都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「くらし文化遺産」 LIXILギャラリー
LIXILギャラリー
「くらし文化遺産ー変革の記憶、LIXILの宝もの」
3/4~3/21

リクシルの運営する3館のコレクションを個性的な視点で紹介する展覧会が、京橋のリクシルギャラリーにて行われています。

「くらし文化遺産」 会場エントランス
エントランスからしていつもと異なります。サッシでのお出迎えでした。もちろんリクシル製です。制作は本年。最新モデルかもしれません。そして中に入ると突如、古びた土管が現れました。全部で4本。明治中期、後期、ないし大正から昭和時代に作られたものです。さらに奥には岡本太郎の陶のマケットが展示されています。サッシに土管に岡本太郎。すぐには共通点が浮かびませんでした。

「土管」 明治時代中期、明治時代後期、大正時代、昭和時代前期 INAXライブミュージアム
キーワードは暮らしの変革でした。近代的なサッシも暮らしに変容をもたらした建材です。そして土管はINAXの前身の伊奈製陶所が制作。製法を進化させては、より堅牢な土管を作ることに成功しました。ではマケットはどうでしょうか。むろん岡本に限らず、芸術家の作品は、時に「街の風景をも一変」(解説より)させることがあります。つまりは住まいや暮らし、ないしインフラを変化させた建具や工芸などを、芸術家との協働を交えて紹介しているわけです。

岡本太郎「花器 顔」 1952年 個人蔵
さて先のマケットは、花器、「顔」の制作のためのものでした。岡本太郎は1952年、モザイクタイルの制作のため当時の伊奈製陶に滞在。そこであわせて「顔」を焼き上げました。全部で3体です。うち1体は常滑に残り、もう1体が岡本太郎美術館が収蔵。最後の作品は父の墓碑となり、多磨霊園に残されているそうです。両手を広げた人の形はとても力強い。霊園でも異彩を放っているのではないでしょうか。

世界のタイル「ヴィクトリアンタイル」 1893〜1910年頃 INAXライブミュージアム
展示を通して目立っていたのはタイルでした。例えばイギリスのヴィクトリア朝時代のタイルです。当時のイギリスは空前の建築ブーム。需要が増したことでしょう。大量生産も可能なタイルが内装に数多く用いられました。

世界のタイル「イスラームタイル」 12〜14世紀 INAXライブミュージアム
イスラムのタイルも珍しいのではないでしょうか。制作は12〜14世紀です。モチーフ自体は植物や小動物でした。形が一風変わっています。八芒星です。宗教建築の壁面を飾りました。

世界のタイル「エジプト・ファイアンス・タイル」 紀元前27世紀 INAXライブミュージアム
エジプトのタイルも貴重です。何せ古い。紀元前27世紀にまで遡ります。世界最古の施釉タイルとも言われています。仄かに緑を帯びた青色が美しい。天然ソーダを混ぜて発色させたそうです。「王の魂の再生を願った」(解説より)とも考えられています。

大竹伸朗「染付タイル」 2009年 INAXライブミュージアム
一転しての現代です。大竹伸朗です。かの有名な直島の銭湯の「I♥湯」のタイルでした。また岡崎乾二郎が個人宅のためにデザインしたタイルも目を引きます。ともにINAXライブミュージアム内の「ものづくり工房」にて制作されました。

「染付古便器 小判形大便器」 明治時代後期 INAXライブミュージアム
染付の便器も興味深い作品です。ちなみに最も好まれた図は牡丹です。19世紀末、これまでの木や甕の便器にかわり、陶の染付の便器が普及しました。これも「暮らしの変革」の一例ということかもしれません。
若冲がお出ましです。とはいえ、作品はいわゆる本画ではなく綴織。かの動植綵絵の「紫陽花双鶴図」でした。時は1904年です。セントルイス万国博覧会への出品作品と同時期に作られました。見事な出来栄えです。遠目では思わず本画と見間違えてしまうかもしれません。隣には下絵の参照もありました。実際に当時の宮内省に出かけて模写したものだそうです。
さらにセントルイス万国博覧会の若冲の間の模型も紹介。内観写真とともに当時の雰囲気を伝えてくれました。

「くらし文化遺産」投票コーナー
会場の一部は撮影が可能です。さらにお気に入りの作品を選ぶ投票箱も設置されていました。

東郷青児「モザイクタイル画」 1950年 INAXライブミュージアム
なお作品をコレクションする3館とは「LIXIL資料館」、「INAXライブミュージアム」、「川島織物セルコン 織物文化館」です。場所も東京、常滑、京都と離れています。一度に見ることはまず叶いません。リクシルの多様な「宝もの」を一堂に楽しめる良い機会と言えそうです。
入場は無料です。3月21日まで開催されています。
「くらし文化遺産ー変革の記憶、LIXILの宝もの」 LIXILギャラリー
会期:3月4日(土)~3月21日(火)
休廊:水曜日。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA1、2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
「くらし文化遺産ー変革の記憶、LIXILの宝もの」
3/4~3/21

