goo地図で見る東京の美術館の今と昔

先日、goo地図にて東京23区内の「昭和航空写真」が公開されましたが、それを使って各美術館や博物館の昔の姿をweb上で手軽に見ることが出来ます。

昭和22年、38年の二種ある「昭和航空写真」のうち、解析度の比較的高い昭和38年と現在を比べてみました。(左昭和38年、右現在。建物名をクリックするとgoo地図へ飛びます。)

 
東京国立博物館(上野)
本館、表慶館の姿は確認出来ますが、東洋館、そして現在の宝物館と平成館の姿を見ることは出来ません。ちなみに上野界隈では、昭和34年の西洋美術館、それに昭和36年にオープンした東京文化会館の様子も捉えられています。また東博より道路を挟んだ前にある建物は、現在の都美の前身、東京府美術館でしょうか。

 
江戸東京博物館(両国)
平成5年オープンの同博物館はもちろん存在しません。また隣接する国技館が同地に完成したのも昭和60年です。(それ以前には蔵前にあったそうです。)また昭和22年の光景を見ると、周囲の建物が非常に少ないことが分かります。空襲の惨禍より復興するのにはまだ時間が足りません。

 
東京国立近代美術館(竹橋)
谷口吉郎設計の美術館は昭和44年に建設されました。また当時、美術館の西にある工芸館は皇宮警察の寮として使われていたそうです。(昭和22年の写真だと、近衛師団の兵営地がまだそのまま残っていることが見て取れます。)ちなみにその北側に見える星形の建物は、昭和39年に開館した科学技術館です。まだ建設中です。

 
原美術館(北品川)
昭和13年竣工の、実業家原邦造の邸宅をそのまま使った美術館です。画像が暗いので少し分かりにくいのですが、今と同じく、弧を描く独特の外観を確認出来ます。

 
東京都庭園美術館(白金)
原美術館と同様、当時と変わらぬ姿を見せているのがこの庭園美術館です。昭和8年に完成し、朝香宮の邸宅として用いられていましたが、戦後に外務大臣公邸、迎賓館などに利用され、昭和58年に現在の美術館として一般に開放されました。また隣接する自然教育園が一般開放されたのは昭和24年のことです。都心の中の貴重な緑地として保存されています。

 
森美術館(六本木)
間違いなく同じ場所のはずですが、その面影は全くと言って良いほど残っていません。また現在のグランドハイアットの場所に見える建物群は何でしょうか。昭和22年では一面が緑に覆われています。

その他、他のいくつかの美術館に地図のリンクをはってみました。

大倉集古館(昭和22年の光景が今と別世界です。)

五島美術館(今も昔もそれほど変わりません。)

東京都写真美術館(かつてのビール工場を確認出来ます。ビール名がそのまま地名になったのはあまりにも有名です。)

東京オペラシティアートギャラリー(昔の写真に見える箱形の建物は何だったのでしょうか。)

東京都現代美術館(昭和22年、38年とも貯木場の点在する様子を見ることが出来ます。)

23区内の公開ということで、住んでいる地域の昔の様子を見られるという方も多いのではないでしょうか。私の自宅周辺も何とか地図の一番隅の方に確認出来ました。

「東京変貌 -航空写真に見るこの50年の東京 1958-2006」
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「山本修路 - 松景其之貳 - 」 ラディウム

ラディウム中央区日本橋馬喰町2-5-17
「山本修路 - 松景其之貳 - 」
4/3-26



松や岩をモチーフとした作品で知られている(公式ブログより。)という、山本修路(1979~)の個展です。山水南画風の奇岩に囲まれた光景が、個々に分割化されたミニマルな絵画によってインスタレーション的に表現されています。

あたかも高々とそびえ立つ奇岩奇石に囲まれているかのような空間を見るのは、2階展示スペースにおける、一個の岩のオブジェに誘導されて並んだ約10点ほどの岩山の絵画群です。抜けるように鮮やかなブルーの空を背景に、石膏で何層にも塗り固められた岩の描写が、まさに林立する高山を下から眺めたかのような光景にて示されています。そしてその岩にちょこんと小さく描かれているのが、小さく、また一本ずつ侘しく生える松です。導入の岩のオブジェの先端部にも松が横へ平べったく伸びていますが、それがこれらパネル上の岩にも同じように群れています。また、一枚一枚のパネルの大きさと形がちょうど一般的な掛軸画に近いせいか、その岩山の光景からまさに冒頭でも触れた山水画の様相を連想することが出来ました。たとえて言えば、谷文晁の描く奇岩を限りなく抽象化し、それを分けて並べたような光景です。

1階のスペースでは、深い闇に沈み込んだ黒光りする岩山の作品を見ることが出来ます。上下二層、奥行きの増したレントゲンの新しい空間を効果的に用いた展示です。

ちなみに上記に引用したブログにも記載がありますが、彼の新作が今月末にオープンする十和田市現代美術館内に恒常的に設置されるそうです。美術館サイトにてその場所、及び作品を確認することが出来ました。

今月26日までの開催です。
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「近代日本画と洋画にみる対照の美」(前期) 泉屋博古館分館

泉屋博古館分館港区六本木1-5-1
「近代日本画と洋画にみる対照の美」(前期)
3/15-6/8



館蔵の近代日本画と洋画を概観します。泉屋博古館分館で開催中の「近代日本画と洋画にみる対照の美」へ行ってきました。

出品作家は以下の通りです。

日本洋画:浅井忠、熊谷守一、坂本繁二郎、梅原龍三郎、岸田劉生、鹿子木孟郎、藤島武二など。
日本画:橋本雅邦、竹内栖鳳、東山魁夷、下村観山、富岡鉄斎、小林古径など。
西洋画:ジャン=ポール・ローランス、クロード・モネ(日本洋画に影響を与えたという観点より出品。)

タイトルに「対照の美」とあり、また展示でも例えば「花鳥画対静物画」や「美人画と肖像画」、それに「風景を描く(日本画、洋画)」など、いくつかのテーマに沿った章立てがなされていますが、その割には各々の特質などが浮かび上がってくる内容というわけでもありません。むしろ表題の示す場所とは別個の、館蔵の日本人画家による洋画、日本画の名品展という趣きも感じられました。とは言え、良品が揃っているのは事実です。まずは肩の力を抜いて上記の作家の絵画を堪能してきました。



惹かれた作品を挙げていきます。浅井忠と言えば油彩画のイメージがありますが、今回は珠玉の水彩、「グレーの森」(1901年。前期展示。)に魅力を感じました。水辺に反射する木立が瑞々しく表され、葉の緑が控えめな美感をたたえています。また同じく『風景を描く(洋画)』のセクションからは、私の一推しの画家、藤島武二の「室戸遠望」(1935年。通期展示。)を是非挙げておきたいところです。輝かしい青みをたたえた海原があたかも粘土を塗り固めたようなマチエールにて示され、白波とせめぎあう岩場が海面から迫出してくるように力強く配されています。それに海の青、岩の茶色、そして波の白のどこか毒々しいまでの濃厚な海景に対し、上部の空におけるうっすらと水色に白んだ描写が対比的でした。海をこれほど厳格な様子で表した作品もそうないのではないでしょうか。

  

日本画でおすすめなのは、以下の二点、竹内栖鳳の「禁城松翠」(1928年。前期展示。)と小林古径の「人形」(1939年。前期展示。)です。前者ではその堀を張る水が驚くほど透明感のある色彩で示され、後者では黒いレースを纏った人形がまさに貴婦人の様子で凛と佇んでいます。また禁城における素描的な石垣へ迫出すたらし込みの美しい松の描写や、人形での折重なるレースに浮き上がった花々の細かな表現にも目を奪われるものがありました。かの貴婦人はこの後どこへお出ましになるのでしょうか。この上品さはまさに古径ならではの味わいと言えそうです。

最後に目にとまったのは、今月末よりブリヂストン美術館で回顧展も始まる、岡鹿之助の「三色スミレ」(1977年。通期展示。)でした。沈み込むような青みを有する、クレヨンと見間違うような柔らかいタッチに包まれているのは、花瓶よりけなげに突き出すスミレの三姉妹です。それぞれがどこか誇らし気に花開きながら、仲睦まじく一つの花瓶におさまっています。花に慈愛を見る作品でした。

展示作の約半数ほどが前後期で入れ替わります。機会があれば後期展示も見に行きたいです。(前期:~4/27、後期:4/29~6/8)

静かな環境で絵を楽しめる展覧会です。6月8日まで開催されています。
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「谷口浩 写真展 - ただ、それがある - 」 FOIL GALLERY

FOIL GALLERY千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビル201)
「谷口浩 写真展 - ただ、それがある - 」
3/28-4/18



日常の何気ない情景が、独特の無機的な『白』の空間に切り取られています。1978年生まれの写真家、谷口浩の画廊初個展へ行ってきました。

谷口の写真から見出される特徴を一言で表せば、対象の事物だけでなく、例えばそれを包み込む空気までが濾過されたとも言えるような、極めてピュアな清潔感です。水を張った洗面所に一個のトマトを浮かべた光景や、排水孔を見下ろしながらバスタブを捉えた作品、それに花柄のボールに落とされた一つの新鮮な卵などが、眩しいばかりの白を基調とした横長のワイドな画面に静かに写し出されています。何かをなぞるかのように差し出された両手は、まるで無菌室で徹底的に浄化された一つのオブジェです。ここには一切の不純物が存在しません。

うっすらと白んだ緑色のもみじの葉からは、その生命力が失われていくかのような、朽ち果てていくものの儚さを感じました。何の変哲もない蛍光灯を写した作品など、日常で影を潜める半ばトマソンのような存在に瞬間的な美意識を見ることが出来ます。

「ただ、それがある/谷口浩/フォイル」

4月18日までの開催です。なお会期中は無休です。(フォイルギャラリーは、恥ずかしながら先日の「101アートフェア」で初めて見知った画廊です。馬喰町のラディウムに近い場所にあるので、これからは定点観測していきたいと思います。)

*関連リンク
FOIL
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「藤田桃子 - トネリコ・ユッグドラシル - 」 高橋コレクション 白金

高橋コレクション 白金港区白金3-1-15 2階)
「藤田桃子 - トネリコ・ユッグドラシル - 」
3/15-6/7



絵画よりただならぬ、異様な妖気を感じることなどそう滅多にありません。沖縄県立芸術大学出身の若手の日本画家、藤田桃子の個展を見てきました。

ともかく注目したいのは、横6メートル超、縦2メートル半の巨大な画面にそびえ立つ一本の大木を捉えた作品です。果たしてこれが木であるのかを確認するのが困難に思うほど奇怪でかつ、またそれ自体も動物であるかのような、黒々とした生々しい物体がど迫力の大きさで描かれていますが、その振り乱した髪の毛のような細密な線描はもちろんのこと、顔料に砂や貝、それに箔をまぶして出来上がった鱗状の重厚感のあるマチエールなど、不気味なモチーフを裏打ちする確かな画力もまた大変に魅力的です。幹や枝が激しくぶつかり合うかのように力強く、そして複雑に絡み合い、爛れた線や焼けこげたような色面が全てを浸食しながら沈殿する様子は、その静けさとともに一種の神々しささえたたえています。またもう一点、同じ色面による、いくつもの頭を抱えた、例えれば爬虫類系の幻獣ともいえるようなモチーフを描いた作品も見応え十分です。闇に潜むその獣に、今にも食われてしまうかのような恐怖感さえ感じました。

率直なところ、展示室中央の、金地を用いた一番大きな作品はあまり感じるものがありませんが、ともかくは上に挙げた二点を見るだけでも十分におすすめ出来る展覧会です。

絵にのみ込まれる感覚を是非味わってみて下さい。6月7日まで開催されています。
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「アーティスト・ファイル 2008 - 現代の作家たち」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「アーティスト・ファイル 2008 - 現代の作家たち」
3/5-5/6



木場のアニュアル展の『変形バージョン』がここ乃木坂にも定着するのでしょうか。「国立新美術館が独自の視点で切り取り、現在と未来の美術動向を紹介する」(チラシより引用。一部改変。)という、「アーティスト・ファイル 2008」へ行ってきました。

出品作家は以下の通りです。写真、映像、インスタレーション、ドローイングなど、ジャンルを問わず計8名の作家が紹介されています。

エリナ・ブロテルス(1972~)
市川武史(1971~)
ポリクセニ・パパペトルー (1960~)
佐伯洋江(1978~)
さわひらき(1977~)
白井美穂(1962~)
祐成政徳(1960~)
竹村京(1975~)



あえてテーマを設定しないとのことで、その点からも全体の散漫な印象は拭いきれないものがありましたが、私としてはともかく一推しのさわひらきと、先日の目黒区美術館でのグループ展でも印象深かった佐伯洋江の展示を見られただけでもとりあえずは満足出来ました。特にさわは、過去にあまり例のない大変に大掛かりなインスタレーション、「hako」(2007)を展開していて見応えがあります。広々した暗室に、大きな6面のビデオ・プロジェクションがまるで神殿内部の壁画のようにして厳かに並び、そこへ様々な場所と緩やかな時間の交錯するさわテイスト全開の映像作品が穏やかに映し出されています。回転する時計が淡々と進む時の流れを刻み、和室へ流れ込む波と闇に包まれた社が、独特の静けさをこの空間へと伝えていました。またお馴染みの観覧車のモチーフも見逃せません。ぼんやり見つめながら、次々と変化していく空間へと誘われていく、その居場所の感覚を揺さぶるようなインスタレーションです。



上記のグループ展の他、清澄の画廊の個展でも興味深かった佐伯洋江のドローイングも見入るものがあります。佐伯というと、余白を大胆に用いた、精緻な花鳥画風の絵画が記憶に新しいところですが、今回の展示作は半ばSF的ともいえるような奇妙なモチーフがいくつも登場していました。また細やかな線描に散りばめられたピンクや紫の色彩などが、白を基調とした画面に良いアクセントを与えています。まるで小さな宝石をはめこんだかのようです。

 

都内でも屈指の広々とした展示室を持つ同美術館ですが、祐成政徳のオブジェ「a kind and1」(2001)や、透明フィルムを用いた市川武史のインスタレーション「浮遊」(2006)などは、その無機質な展示空間に埋もれてしまう、言い換えれば作品の良さを引き出す展示であるようには見えませんでした。上に参考図版にあるような、場の雰囲気を借りた展示の方が明らかに優れています。(画像左の祐成の展示は、佐倉市美術館のエントランスホールでしょうか。)この点は、展示室の表情の変化に乏しい新美で『見せること』の難しさが出ていたのかもしれません。

どことなく全体に『ゆるさ』の感じられる展覧会でしたが、何はともあれ初回ということで、まずは次回以降の『継続』に期待したいと思います。

5月6日までの開催です。
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「大谷有花 展 - peace - 」 GALLERY MoMo

GALLERY MoMo港区六本木6-2-6 サンビル第3 2階)
「大谷有花 展 - peace - 」
3/29-4/26



瑞々しく透明感のある黄緑色の色面が、緩やかに運動しながら広がりゆく世界を表します。シェル現代美術賞、もしくはVOCAでも受賞歴を持つ、大谷有花の新作個展を見てきました。

ともかく目に染み入るのは、限りなく淡く、またそれ自体が春の柔らかな日差しを思わせるような、かの黄緑色ののびやかな色と形です。作家曰く、「芸術の向こうに見えた生命の根源を象徴するような風景」(画廊公式HPより。)を描いたという一連の油彩作品は、例えて言えば、温かい陽の光に包まれたような、静かな波のたゆたう海のようなイメージをもって広がっています。波の向こうにはなだらかな陸を望み、空を見上げれば数羽の海鳥が入道雲の合間をぬうようにしてゆらりゆらりと舞っていました。黄緑と白とが、互いに滲むかのようにしてせめぎ合い、その示された色面の濃淡、もしくはアクセント的な赤や青などのタッチが、モチーフを通り越した多様なイメージを喚起させています。黄緑色に全てが溶けていく、あたかもそれ自体が優しく微睡んでいるかのような絵画です。

以前よりも、色に抜けるような明るさが加わっているようにも見えました。思わずずっと眺めていたくなるような心地良さもまた魅力ではないでしょうか。

今月26日まで開催されています。
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「シンチカ」 オオタファインアーツ

オオタファインアーツ中央区勝どき2-8-19 近富ビル4階B)
「シンチカ」
3/15-4/19



六本木より勝どきへと移転した、オオタファインアーツのオープニングを飾る展覧会です。2002年、京都市立芸術大学の学生によって結成され、その後、ネットによるファイル交換で作品を作り上げているという(公式HPより。)、ユニット名「シンチカ」の画廊初個展へ行ってきました。

メインは展示室正面のスクリーンに映し出されている新作の映像作品、「JSCO(ジャスコ)」です。とある少女を主人公にした3DCGによるアニメーションが、テンポの良いBGMとともに軽快に流れ出していきます。ボーイフレンドからもらったというプラモデルと格闘する彼女の姿は、いつかか家や山々、そしてそこを駆け抜ける電車ののびる外界へと繋がり、一種の箱庭的な世界を展開していきました。何やらおもちゃ箱をひっくり返したような、どこか童心に返るアニメーションです。

映像作品の雰囲気は、そのまま展示室全体のインスタレーションと繋がります。ほぼ実寸大による、真っ白なスチレンボード製のガードレールや電車内の座席が空間を演出し、そこにコンセントや駅の自動改札機のミニチュアがいくつか置かれていました。率直なところ、心を強く掴まれる部分はあまりありませんが、このゆるい雰囲気も「シンチカ」の持ち味なのかもしれません。

ところで新しいオオタファインアーツですが、駅からは近いものの、画廊の所在地、特にその入口がやや分かりにくいので注意が必要です。画廊のある4階のBフロアへ行くには、作業場、または事務所の入居する同ビルのバックヤードに面したエレベーターに乗る必要があります。敷地内に隣接する同名のマンションからは入ることが出来ません。

 
*近富ビル。(奥は晴海トリトンスクエア。)右の写真の荷受場の奥にあるエレベーターが画廊の入口です。

展覧会は4月19日までの開催です。
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「アートフェア東京2008」 東京国際フォーラム 展示ホール1

東京国際フォーラム 展示ホール1(千代田区丸の内3-5-1
「アートフェア東京2008」
4/4-6(会期終了)



さすがに週末は混雑していました。現代アートの如何を問わず、国内外のアートシーンの『現在』が一堂に会した国内最大のアートの見本市、「アートフェア東京2008」へ行ってきました。

古美術からピカソなどと、ジャンルに囚われない「アートフェア東京」の中身は非常に多様ですが、どうしても私の関心はやはり現代アートの方へ向いてしまいます。というわけで終始、うろうろと巡り歩いていたのは、ちょうど会場の右手方向、DとEのブースのひしめき合う現代アートのコーナーでした。殆ど反則技級に目立っていたミヅマアートの鴻池の特大インスタレーション(個展がいよいよ4/16から始まります。豪華なちらしまで用意されていました。)と山本現代のヤノベケンジの『観覧車』は別格としても、まさに名品展のレントゲン(佐藤好彦の作品ポスターを1万円で売るところがまた商売上手です。)、町田久美の小型のドローイング(63万円。もちろん売り切れです。)が何とも可愛らしい西村、今年度のVOCA賞を受賞した横内賢太郎の瑞々しいサテン(13万円。)の印象的なケンジタキなど、既知の画廊もいつもながらのラインナップで楽しむことが出来ます。また個展が衝撃的だった政田武史(50万円。)のワコーワークス、柏のTSCAのオープニングを飾った、静けさに満ちた光の粒子、大塚聡のアタッシュケース(値段は分かりませんでした。出展はヒロミヨシイです。)も、願わくばもっと生活に身近な場所で見られればと思うような作品で魅了されました。お気に入りの一点を探すのに時間は全然かかりません。

普段、馴染みのない東京以外の画廊に接せられるのも、またこの手のイベントの良いところです。中でも興味深かったのは、既知の方、つまりはこちらで展示を開催しながらも、東京以外に拠点を構えている作家の作品でした。その例として、文化村ギャラリーでの個展が印象深い鈴木雅明(ギャラリーセラー。名古屋。)、または日本橋高島屋の個展で、室内のミニチュアを独得の写真で示した寺田真由美(Gallery OUT of PLACE。奈良。)などが挙げられると思います。また東京での個展を心待ちにしたいです。



