「日本の美術館名品展」(Vol.1・レクチャー) 東京都美術館

東京都美術館台東区上野公園8-36
「美連協25周年記念 日本の美術館名品展」
4/25-7/5



国内の公立美術館より選りすぐりの名品、全220点が集います。東京都美術館で開催中の「日本の美術館名品展」へ行ってきました。

有り難いことにもご縁があって、展示を拝見するに先立ち、東京都美術館の主任学芸員、中原淳行氏のお話を聞くことが出来ました。まずはその内容を本エントリでまとめます。鑑賞の参考にしていただければ幸いです。

美術館連絡協議会(美連協)とは]



・1982年に公立美術館を結ぶ組織として、読売新聞、日本テレビなどの呼びかけによって出来た横断的ネットワーク。
・初代理事長は、美術評論家であり、京近美の館長もつとめた河北倫明氏。現在の理事長は世田谷美術館館長の酒井忠康氏である。
・加盟館は北海道から沖縄まで全124館。巡回、共催展の企画、学芸員の業績研究の公開、また海外への派遣研修(一ヶ月から三ヶ月)などの事業を行っている。

[日本の美術館名品展の成り立ち]

・2007年に美連協が創立25周年を迎えたことを記念して企画された。
・こうした名品展の企画は、たとえば雑誌などの誌上特集としてはあったが、実際の展示で行われたことはなかった。=初の試み。
・各館の所蔵品の状況も配慮して、絵画だけでなく、写真や工芸まで幅広く集めている。
 →各美術館推薦の数点を持ち寄る。=『国内美術館総名品展』
・加盟館124館うち100館よりの出品。一部の加盟館学芸員からはこうした名品展に対しての懐疑的な指摘もなされたが、結果的に努力は報われた内容になったと自負している。 



[本展の内容と意義]

・総勢220点。相当のボリューム感。反面として手狭な都美ではタイトな展示状況となった。(展示設営時間も通常の数倍かかっている。)
 →そのため異例とも言える「展示替え」を途中に挟んでいる。
・名品を集めながら、西洋、そして日本の美術史を辿ることが可能。
・名品展と言えども、コンセプトのない、単なる「陳列」にならぬよう最大限配慮している。
・作品の持つ力を結集させる。また個々の作品をある程度の時代などで括って展示することで、その制作背景や時代性を浮かび上がらせる。
・都美の集客力と宣伝効果
 →地方の美術館は人の集まらない状況が続いているが、東京で紹介することで、観客の興味をある程度そちらへ向けることが出来る。
・キャプション、また図録解説とも所蔵館の学芸員が書き下ろしている。
 →あえて統一された規格を用いないことで、各館の生のメッセージがダイレクトに観客へ伝わるようになっている。
・今回は名品展という形だが、またテーマを変えて次回以降にも繋げていきたい。
 →今回集う名品も「氷山の一角」に過ぎない。



[見てほしいポイント]

・ジャンルと時代の多様性
 西洋と日本。油彩と日本画。そのバリエーション。差異など。
・お気に入りの一枚
 全200点超の作品から「お気に入りの一枚」を見つけて欲しい。
・各美術館への関心
 通常、キャプションの最上段は「作品名」を記すが、今回は美術館名を書いている。作品を見て各美術館そのものに興味を持って欲しい。
・門外不出作品の公開
 痛みのある作品など、普段、所蔵館より出る機会の少ないものも展示されている。
・会場の雰囲気
 作品をビンテージコレクションとして捉え、壁面の色、照明など、デザイナーとも協力して、それを見せるに相応しい展示環境を整えた。

以上です。意外にもこれまでになかった『国内所蔵総名品展』にかける強い熱意を感じました。

Vol.2以降のエントリでは、私の思う見所の他、各ジャンル毎の「お気に入り」の作品などを挙げていく予定です。

*関連エントリ
「日本の美術館名品展」(Vol.2・全体の印象)/(Vol.3・マイベスト)

*展覧会基本情報*
名称:美連協25周年記念 日本の美術館名品展
場所:東京都美術館
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。
会期:2009年4月25日(土)ー7月5日(日)
時間:午前9時~午後5時(入室は午後4時30分まで)
休館:月曜休室(ただし4月25日~5月10日まで無休)
料金:一般1400円、学生1200円、高校生700円、65歳以上800円
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