご来館の皆様に参加していただく「お気に入りを選ぼう!」を開催中です!展示されている25作品の中からお気に入り作品に投票しよう!投票期間は3/31(日)まで♪結果は4/2(火)当館HP等でお知らせします。あなたのお気に入りは何位かな?是非ご参加ください! pic.twitter.com/D1dDQfr3gp
— 川崎市岡本太郎美術館 (@taromuseum) 2019年2月19日
毎年、楽しみにしている展覧会ですが、今年も刺激的な作品に出会うことが出来ました。

井口雄介「Para-site-frame-work」
撮影も可能です。4月14日まで開催されています。
「第22回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館(@taromuseum)
会期:2019年2月15日(金)~4月14日(日)
休館:月曜日。3月22日(金)。
時間:9:30~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大・高生・65歳以上500(400)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*常設展も観覧可。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約20分。向ヶ丘遊園駅南口ターミナルより「溝口駅南口行」バス(5番のりば・溝19系統)で「生田緑地入口」で下車。徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )