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「生誕90年 加山又造展」 日本橋高島屋

日本橋高島屋8階ホール
「生誕90年 加山又造展~生命の煌めき」 
2/22〜3/6



今年、生誕90周年に当たる日本画家、加山又造の業績を振り返る展覧会が、日本橋高島屋にて開催されています。


「夏の濤・冬の濤(部分)」1958年 個人蔵

巨大な波が行く手を阻みます。「夏の濤・冬の濤」です。制作はキャリア初期、1958年でした。六曲一隻の屏風です。左が夏です。白波が岩場を洗っています。波の色は群青でした。形は幾分と刺々しい。右が冬でした。氷山を象っているのでしょうか。一部が凍りついています。背後に白い木立が広がります。後の装飾的な作風を予感させる一枚と言えるかもしれません。

東京美術学校に学んでいた又造は、たびたび上野動物園へ出かけては動物を模写。1950年代にデビューした後も動物をモチーフとする作品を描き続けました。

若い頃は「創造美術に研鑽」(解説より)を積んでいたそうです。その時代に描いたのが「若い白い馬」でした。1軒の家屋を背に白馬が立っています。馬はもはやシュールです。キュビズム的な展開を見せてもいます。ともすると又造作と分からないかもしれません。


「月と縞馬」 1954年 個人蔵

シュールといえば「月と縞馬」も挙げられるのではないでしょうか。山を望む荒野にいるのが縞馬です。頭は一見すると2つ。胴は1つながらも、脚が10本以上あります。縞馬の黒い直線と曲線が交錯します。未来派の影響も伺わせました。

「冬林」にも目がとまりました。構図はシンプルです。闇夜と木々の枝のみ。下から見上げているのかもしれません。枝の線は震えるようにして弱々しい。幽玄な世界が広がっていました。


「紅白梅」 1965年 個人蔵

1960年代半ば頃から大和絵や琳派の構成を取り入れた作品を発表します。その最たる一枚が「紅白梅」でした。中央に流れるのが水流です。線はうねっています。光琳の「紅白梅図屏風」のイメージと重なります。手前が白梅、奥が紅梅です。白梅は下から立ち上がり、紅梅は上から垂れ下がります。光琳画が左右に展開するのに対し、又造は上下に対比させています。それゆえでしょうか。平面的な構成ではありますが、前後に行き来するような奥行きも感じられました。


「猫」 1980年頃 個人蔵

猫好きの又造は自宅で何匹も猫を飼っていたそうです。ずばり「猫」が魅惑的でした。白い毛並みの猫が一匹、青い目を光らせながら座っています。視線の先にいるのがカマキリです。猫の出現に驚いたのでしょう。鎌をもたげては大きく威嚇しています。しかし体格差は歴然です。猫の爪も鋭い。今にもカマキリを捕まえてしまうのかもしれません。

裸婦が頻繁に現れるのが1970年代でした。うち圧巻なのが「はなびら」です。無数の花びらの散る空間を背景に、一糸も纏わない裸の女性が、さもダンスをするかのようにポーズをとっています。髪を振り乱しては、手足を広げ、また伸ばしていました。体毛や紅色の乳首などは官能的です。しかしながら躍動感もあります。まさに「生命賛歌」(解説より)を表したのかもしれません。

同じ地点にとどまらず、常に新たな表現を切り開くのも又造の画業の特徴ではないでしょうか。1970年後半からは伝統へ回帰。宗達や北宋の山水を意識した作品を制作します。


「倣北宋水墨山水雪景」 1989年 多摩美術大学美術館

「倣北宋水墨山水雪景」が個性的です。切り立つ岩肌は確かに中国の伝統的な山水画を思わせますが、それをさも「屏風」(解説より)に並べて立てています。山の稜線は険しく、時に鋭利な刃物のように尖っています。樹木が俄かに立体的に見えてきました。空は黒い。木々も山々も全てが凍りついています。

宗達の「雲龍図屏風」をモチーフとしたのが「龍図」でした。巨大な画面の左右で龍が宙を舞っています。波は触手のように広がっていておどろおどろしい。一部に垂らし込みでしょうか。瑞々しい絵具の感触も見て取れます。龍は飄々としています。並々ならぬ迫力がありました。


「淡月」 1996年 郷さくら美術館

又造は桜の名手でもあります。チラシ表紙を飾るのが「淡月」です。醍醐の桜をモチーフにしたとも言われています。右上には満月が浮かびます。全体は霞んでいて趣深くもあります。桜は満開です。花を殆ど落としていません。色数を限定して桜の淡い色味を表現しています。一方で樹木の部分にはやや濃い緑色も塗られていました。もう数日も経たないうちに散り始めることでしょう。どことない儚さをも感じました。

加山又造といって思い出すのが2009年です。国立新美術館にて大規模な回顧展が行われました。


今回も工芸品を含めて、おおよそ50点を網羅。絵付けをした陶器や着物などの工芸品も加わります。さすがに新美術館の時のスケールには及びませんが、予想よりも充実していました。かの回顧展に出ていなかった作品も少なくありません。

[生誕90年 加山又造展 巡回スケジュール]
瀬戸内市立美術館:4月8日(土)〜6月4日(日)
新潟県立近代美術館:7月8日(土)〜8月27日(日)
横浜高島屋:8月30日(水)〜9月11日(月)
大阪高島屋:9月13日(水)〜9月25日(月)
京都高島屋:10月4日(水)〜10月16日(月)

3月6日まで開催されています。

「生誕90年 加山又造展~生命の煌めき」 日本橋高島屋8階ホール
会期:2月22日(水)〜3月6日(月)
休館:会期中無休。
時間:10:30~19:30 
 *入場は閉場の30分前まで。最終日は18時閉場。
料金:一般800円、大学・高校生600円、中学生以下無料。
住所:中央区日本橋2-4-1 日本橋高島屋8階
交通:東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B1出口直結。都営浅草線日本橋駅から徒歩5分。JR東京駅八重洲北口から徒歩5分。
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