第3回目の開催ということで、全体の雰囲気も何となく慣れてきたような気もしました。昨年は会場の関係で全て平日のみのオープンでしたが、やはり土日を挟むと、お祭り的な賑わいが生じてくるようです。(実質的に、展示作品の多くは特別内覧会の段階で売れてしまうのではないでしょうか。)

なお、このアートフェア、もしくは新丸ビルのニュートーキョーコンテンポラリーズは既に昨日で会期を終えていますが、丸の内アートウィークス関連のイベント、行幸通り地下の「アートアワードトーキョー」(美大の卒展の選抜作品を展示。)はゴールデンウィーク中まで開催されています。そちらは今度見てくるつもりです。
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「101TOKYO Contemporary Art Fair 2008」 旧練成中学校

旧練成中学校(千代田区外神田6-11-14
「101TOKYO Contemporary Art Fair 2008」
4/3-6(本日17時終了)



有楽町の「アートフェア東京」が現代アートの攻め口の大手門としたら、こちらはその搦め手かもしれません。日本、または世界各地より厳選されたという若手ギャラリー、または現代アーティストの集う、「101TOKYO Contemporary Art Fair 2008」へ行ってきました。

出展ギャラリーは公式サイトをご覧下さい。在京14、海外14の計28軒のギャラリーが紹介されています。

国内画廊の例:ARATANIURANO(新富町)、FOIL GALLERY(東神田)、magical, ARTROOM(清澄)、MISAKO & ROSEN(北大塚)、成山画廊(九段)、YUKARI ART CONTEMPORARY(学芸大学)

当然ながら量の面において、100軒以上の集うアートフェア東京にかなうはずもありませんが、その分、現代アートに特化した、しかもその上でまだ評価の定まらない作家までを網羅した、半ば尖った『今』のアートを見ることが出来ます。また、出展の半数が海外画廊であるというのも大きな特徴です。旧小学校跡地の建物の一室(展示規模は有楽町の3分の1にも及ばないかもしれません。)を用い、多様なアート作品が何やらジャングルを彩る木々のようにひしめていました。そこになるのがまさにアートの実というわけです。

印象深かった画廊、または作品を羅列します。

11 Galeria de Muerte:植田圭(細密な鉛筆のドローイング。シーラカンスを描いたようなモチーフの生き物に重厚感あり。)
12 YUKARI ART CONTEMPORARY:大畑伸太郎(巨大なアクリル画とオブジェ。駅のホームで別れを告げる男女の姿か。緑に統一された面的なタッチがエキゾチック。)
17 FOIL GALLERY:川内倫子(ナイフで果実を剥く姿が驚くほど美しい。氷の写真も瑞々しさに溢れる。今月末より個展開催。4/24~。)
15 成山画廊:松井冬子(霊の潜む絵画。例の謎めいたタイトルの作品よりも、腑分図などの臓器の解剖学的なドローイングの方が良い。それ自体が別の生き物のよう。)
25 magical, ARTROOM:大庭大介(ミニマル的な絵画。レイヤー状に折重なる色面がキラキラと光沢を放つ。)
22 Workplace Gallery:Laura Lancaster(静物画。かばんの残像に確かな存在感。)
18 nca | nichido contemporary art:越中正人(新宿などの街角写真。撮影したものを接写して別個の景色を作る。無関係に行き交う都市の人々の孤独感。10月に個展あり。)
8 Galerie Sho Projects:MASAKO(以前見た個展でも圧倒的だったMASAKOのアクリル画数点。デュマス以上の力強さ。既に全点完売。)
3 ARATANIURANO:梅津庸一(現在、個展開催中の梅津の絵画。見ていて嫌悪感を感じるほど内的でプライベートな感触を露にしている。そこが逆に強み。)

もちろん上記以外にも、特に外国の画廊の作品に見入るものがありました。あくまでも一例です。

 

量的に入場料の1000円が見合うかどうかは微妙なところですが、私としてはこの後出向いた本丸、アートフェア東京よりも愉しく拝見することが出来ました。

本日17時までの開催です。有楽町からのハシゴを是非おすすめします。
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「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」 森美術館

森美術館港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」
2/2-4/6



森美へ行くのは何故かいつも会期末になってしまいます。先日、巨額赤字を計上して話題ともなったスイスの総合金融機関、UBSの現代アートコレクションを概観する展覧会です。

構成は以下の通りです。(The UBS Art Collection

1「ポートレイトから身体まで」
 現代アートにおけるポートレート。バルケンホール、リキテンスタイン、森村泰昌、杉本博司など。
2「造られた世界」
 都市空間を主題とした作品から、建築と心理の関係、さらには人間の造った世界と自然との関係を追う。グルスキー、宮本隆司など。
3「ランドスケープから宇宙へ」
 ポートレートに対する風景画。エリアソン、畠山直哉、スカリー。

 