リクシルの運営する3館のコレクションを個性的な視点で紹介する展覧会が、京橋のリクシルギャラリーにて行われています。

「くらし文化遺産」 会場エントランス
エントランスからしていつもと異なります。サッシでのお出迎えでした。もちろんリクシル製です。制作は本年。最新モデルかもしれません。そして中に入ると突如、古びた土管が現れました。全部で4本。明治中期、後期、ないし大正から昭和時代に作られたものです。さらに奥には岡本太郎の陶のマケットが展示されています。サッシに土管に岡本太郎。すぐには共通点が浮かびませんでした。

「土管」 明治時代中期、明治時代後期、大正時代、昭和時代前期 INAXライブミュージアム
キーワードは暮らしの変革でした。近代的なサッシも暮らしに変容をもたらした建材です。そして土管はINAXの前身の伊奈製陶所が制作。製法を進化させては、より堅牢な土管を作ることに成功しました。ではマケットはどうでしょうか。むろん岡本に限らず、芸術家の作品は、時に「街の風景をも一変」(解説より)させることがあります。つまりは住まいや暮らし、ないしインフラを変化させた建具や工芸などを、芸術家との協働を交えて紹介しているわけです。

岡本太郎「花器 顔」 1952年 個人蔵
さて先のマケットは、花器、「顔」の制作のためのものでした。岡本太郎は1952年、モザイクタイルの制作のため当時の伊奈製陶に滞在。そこであわせて「顔」を焼き上げました。全部で3体です。うち1体は常滑に残り、もう1体が岡本太郎美術館が収蔵。最後の作品は父の墓碑となり、多磨霊園に残されているそうです。両手を広げた人の形はとても力強い。霊園でも異彩を放っているのではないでしょうか。

世界のタイル「ヴィクトリアンタイル」 1893〜1910年頃 INAXライブミュージアム
展示を通して目立っていたのはタイルでした。例えばイギリスのヴィクトリア朝時代のタイルです。当時のイギリスは空前の建築ブーム。需要が増したことでしょう。大量生産も可能なタイルが内装に数多く用いられました。

世界のタイル「イスラームタイル」 12〜14世紀 INAXライブミュージアム
イスラムのタイルも珍しいのではないでしょうか。制作は12〜14世紀です。モチーフ自体は植物や小動物でした。形が一風変わっています。八芒星です。宗教建築の壁面を飾りました。

世界のタイル「エジプト・ファイアンス・タイル」 紀元前27世紀 INAXライブミュージアム
エジプトのタイルも貴重です。何せ古い。紀元前27世紀にまで遡ります。世界最古の施釉タイルとも言われています。仄かに緑を帯びた青色が美しい。天然ソーダを混ぜて発色させたそうです。「王の魂の再生を願った」(解説より)とも考えられています。

大竹伸朗「染付タイル」 2009年 INAXライブミュージアム
一転しての現代です。大竹伸朗です。かの有名な直島の銭湯の「I♥湯」のタイルでした。また岡崎乾二郎が個人宅のためにデザインしたタイルも目を引きます。ともにINAXライブミュージアム内の「ものづくり工房」にて制作されました。

「染付古便器 小判形大便器」 明治時代後期 INAXライブミュージアム
染付の便器も興味深い作品です。ちなみに最も好まれた図は牡丹です。19世紀末、これまでの木や甕の便器にかわり、陶の染付の便器が普及しました。これも「暮らしの変革」の一例ということかもしれません。
若冲がお出ましです。とはいえ、作品はいわゆる本画ではなく綴織。かの動植綵絵の「紫陽花双鶴図」でした。時は1904年です。セントルイス万国博覧会への出品作品と同時期に作られました。見事な出来栄えです。遠目では思わず本画と見間違えてしまうかもしれません。隣には下絵の参照もありました。実際に当時の宮内省に出かけて模写したものだそうです。
さらにセントルイス万国博覧会の若冲の間の模型も紹介。内観写真とともに当時の雰囲気を伝えてくれました。

「くらし文化遺産」投票コーナー
会場の一部は撮影が可能です。さらにお気に入りの作品を選ぶ投票箱も設置されていました。

東郷青児「モザイクタイル画」 1950年 INAXライブミュージアム
なお作品をコレクションする3館とは「LIXIL資料館」、「INAXライブミュージアム」、「川島織物セルコン 織物文化館」です。場所も東京、常滑、京都と離れています。一度に見ることはまず叶いません。リクシルの多様な「宝もの」を一堂に楽しめる良い機会と言えそうです。
「くらし文化遺産」@ LIXILギャラリー。リクシルの3つの博物館施設のコレクション展。切り口が独特で、暮らしの変革に関した資料などを紹介する。いきなりサッシに土管。むむ、確かに暮らしを変えた建材?ではある。タイルが充実してますね。あと若冲の綴織も見どころ。無料。3/21まで。 pic.twitter.com/sRjLdYlZ4F
— はろるど (@harold_1234) 2017年3月10日
入場は無料です。3月21日まで開催されています。
「くらし文化遺産ー変革の記憶、LIXILの宝もの」 LIXILギャラリー
会期:3月4日(土)~3月21日(火)
休廊:水曜日。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA1、2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )