「アーティスト・ファイル 2008 - 現代の作家たち」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「アーティスト・ファイル 2008 - 現代の作家たち」
3/5-5/6



木場のアニュアル展の『変形バージョン』がここ乃木坂にも定着するのでしょうか。「国立新美術館が独自の視点で切り取り、現在と未来の美術動向を紹介する」(チラシより引用。一部改変。)という、「アーティスト・ファイル 2008」へ行ってきました。

出品作家は以下の通りです。写真、映像、インスタレーション、ドローイングなど、ジャンルを問わず計8名の作家が紹介されています。

エリナ・ブロテルス(1972~)
市川武史(1971~)
ポリクセニ・パパペトルー (1960~)
佐伯洋江(1978~)
さわひらき(1977~)
白井美穂(1962~)
祐成政徳(1960~)
竹村京(1975~)



あえてテーマを設定しないとのことで、その点からも全体の散漫な印象は拭いきれないものがありましたが、私としてはともかく一推しのさわひらきと、先日の目黒区美術館でのグループ展でも印象深かった佐伯洋江の展示を見られただけでもとりあえずは満足出来ました。特にさわは、過去にあまり例のない大変に大掛かりなインスタレーション、「hako」(2007)を展開していて見応えがあります。広々した暗室に、大きな6面のビデオ・プロジェクションがまるで神殿内部の壁画のようにして厳かに並び、そこへ様々な場所と緩やかな時間の交錯するさわテイスト全開の映像作品が穏やかに映し出されています。回転する時計が淡々と進む時の流れを刻み、和室へ流れ込む波と闇に包まれた社が、独特の静けさをこの空間へと伝えていました。またお馴染みの観覧車のモチーフも見逃せません。ぼんやり見つめながら、次々と変化していく空間へと誘われていく、その居場所の感覚を揺さぶるようなインスタレーションです。



上記のグループ展の他、清澄の画廊の個展でも興味深かった佐伯洋江のドローイングも見入るものがあります。佐伯というと、余白を大胆に用いた、精緻な花鳥画風の絵画が記憶に新しいところですが、今回の展示作は半ばSF的ともいえるような奇妙なモチーフがいくつも登場していました。また細やかな線描に散りばめられたピンクや紫の色彩などが、白を基調とした画面に良いアクセントを与えています。まるで小さな宝石をはめこんだかのようです。

 

都内でも屈指の広々とした展示室を持つ同美術館ですが、祐成政徳のオブジェ「a kind and1」(2001)や、透明フィルムを用いた市川武史のインスタレーション「浮遊」(2006)などは、その無機質な展示空間に埋もれてしまう、言い換えれば作品の良さを引き出す展示であるようには見えませんでした。上に参考図版にあるような、場の雰囲気を借りた展示の方が明らかに優れています。(画像左の祐成の展示は、佐倉市美術館のエントランスホールでしょうか。)この点は、展示室の表情の変化に乏しい新美で『見せること』の難しさが出ていたのかもしれません。

どことなく全体に『ゆるさ』の感じられる展覧会でしたが、何はともあれ初回ということで、まずは次回以降の『継続』に期待したいと思います。

5月6日までの開催です。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
さすが (ogawama)
2008-04-12 13:31:08
さすがはろるどさん、ここまで書けるなんて!
展示空間による作品の見え方の違い、確かにそうかも~と思いました。
次回、、、どうなんでしょうね。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-04-12 21:08:35
ogawamaさんこんばんは。何やら結構不評の展覧会のようですが、とりあえずは好きな作家も見られたので駄文をだらだら続けてしまいました。私としては適当に面白かったです。

>展示空間による作品の見え方の違い

新美のホワイトキューブは現代アートの天敵になるかもしれませんね。全面のガラスのファサードはともかく、あのまさしく「箱」はなかなか難しい空間だと思います。
 
 
 
Unknown (Tak)
2008-04-25 07:52:34
おはようございます。

初回だからこんなものかと思いますが
改善点は山のようにありますよね。

祐成さんと市川さんは場所ありきの人選だったのでしょうか。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-04-25 22:55:36
Takさんこんばんは。TBありがとうございます。

>初回だからこんなものか

そうかもしれませんね。もう少し続けていただいて結果を見たいなとは思います。(1年で打ち切りはあまりにも寂しいので…。)

>祐成さんと市川さんは場所ありき

今回の「箱」では、ともにうまく見せるのが難しい作品ではないでしょうか。作家さんの立場に立って言えば少し酷だなとすら感じました。
 
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