「藤田桃子 - トネリコ・ユッグドラシル - 」 高橋コレクション 白金

高橋コレクション 白金港区白金3-1-15 2階)
「藤田桃子 - トネリコ・ユッグドラシル - 」
3/15-6/7



絵画よりただならぬ、異様な妖気を感じることなどそう滅多にありません。沖縄県立芸術大学出身の若手の日本画家、藤田桃子の個展を見てきました。

ともかく注目したいのは、横6メートル超、縦2メートル半の巨大な画面にそびえ立つ一本の大木を捉えた作品です。果たしてこれが木であるのかを確認するのが困難に思うほど奇怪でかつ、またそれ自体も動物であるかのような、黒々とした生々しい物体がど迫力の大きさで描かれていますが、その振り乱した髪の毛のような細密な線描はもちろんのこと、顔料に砂や貝、それに箔をまぶして出来上がった鱗状の重厚感のあるマチエールなど、不気味なモチーフを裏打ちする確かな画力もまた大変に魅力的です。幹や枝が激しくぶつかり合うかのように力強く、そして複雑に絡み合い、爛れた線や焼けこげたような色面が全てを浸食しながら沈殿する様子は、その静けさとともに一種の神々しささえたたえています。またもう一点、同じ色面による、いくつもの頭を抱えた、例えれば爬虫類系の幻獣ともいえるようなモチーフを描いた作品も見応え十分です。闇に潜むその獣に、今にも食われてしまうかのような恐怖感さえ感じました。

率直なところ、展示室中央の、金地を用いた一番大きな作品はあまり感じるものがありませんが、ともかくは上に挙げた二点を見るだけでも十分におすすめ出来る展覧会です。

絵にのみ込まれる感覚を是非味わってみて下さい。6月7日まで開催されています。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
ああ、 (KIN)
2008-04-12 01:30:27
妖気!確かに。
私は初め見た時は「苦手なタイプの絵か?」と思った
のですが、あの絵から発する何かに完全に取り込まれ
て、最後にはとりこになってました!
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-04-12 21:02:33
KINさんこんばんは。
部屋に入った瞬間は私も仰け反ると言うか、直感的にあまり好きでないなと思ったのですが、しばらく眺めているといつの間にかそのおどろおどろしい気配にのまれて見入ってしまいました。むせるような感覚ですね。

それにしてもあの大きさで緊張感が損なわれないのが、また見事だなと思います。再度拝見したいくらいです。
 
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