展示作品をざっと眺めても、タイトルの「アートは心のためにある」というのが今一つ良く分からず、また会場をオフィス風にしたというのにも納得出来ませんでしたが、個々の作品はさすがに見応えがあるものが揃っていました。まず出迎えてくれたのは、「ポートレイトから身体まで」でのバルケンホールの可愛らしい木彫、「柱像:女、男」(1993)です。台座の木からそのまま生えてきたような男女の木像が、カジュアルな格好をしながら、それこそ六本木の路上でも歩いているような面持ちで立っています。またその他では木版に素材をとる、どこかキュビズムを思わせるような造形が面白いリキテンスタインの「顔」(1980)や、巨大な自画像を格子状の枠に切り取り、グレーを基調とした色面に解体したクロースの「セルフ・ポートレート」(1991)なども印象に残りました。そしてこの始めのセクションで特に優れている点として挙げておきたいのは、杉本、森村、そしてシャーマンの三者によるそれぞれの肖像作品を同列に並べた展示方法です。お馴染み蝋人形を捉えた杉本と、マルガリータになりきりの森村、さらには彼と同じように自身がモデルとなりながら、特定のイメージをあえて持たないシャーマンのポートレートが混在する様子は、自画像とそれを見る者、さらには作る者やモデルとの関係をもごちゃ混ぜにしてしまいます。ここは展示にセンスを感じました。



2番目の「造られた世界」では、何と言ってもグルスキーの「99セント」(1999)が圧倒的です。日本でいう100円ショップが、例えばイオンのSCか郊外型のホームセンターを思わせる広大な店鋪に展開され、そこへ並べられた多種多様な商品がまさに色の洪水のように押し寄せてきます。整然と並べられた商品は色から線と面に還元し、しばらく眺める抽象画を見ているかのような錯覚さえ与えられますが、結局は自分もかの場で埋もれるように彷徨う買い物客と同等でしかないと思うと、何とも言えない虚しさがこみ上げてくるのも事実です。感覚的に麻痺してしまうのか、かのような場に埋もれるとそれはそれで居心地良く感じられるのもあながち嘘ではないと思いますが、この作品ではそのような半ば病的な、主客の転倒した商品と人間との関係を巧みに抉り出しています。これは一推しです。

 

展示場所は離れていますが、対照的な二点、宮本隆司と畠山直哉の写真作品も興味深く感じられました。宮本はひしゃげたビルや家屋の並ぶ、阪神大震災後の神戸を撮影し、そこから直視出来ない、何とも言えない物悲しいドラマを想起させるのに対し、一方の畠山では自然を壊す、ようは爆発させるシーンを切り取り、人間と自然との関係の危うさを提示するとともに、そこに見られる瞬間的な美意識を見事に表現しています。また両者は、この展示に続く森美術館の新収蔵品展、「もうひとつの風景:森アートコレクションより」でも同じく出品が為されています。そこでも宮本は廃墟を生々しく写すことで、そこにあったはずの記憶を鮮やかに呼び覚まし、畠山は解体時に見る、そのようなドラマを文字通り吹き飛ばすモノの動的な力強さをそのまま提示していました。見比べるのも一興です。

なお、「もうひとつの風景:森アートコレクションより」に展示されている、池田学の「方舟」はオススメの作品です。ミヅマアートギャラリーでの個展以来、久々に彼の細密かつ迫力ある絵画を見られて満足出来ました。

会場は驚くほど空いていました。この展示に限っては、会期末へ向けての駆け込み的な混雑はないかもしれません。

明日、6日まで開催されています。
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4月の予定と3月の記録 2008

今年の関東の桜は一気に満開となりましたが、その後の見頃は長く続いているようです。今週末も何とか楽しめるのではないでしょうか。毎月恒例の予定と振り返りです。

4月の予定

展覧会
「アートフェア東京」 東京国際フォーラム 展示ホール1(4/4-6)
「ルノワール+ルノワール展」 Bunkamura ザ・ミュージアム( - 5/6)
「シュルレアリスムと写真」 東京都写真美術館( - 5/6)
「ルオーとマティス」 松下電工汐留ミュージアム( - 5/11)
「宮島達男|Art in You」 水戸芸術館( - 5/11)
「ガレとジャポニスム」 サントリー美術館( - 5/11)
「中右コレクション 四大浮世絵師展」 大丸ミュージアム東京(4/24 - 5/12)
「いとも美しき西洋版画の世界」 埼玉県立近代美術館(4/5-5/18)
「絵師がいっぱい - お江戸の御用絵師と民間画工」 板橋区立美術館(4/5-5/18)
「生誕100年 東山魁夷展」 東京国立近代美術館( - 5/18)
「美術館設立60年記念 所蔵作品選3000分の175」 茨城県立近代美術館(4/19-5/25)
「柿右衛門と鍋島 - 肥前磁器の精華」 出光美術館(4/5 - 6/1)
「コレクション展 作品と作品の間に -4つの変奏」 目黒区美術館(4/17 - 6/8)
「モーリス・ド・ヴラマンク展」 損保ジャパン東郷青児美術館(4/19 - 6/29)

コンサート
未定


3月の記録

展覧会
「アーティスト・ファイル 2008」 国立新美術館
「国宝薬師寺展」(内覧会) 東京国立博物館
「アートは心のためにある:UBSアートコレクションより」 森美術館
「ウルビーノのヴィーナス」 国立西洋美術館
「戸栗美術館名品展 鍋島」 戸栗美術館
「VOCA展 2008」 上野の森美術館
「川瀬巴水 - 東京風景版画 - 」 江戸東京博物館
「コレクションの新地平 20世紀美術の息吹」 ブリヂストン美術館
「山寺 後藤美術館所蔵 『ヨーロッパ絵画名作展』」 大丸ミュージアム・東京
「茶碗の美 - 国宝 曜変天目と名物茶碗 - 」 静嘉堂文庫美術館
池田満寿夫展/清らかなるもの/project N 名知聡子」 東京オペラシティアートギャラリー
「わたしいまめまいしたわ」 東京国立近代美術館
「第27回 損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」 損保ジャパン東郷青児美術館

ギャラリー
「ポール・ジョンソン展」 ミヅマアートギャラリー
「岩田壮平・阪本トクロウ」 いつき美術画廊
「大谷有花展」 GALLERY MoMo
「シンチカ」 オオタファインアーツ
「End of the tunnel」 「(marunouchi) HOUSE」
「横尾忠則 『ふたつめの壺/温泉主義』」 SCAI/西村画廊
「福居伸宏展 - ジャクスタポジション - 」 小山登美夫ギャラリー
「大西伸明 - 無明の輪郭 - 」 INAXギャラリー2
「石川結介 A Few Shields」 ラディウム
「ART ADVANCE ADACHI 2008」 シアター1010ギャラリー
「加藤泉 The Riverhead」 上野の森美術館ギャラリー
「7人の新人展」 ギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アート
「サラ・ジー展」 メゾンエルメス
「彦坂敏昭 『テサグリの図画』」 資生堂ギャラリー

コンサート
「東京都交響楽団第658回定期Aシリーズ」 ショスタコーヴィチ「交響曲第12番」他 デプリースト

早速ですが、今月下旬に水戸へ行ってきます。もちろん目当ては水戸芸の宮島展ですが、KINさんのご感想を拝見するとそれだけでは少し『足りない』気もするので、開館20周年にあわせてリニューアルオープンを迎えた茨城県美の名品展とセットにすることにしました。ともに、まだ一度も行ったことのない美術館なので楽しみです。

上に挙げた東山魁夷、柿右衛門と鍋島、ガレ等の大型展以外で注目したいのは、板橋の「絵師がいっぱい」と埼玉県美の「いとも美しき西洋版画の世界」です。江戸絵画にも強い板橋の展示が無料というのも嬉しいところですが、「日本美術講演会」と題した専門家による関連の講演会のラインナップがかなり充実しています。(詳細は公式HPにて。)また埼玉県美は、ファン待望の、15世紀から20世紀までの西洋版画全般の史的変遷を追う版画展です。同美術館ならではの好企画となること必至ではないでしょうか。これは期待したいです。

コンサートの予定が「未定」になってしまいましたが、もしかしたらメルクル+N響、それにミスター+読響の定期には行くかもしれません。また先月、感想を書きそびれてしまいましたが、常任指揮者としては最後となるデプリーストの都響定期を聴いてきました。モーツァルトの協奏曲はソリストの方が少し残念でしたが、メインのタコ12はデプリーストらしい、表情に変幻自在な、一種の映画音楽として楽しめる個性豊かな演奏に仕上がっていたと思います。タコファンの方には納得いかない面もあるかもしれませんが、最後までデプリーストのカラーを失わない良いコンサートでした。率直に申し上げると、この時点での彼の退任は残念です。

それでは今月も宜しくお願いします。
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「ポール・ジョンソン - Sensitive Chaos - 」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2階)
「ポール・ジョンソン - Sensitive Chaos - 」
3/8-4/5



この作品の素晴らしさをWEB画像や写真で伝えるのは不可能です。細密かつ複雑なコラージュからなるポートレート作品で知られる(公式HPより。)イギリス人アーティスト、ポール・ジョンソンの日本初個展へ行ってきました。

大変失礼ながらも、DMの画像を見た時はそれほど興味がわきませんでしたが、いざ出向くとその精緻に作り込まれた作品に直ぐさま虜となってしまいました。一見、細い筆にて、半ば荒々しいタッチを露出して描かれているように思えるポートレートは、実はどれも僅か数ミリ単位で切り込まれた、自身の彩色による小さな紙片の集まりだったのです。これを表現のジャンルで示せばおそらくはペーパークラフトであり、またそれ自体も非常に高いクオリティを誇っているわけですが、個々の紙片が巧みなグラデーションを描きながら無数に繋がり、一つの像を作り上げる様子は、殆ど絵画であると言って相違ないほどの独得な味わいを生み出しています。このペーパークラフトでありながらも、結果見られる絵画的な表現とのせめぎ合い、そしてその見事な融合ぶりこそがポール・ジョンソンの制作の大きな魅力です。目における瞳孔の黒と周囲の白い膜、そしてさらに外側の皮膚のピンク色の質感へと繋がっている紙片の様子をなぞると、まさに冴えた職人の至芸を見たかのような気分にさせられました。凛とした表情を漂わせた一人の男性の肉感的な肌や唇が、半ば木彫の表面のようなマチエールをもって表されています。驚きです。

合わせて展示されているフラッグもお見逃しなきようご注意下さい。思いもよらぬ部分にまで細かな紙片がびっしりと敷きつめられていました。

今週の土曜日までの開催です。会期末ですが強力におすすめします。
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「岩田壮平・阪本トクロウ」 いつき美術画廊

いつき美術画廊中央区京橋3-3-8 新京橋ビル1階)
「岩田壮平・阪本トクロウ」
3/24-4/5

 

愛読ブログ「徒然と(美術と本と映画好き...)」でもご紹介のあった、今年度のVOCA展出品作家、阪本トクロウの岩田壮平との二人展です。いつき美術画廊での表題の展示を見てきました。

小さな画廊での二人展と言うことで、阪本の展示作は計5点ほどでしたが、その殆どがあのマットな『阪本グレー』に彩られた、静けさとどことないほのぼのとした風情の漂う風景画です。阪本に道路を切り取らせると、刹那的で寂し気な佇まいに何とも言えない魅力を感じますが、今出品作でもその道路を素材とした絵画に特に惹かれました。鉄塔の聳える山の前を一本の道路が淡々と進みゆく「アフターイメージ」(2008)や、高速道に乗っていて頭上を見上げた時に映る照明のイメージをそのまま絵画に表したようなものなど、どれもが阪本ならではの控えめでかつ冴えた構図感を見る美しい作品です。また今回はその道路に、都会的でまたクールな印象を見るようにも思えました。何気ない光景を、ストイックなまでに単純化した色面に置き換えています。あたかも目に差し込む光の陰影だけを見ているかのような、心地良い残像を残してくれました。

今週の土曜日まで開催されています。
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「ぐるっとパス2008」本日発売開始

本年度の「ぐるっとパス」の発売が今日から始まりました。先々日あたりから公式HPも更新され、パスの対象施設、及び今年の春、夏にパスで入場可能な展示などが紹介されています。



「ぐるっとパス2008」(東京都歴史文化財団)
「春夏の施設情報」(pdf)

早速、上記施設情報より、この春に廻りたい美術館を挙げてみました。もちろん全てフリーで入場出来る展覧会です。

芸大コレクション展@東京藝術大学大学美術館(4/10-7/21)
大正から昭和へ@山種美術館(4/26-6/8)
数寄の玉手箱@三井記念美術館(4/16-6/29)
岡鹿之助展@ブリヂストン美術館(4/26-7/6)
柿右衛門と鍋島@出光美術館(4/5-6/1)
写真とシュルレアリスム展@東京都写真美術館(3/15-5/6)
近代日本画・洋画に見る対照の美@泉屋博古館分館(3/15-6/8)
幕末浮世絵展@三鷹市民ギャラリー(4/26-6/8)

如何でしょうか。またオペラシティの「F1 疾走するデザイン」(4/12-6/29)もひょっとすると見に行くかもしれません。ちなみにこれらの展示を全て普通に入場すると5370円(オペラシティを入れれば6570円。)かかります。それが2000円で済むわけです。いつもながらにお得です。

パスは毎年対象施設が若干入れ替わりますが、今年の最大の目玉は、あの三井記念美術館がフリーで入場可能になったことではないでしょうか。率直なところ、三井の展示は私にはディープに感じられるものが多く、ごく一部の展示を除くとなかなか足が向きませんでしたが、今年はパス対象なので、是非各回の展示を追っていきたいです。



また以前にもこちらのエントリでご紹介したことがありましたが、今年もメトロ、及び都営交通の一日券とセットになった「ぐるっとパス」が発売されています。価格は一日券2枚とパス1枚がついて、それぞれ2800円です。一日券はメトロが710円、都営が700円なので、それが2枚ついていることを合わせると、前者は通常よりも620円、また後者は600円ほどお得になります。(その割引額をパスだけにあてて仮定すると何と3割引になります。)ちなみに1日券はともに約4回程度乗り降りするとほぼ元がとれます。私はいつも美術館+画廊巡りだけで使い切ってしまいますが、買い物や行楽と美術館などを合わせれば、そう無理のない数字ではないでしょうか。また一日券には、それぞれパスにはない特典もついています。例えばメトロ券では「ちか旅」といった、美術館からレストランまでを網羅した63種もの特典があり、ここでは「ぐるっとパス」で対象にならない太田記念美術館や松下電工汐留ミュージアムなどが100円引きで入れるのです。

2008年版「メトロ&ぐるっとパス」を発売
「都営deぐるっとパス」発売

一日券の使用例:先日の土曜日の私のコースです。
メトロ接続駅~230円~六本木(森美術館+ギャラリーモモ)~160円~中目黒(ミヅマアートギャラリー+目黒川のお花見)~190円~東京(コンテンポラリーズ@新丸ビル)~190円~メトロ接続駅 計730円(一日券710円)

今年もパスの季節がやって来ました。皆さんのおすすめの展示はどれでしょうか。また教えていただけるとありがたいです。
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